この世界は思ったより難解で、意味がわからなくて、美しい。
この世の正体を、仕組みを知れば、もっとらくに楽しく生きられると思った。
でも知れば知るほど難しくて、わからなくて、
深く潜れば潜るほど、暗く重くなる海の中みたいで。
どれだけ人と分かりあおうと努力しても、すればするほど、分かり合えなさに絶望する。
自分の弱さを突きつけられ、消えたくなる。
どれだけわたしたち人間が祈ろうと、自然はときに姿を変えて人を襲う。今まで丁寧に重ねてきたものを、いともあっけなく消し去る。
それでも自分の足で立って生きていくしかないというのに、ときどき自分のことさえ信じられなくなる。
内なる小さな小さな何かに、支配されているみたいに。
人も、社会も、自然も、自分も
わけがわからない。
この世界はこわくて難しい。
いつしかそう思ってしまうわたしがいた。
けれども希望もあった。
家の窓から見える夕日はとても美しかった。
散歩へ行くと、季節のにおいがした。
毛布で優しく包まれるような言葉や音楽にもたくさん出会った。
大好きな人たちと囲む食卓は、大袈裟かもしれないけど、こっそり涙ぐんでしまうほど幸せだった。
朝焼けを見るために森を駆け抜けた衝動、「ああ生きている」と思えた。
そんな日々が、わたしの救いだった。
世界は本当に難解で、意味がわからなくて
でも、涙が出るほどに、
どこまでも美しい。
だから、そんな世界の美しさを確かめるように、わたしは写真を撮っている。
これはもはや、わたしの生きる術なのかもしれない。
そしてそんな写真が、誰かにとって、この世界で生きることの希望になれば、と小さく願っている。
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