こんなに言葉をくれるのにどうして満たされないのだろう。

突然お迎え要請をされた。

お持ち帰りされた彼だ。Rさん。「ご迷惑お掛けして申し訳ございません」と連絡したら「洗濯物キレイにしてくれてありがとう！好きみが増した」と返ってきて、”あぁ、またその嘘ね”と私のメンヘラモードは継続しているらしい。洗濯物を畳んでしまうのは1人目の彼氏の時にいい子でいないといけないと思っていた名残だ。もはや癖になっている。

わりとしきりに連絡がくる。ご飯の写真が送られてきたり、”うたうのことがもっと知りたい””会いたい”と。

午前2時半。「今なにしてるん？」「普通に家でだらだらしてますよ」「迎えにきて」”あるけん”ってどんだけ飲んだんだ。出会ってまだ3日目ですが？というより会ったのその時の1回だけなのに迎えを頼むってどういうこと？要約すると"大好きで会いたいから来て"ということだった。いや、私の何を知って好きだと言ってるんだ。酔っ払った私は何を話したんだ。

持ち帰られたとはいえ、面倒を見てくれた恩はあったから迎えに行った。この私をすっぴんで外に出させるとは。お店に着くと「うたう〜！」と陽気に手を振っている。何が”あるけん”だ。普通に立ってるじゃねーか！しかもお友達と一緒に飲んでるし。私の迎え全く必要ないだろ。ウイスキーストレートを飲まされたのはとんだとばっちりでしかない。

とりあえず呼ばれたからには彼を家まで届けるミッションはこなさなければならない。着いた瞬間に家とお店の鍵を預けられてしまったし。店主と一緒に飲んでいたお友達と別れ、彼の家まで行って鍵を握らせたら私が入るまで自分も家に入らないと言う。あぁ、またこのパターンだ。

家に入るとまず洗濯物を畳まされた。干していたものを持ってきて「たたんで？」とにこにこして言う。別にそれくらいやるけれど。そして次に「この間はごめんね。」と言われた。謝るべきは私の方のはずだ。酔っ払って迷惑をかけたのは私で、彼は面倒を見るかわりにセックスをしただけ。

コンプレックスの話だった。”乗り越えてからの話をしてしまった””もっと前段階のところを聞いてあげるべきだった”と。「ただ、うたうちゃんは本当に顔可愛いから自信持ちな。性格陰キャすぎるけど。」と笑った彼はやっぱり根が優しい人みたいだ。

それでも”可愛いよ””好きだよ”と彼は言う。「嘘す言わんで。セフレがほしいならそう言ってくれたらいいのに。」「違う。俺は本当にうたうちゃんと一緒にいたいと思ってんの。」今までならこれだけ言われたら靡いていたのに、今回ばかりは本当に響かない。好きな人がいるとこんなにも揺らがないのか。だったら他の男に抱かれるな、と思うけれどそれも出来ないのが私の本当にクズなところだ。

その日は2回セックスをした。1枚ずつ自分で脱げと命令されるのは初めてだったけれど、案外嫌いではないかもしれない。でもセックスがあまり上手くなかったのは記憶違いではなかったみたいだ。終わった後に「うたうちゃん好きー！大好きー！」と抱きついてくる。この年上は無邪気だな。でもその”大好き”も”可愛い”と一緒で響いてないから。

仕事に行く前も「うたうちゃん大好き！」と抱きついてきて「大好きって言って？」と言った。嘘でも言えなくて「行ってらっしゃい」と頭を撫でると不服そうに、でも少し笑って「行ってきます。大好きだよ！」と私のスマホの上に合鍵を置いて家を出た。

彼ももしかしたらメンヘラなのかもしれないと思った。