生きていていいと思える、だから今日も会う。

あれからもっぱら理容師Rさんと会っている。お酒を飲んで、セックスをして、寝て。それだけ。

彼と会うのは2つ理由がある。1つは家が近いから。私の家から彼の家までは徒歩15分くらい。最寄り駅前の飲み屋で知り合ったのだから当たり前の距離ではあるけれど、セフレでこんなに近い距離にいる人は初めてだ。だから予定が合えば軽率に会う。

”会いたい””遊ぼう”と連絡がきた時にはもう彼は飲んでいて。基本宅飲みの私は近所のお店をほとんど知らないからいつも少し緊張して扉を開けるのだけれど、そっと入った先で店主と仲良く話している彼が手招きで迎えてくれる。こんな住宅街なのに飲み屋って意外とあるもんだな、と何年も住んでいるのに連れ回されて初めて知った。

Rさんはお喋りで基本的にふざけているから私は隣でお酒を飲んでいればいい。別に気分じゃなければにこにこする必要もないのがとても楽だ。「今日は不機嫌なの?可愛いね。」ともう何でも受け入れられる。何故か。彼はどうも私の顔が好きすぎるようで、”横顔が綺麗だね””二重幅広いね””すっぴんも可愛いよ”とあらゆる言葉で褒める。

「髪綺麗だね。」と私の髪を撫でるところをみるとやはり理容師だ。メンズサロンだから普段は女の子の髪を触ることはないらしいけれど、お風呂上がりに髪を乾かしてくれたり、「顔可愛いんだから隠さない方がいいよ。」と重たく切り揃えた前髪をサッと掬ってシースルーにしたり流石に手慣れている。髪を触られるのが好きな私はこの時間が少しだけ楽しいし、髪質には自信があるから褒められるのも嬉しい。

正直セックスはそんなに上手くないけれど、1日に2回も3回も求めてくるのがいい。それだけ私の身体が好きならそれでいい。

こうやって私の承認欲求を満たしてくれるのが彼に会う2つ目の理由。私は愛されていないと生きていられないから。愛されずにそこにいることは死んでいるのと同じだから。顔でも身体でも何でもいい。私のことが好きだと、必要だと言ってくれることが自分の価値。ただそれだけ。

そういう部分をRさんは満たしてくれるのだ。”うたうちゃんが大好きだよ””いてくれるだけでいいんだよ”と言う。愛おしそうに私を見て発するその言葉に、私が何の反応もしない意味を彼は分かっているのだろうか。

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