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「肩関節捻挫」が多い接骨院のヤバさ(整形外科医のつぶやき)

※これは接骨院の先生方を比較的広い範囲にわたり批判してしまう内容かもしれません。でも、真摯に医学と患者さんと向き合っている真面目な治療家さんのためにもお伝えしたいと思って、つぶやきます🙇

整形外科医は多分僕だけではないはずですが、肩関節捻挫という病名はあんまりつけません。足関節捻挫は多用しますが。
そもそも捻挫とは医学大辞典によると、

「外力により関節に生理的範囲を超える運動が強制され、関節包、靱帯など関節支持組織に断裂が生じるが、関節面の相対関係が保たれているもの」

医学大辞典

とされています。

要は本来、普通に動かせる範囲を超えて関節が無理に動かされた結果、関節周りのスジが断裂(部分断裂含む)しているが、脱臼には至ってないもの。

こう考えると、肩関節捻挫はかなり少ないことがわかります。なぜなら、肩は「普通に動かせる範囲」が全関節中、最も大きいからです。
そして、さらに、肩は「もっとも脱臼しやすい関節」でもあります。
となると、普通に動かせる範囲を超えることがそもそも少ないのに、超えてしまうと脱臼しやすいわけですから、肩関節捻挫と言える状態はとても少ないと、定義上言えます。

しかし、接骨院などでは肩関節捻挫と言われて施術を受けている患者さんをよく拝見します。それも、どう考えても「外力により関節に生理的範囲を超える運動が強制され」というエピソードがない患者さんも多いです。
事実、「肩関節捻挫」で検索してみると、接骨院のホームページがたくさん出てきます。なぜ、接骨院で肩関節捻挫と言われることが多いのか…邪推だといいのですが、多分、接骨院では「捻挫」であれば医師の同意なく保険適用で施術できるからだと思っています。

ですから、僕からみるとどう考えても非外傷性の凍結肩とか、逆に外傷があって、明らかに腱板断裂をルールアウト(除外)すべき状態を「捻挫」として保険で治療しているケースが多いようです。

もっと酷いのは肩こりを肩関節捻挫として、保険を使って、ただマッサージ(本来、あんま指圧マッサージ師以外が使っていい表現ではないです)をするだけというところも少なくないと聞きます。

これらの例は保険の不正請求として社会問題化していて、少しずつ改善していると聞きますが、患者さんの話を聞くと、まだまだ根深く存在しているようです。

保険の不正請求も、国民みんなで負担しているお金ですから大問題ですが、さらに肩専門の医師としては患者さんが心配です。凍結肩を捻挫として治療すること、捻挫として治療してたら実は腱板断裂だったということ、など患者さんの不利益になることもあるので、「肩関節捻挫」と接骨院で言われたら、「ん?」と思って、整形外科受診もご検討ください。

※もちろん、真っ当な「肩関節捻挫」も存在しますし、厳密な定義とは違うにしても接骨院で治療することに何ら問題がない保険病名としての「肩関節捻挫」もあります。すべての「肩関節捻挫」を否定するモノではないのですが、「肩」という特殊性に日々向き合っている僕としては、「肩関節捻挫」が多いっていうだけで「ん?大丈夫か!?」って思ってしまうんです。

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