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【五十肩治し方】夜寝るときの激痛が改善しない理由と改善方法【四十肩】

「今日からすぐできるのは、夜寝るときの環境を整えて、姿勢を変えると言うことです。」

今回の内容は、四十肩・五十肩(肩関節周囲炎・凍結肩)で悩ましい夜間痛の原因と治療法を徹底解説。
オススメの寝る姿勢や環境作りも紹介しています。

※このnoteでは、整形外科医:歌島大輔が医学的根拠をもとに、わかりやく、かつ実践的な医療健康情報をお届けします。
ときどき出てくる「ふんぞり男」とは、その名の通り、ふんぞり返って態度がデカい患者さんです。



ふんぞり男「お、おい、助けてくれ・・・寝不足で寝不足で・・・」

は、はい?どうしました?ゲームのやり過ぎですか?

ふんぞり男「ふざけんな!こら!寝ようと思っても肩が痛すぎて眠れねぇんだよ」

なるほど・・・それはお辛い。
実際そういう方って多いんですよ。
あなたも思い当たるところはありませんか?

肩の夜間痛で悩まれる人の声を毎週のように伺っています。
特に五十肩は、夜間痛の症状が多いのが特徴です。

今回は五十肩の夜間痛にフォーカスを当て、五十肩の夜間痛が改善しない理由と対処法について大事なことを3つお伝えします。

この3つは他の腱板断裂や石灰沈着性腱板炎などにも共通する部分が多いので、五十肩でないけど夜間痛で悩んでいる人もご覧いただけましたら幸いです。

特に第1位が今日からできる対策をご紹介していますので、最後までご覧ください。

「五十肩の夜間痛が改善しない理由と改善策TOP3 」
みていきましょう。

第3位 ストレス・うつに近い状態

第3位ではありますが、精神状態との関連は侮れません。
精神状態が原因なのか結果なのかは議論が分かれます。

肩の夜間痛で眠れなければ、半端ないストレスと疲労でうつに近い状態になってもおかしくないですよね。
実際にそういう患者さんは確かにおられます。
しかし、ストレスやうつ状態が結果として起こったとしても、それ自体が夜間痛の悪化や改善しないことに繋がる、つまり悪循環が起こると考えています。

2019年の研究(*1)で、五十肩の患者さんでは健常な人に比べて不安を示す数値が高くなり、睡眠障害も多かったと示されています。

この悪循環を断ち切るためには、第2位と第1位で紹介する対策をしましょう。
そして、夜間痛に対してできる物理的な対処法を徹底することとともに、精神的にもリラックスをしたり、不安を和らげるために一般的に良いと言われることを取り入れるのも考えたいです。

いろいろな研究データが上がってきているのが瞑想やマインドフルネスですよね。

2021年の研究(*2)では、看護学生さんの不安を和らげるために3週間毎日30分の瞑想をすることが効果的だったと示しています。

効果的というのは不安が減ったということです。

瞑想とかマインドフルネスとか難しそうに聞こえますが

「静かなところで心を落ち着けて、ゆっくりとした呼吸にだけ集中する」

これで十分効果が期待できますので、試してみてください。

第2位 五十肩の炎症が強い

次に紹介するのが、炎症の強さです。
この場合は、夜間痛も強いですが、日中の痛みや動かした時の痛みも強いのが特徴になります。
ベースの痛みが強ければ、夜間痛も改善しにくいのは当然ですよね。

実際に夜間痛は、五十肩の炎症期に強い印象があります。
ただ、僕は五十肩において、俗に言われる炎症期・拘縮期・回復期みたいな単純な3ステージの流れを重視していません。

それほど、五十肩の患者さんの症状は単純じゃないという印象を持っています

何ヶ月も経ってから炎症が強まったり、拘縮の期間が年単位で続いたりと、典型的でない患者さんをたくさん拝見しているから余計にそう思うのだと思います。
ここらへんの五十肩の基本的な考え方はこちらの動画をぜひご覧下さい。

五十肩の場合は、たいてい「関節包」という関節を包む膜に強い炎症が起こっています。
炎症を直接抑える治療として効果的なのは、直接関節の中にステロイドという強い抗炎症作用がある薬を注射することです。

実際、この注射で夜間痛が改善する人はおられるのですが、それでも抑えきれない炎症というケースもあります。
また、関節の中に注射するより、肩甲上神経という肩の近くにある神経に注射する方が効果が高いという研究(*3)も少しずつ出てきています。

夜間痛がつらくて「リハビリどころではない」という状態の患者さんは、主治医とよく相談していただくことをオススメします。

また、こちらの2000年の研究(*4)では、関節鏡で五十肩の炎症が強くなっている関節包の癒着を取ったり、切れ目を入れて可動域を拡げる手術をすることで、夜間痛が大きく改善したことを報告しています。

実は、この重症五十肩に行われる関節鏡手術は、15分前後の手術時間で終わります。
習熟した執刀医が行えば、かなり効果が高い手術だと感じています。

ふんぞり男「待て待て!おれは手術は受けんぞ!注射すら嫌だ!もっと簡単にどうにかしてくれ!」

ですよね。ぞり男さんは、そう思いますよね。
ぞり男さんに限らず痛いことはしたくないですし、しなくて済むならその方がいいわけです。

そういう場合にやってみて欲しいことは、寝る前にしっかりと痛み止めを飲ことです

なぜか痛み止めをできるだけ飲まないという方針をとっている人が多いのですが、さすがに夜眠れないくらいなら飲んだ方が良いとお伝えしています。

もちろん、持病の関係で難しい人もいますが、それでも選択肢は意外とあったりします。

第1位 肩峰下の圧力が高い

ふんぞり男「けんぽうかの圧力って、なんだ?」

ですよね。説明します。
肩峰というのは肩甲骨の屋根みたいになっているところです。
肩の一番外側の出っ張りとして触れる骨になります。

模型で言うと、この部分のことを言います。

そして、この部分の下にスペースがあるのがわかりますか?

ここを肩峰下腔と日本語では言います。
肩峰の下にあるスペースことで、そのままの意味です。

ここには、このチャンネルでお馴染みの腱板というスジがあります。

その上には滑液包という炎症を起こすことも多いクッションが乗っかっています。

肩峰下の圧力が高いと、痛みが出るということなんですね。
もちろん、ただ圧力が高いだけでは痛みの原因にはなりにくいです。

そこに炎症がある状態だったらどうでしょう?
イメージしてみてください。

打撲をして腫れているところをギューッと押されているとしたら‥‥

イジメというか、拷問というか、やめてくれ!って感じですよね。
夜寝ている姿勢は、そんな状態になりやすいってことなんです。

2004年の研究(*5)は、腱板断裂の手術前と手術後の肩峰下の圧力を測定してくれています。


それも姿勢ごとに比べてくれていて、とても参考になるんです。
立った状態、仰向けに寝た状態、痛い方を下にした横向きで寝た状態で比較しています。

手術後はどの状態でも圧力がしっかり下がっていました。
これは腱板断裂の手術の時に、肩峰の下のスペースをしっかりクリーニングして骨を削ったり、靭帯を剥がしたりするから狙い通りなわけです。

この論文で参考になるのは、姿勢による圧力の変化になります。

立った状態だと圧力が15.8mmHgだったのに対して、
仰向けで寝ると45.9mmHg、
痛い方を下にした横向きだと51.8mmHgと
圧力が跳ね上がるんですよね。

そりゃ痛いよね・・・という、圧力の上がり方です。
この寝ると圧力が上がるのは五十肩にも共通する話だと考えています。

例えば、2017年の五十肩の患者さんを対象にした研究(*6)では、夜間痛があるとレントゲンで肩峰の下のスペースが狭い傾向があったと報告しています。

これは実際、僕も重症で手術に至るような患者さんではこの傾向があるなと感じています。
なぜなら、手術に至るような患者さんは関節が完全に拘縮してしまって、いわば縮こまってしまっているんですね。
結果、腕が数mmですが上に持ち上がった状態で固まってしまっているんです。

これを手術で柔らかくなった途端に、肩峰の下のスペースが拡がるということは、よく経験しています。
そういう意味では五十肩で炎症が強い時期のみならず、炎症は減ってきたけど可動域、動かせる範囲が狭いという時期にも夜間痛は起こります。

そして、この肩峰の下の圧力の問題をどうにかしたいと考えた時に、
今日からすぐできるのは、夜寝るときの環境を整えて、姿勢を変えると言うことです。
先ほどのグラフをご覧ください。

圧力を下げるためには立って寝たらいいわけです。
しかし、それは当然無理!となったら、仰向けと立った状態の間くらいの
やや上体を起こした姿勢で眠るというのが現実的な対策になります。

なかなか寝付きにくい姿勢ですが、痛いよりはだいぶマシという人も多いです。
病院のベッドなど、リクライニングできれば容易に実現できます。
しかし、多くの家庭のベッドや布団ではそれは無理な話です。

そのため、こんな感じで、大きめのクッションや掛け布団など、あるモノで工夫したいですね。

あと、こういう大きな三角形のクッションも売っているので試してみていただければと思います。

また、痛い方の腕の位置も痛みと関連することは経験的に感じていて、一般的に腕の位置が背中側に落ちてしまったり、変にひねられた状態になってしまうと痛みが増すことが多いです。
しかし、どこにどのくらい炎症があるかによって、楽な腕の位置は異なってくると思いますので、一番痛みが少ない位置を見つけて、その位置をキープできるように腕周りをクッションで覆ってしまうという方法をオススメします。

今回、とても大切なことをお伝えしてきましたので、スライドを使ってまとめていきます。五十肩の夜間痛の原因と対策を主に3つお伝えしました。

第3位は不安などのメンタルでしたね。
その対策として瞑想やマインドフルネスなどを対策としてご提案いたしました。
その中でも、ゆっくりとした呼吸をして、その呼吸に意識を集中するだけという方法をお伝えしました。

第2位は五十肩の炎症が強いという原因をお伝えし、その対策として注射や飲み薬、時には手術すらあるということでしたね。

そして、第1位が肩峰の下の圧力が高まるという原因。
この対策として、少し上体を起こして寝るという今晩からすぐできる対策をお伝えしました。

ぜひ、できることから取り入れていただければと思います。

本日の一言

五十肩の夜間痛対策はとっても大切です。

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参考論文

(*1)Toprak, M. & Erden, M. Sleep quality, pain, anxiety, depression and quality of life in patients with frozen shoulder1. J. Back Musculoskelet. Rehabil. 32, 287–291 (2019)

(*2)Karmakar, A. Effectiveness of meditation in relieving anxiety among general nursing and midwifery students. Int. J. Res. Rev. Appl. Sci. 8, 320–323 (2021)

(*3)D. S. Jones et al. "Suprascapular nerve block for the treatment of frozen shoulder in primary care: a randomized trial.." The British journal of general practice : the journal of the Royal College of General Practitioners, 49 438 (1999): 39-41 .

(*4)Watson, L., Dalziel, R. & Story, I. Frozen shoulder: a 12-month clinical outcome trial. J. Shoulder Elbow Surg. 9, 16–22 (2000)

(*5)山本宣幸 et al. 腱板断裂患者の夜間痛について. 肩関節 28, 279–282 (2004)

(*6)赤羽根良和, 永田敏貢, 斎藤正佳 & 篠田光俊. 夜間痛を合併した肩関節周囲炎の臨床的特徴. 理学療法学 44, 109–114 (2017)


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