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デザイナーから見たコロナ禍を食らう映画産業と、これから

映画のデザインに足を踏み入れてからまだ数年、タイトルが恐縮僭越だが、コロナ禍の2ヶ月をデザイナー目線で記録、無期限延期の関係作品を風化させないためにもノートを始めてみようと思う。

3月の制作物 

『眉村ちあきのすべて(仮)』パンフレット制作(4月3日〜公開予定)・『アボカドの固さ』宣伝美術+パンフレット制作(4月11日〜公開予定)・渋谷パルコの企画展と合わせた『トム・オブ・フィンランド』生誕100年記念上映用ビジュアル制作(4月23日〜)・その他初夏公開以降のラフデザイン ・公開中作品は『COMPLY+-ANCE』

3月前半 大手配給作品の延期や映画館の週末休館も起きており、先の見えない中の制作が進む。案件を幾つか抱える中で『アボカドの固さ』(監督:城真也)は自主配給作品であり、デザインだけでなく宣伝を一緒に広げていたので、目の前で彼らの不安を察しながらも、あるのか分からない公開日は待ってくれず「パンフレット素材を早く送れ!」と、制作の井上君にプレッシャーをかける。

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3月中旬 『眉村ちあきのすべて(仮)』パンフレット完成。満足の出来。しかし本当に公開出来るのかという疑問を持ちながら。

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3月後半 アメリカのロックダウンの影響で『トム・オブ・フィンランド』展の原画が届かないとの連絡が入る。同時公開予定であった100周年記念上映のビジュアルは完成していたが入稿がストップ。今後の日本の想像が少しつく。 劇場の集客率が70~80%減とも言われていた。

4月前半 公開日日納品とギリギリであったが『アボカドの固さ』パンフレット完成! 間に合った〜と祝杯を挙げてすぐ緊急事態宣言が発令。無期限の延期が決まる。『眉村ちあきのすべて(仮)』、地方公開予定であった『COMPLY+-ANCE』も無期限の延期。

アボカド_表紙

4月公開予定3作品、公開中1作品が止まり無念の気持ちであったが、宣伝と自粛の狭間、世に求められていないデザインをする矛盾から解放され一瞬ホッとする。しかしすぐに保証の無い劇場の閉鎖の結果は想像が付き、恐ろしくなる。映画の仕事は沢山の人たちが関わり無数の夢が乗る。制作者や配給劇場だけでなく、自分を含め観る側もその夢に乗る事が出来る。何度も映画や映画館に救われているのに、、、と。

そこからが早かった!

『あの日々の話』で一緒に仕事をした MotionGalleryの大高さんをはじめ日本を代表する監督達が「save the cinema」や「Mini-Theater AID」をすぐに創設し署名や資金を集める。映画を守ろうとする流れはニュートリノを超える速さで広がりを見せ、サイヤ人の元気玉より大きな連帯感を作る。この一連な動き(ムーヴメント)は映画の世界に少しかじっている自分ですら嬉しい気持ちになる。「いやぁ、映画って本当にいいもんですね」と水野晴郎の絵が浮かぶ。自分も何かできないかと考える中、スポッテッドプロダクションズの直井さんからオンライン映画館「STAY HOME MINI-THEATER」を立ち上げるので、ロゴの協力をして欲しいとの連絡が入り二つ返事で進める。

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STAY HOME MINI-THEATER

STAY HOME MINI-THEATER(以下SHMT)とは、エイベックス・エンタテインメントの協力により「mu-mo Live」という無観客ライブ ・プラットフォームをカスタマイズしたオンライン上の映画館であり、ミニシアターで見られる上映後の監督やキャストによるトークショーも併映(ZOOMによる遠隔での収録によるもの)するなど、新しい試みをしている。

また、興行収入から必要経費を差し引いた額を、上映予定であった対象劇場と配給・製作サイドで5:5で分配をする、“劇場・配給・製作”を守る画期的なシステムであり、「save the cinema」や「Mini-Theater AID」と連携しており、全てが繋がっていく。

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COMPLY+-ANCEコンプライアンス
眉村ちあきのすべて(仮)

4月29日SHMTが始動!プレオープン作品は『COMPLY+-ANCE』(総監督 齊藤工)、『眉村ちあきのすべて(仮)』(監督 松浦本)の2作品。自分が関わっている2本でもある。『COMPLY+-ANCE』チームでは総監督の発案でチャリティーTシャツを制作販売し、最前線で戦ってくれている医療従事者へ少しでも届くように収益は全額日本赤十字社へ寄付にまわしている。

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STAYatHOME_black_アートボード 1

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購入先は→ https://mokuka.theshop.jp/items/28626991

想像を超える沢山の声が

3日間のプレオープン、蓋を開ければ予想を超える沢山の反響が!新しい映画を待っている人達が沢山いる。何より「映画館が再開されたら劇場の大きなスクリーンで見たい」「改めて映画館に行きたくなった」の声が多く、催しの意味としても嬉しい結果になる。改めて“観客”も映画の一部であると感じる。

これからの映画との関わり、そしてデザイン

どこよりも早く自発的な広がりを見せる映画業界の連携に感嘆させられる。SHMTは1つのモデルケースであり、今後長丁場に備え色々なアイデアが生まれるだろう。この流れを更に発展させ、残す事が出来たらと映画を作ることは出来なくても切実に思う。デザイナーの関わり方も、制作物だけでなく大きい意味のデザインなど今後変わってくると思う。またいつもの場所が戻れるように、非力ながらも少しずつ出来ることを探していきたいと思う。そして、映画だけに関わらず、すべての文化に繋げていけたらデザイナーとしての役割を見出せるだろう。


自分の関わっている作品の火を消さない事が目当てでもあるので、下記にリンクを貼っておきます。

『COMPLY+-ANCE』HP→https://complyance.tokyo/
公式twitterで壁紙プレゼント中 → https://twitter.com/ComplyanceTokyo パンフレット→https://spotted.stores.jp/

『眉村ちあきのすべて(仮)』予告→ https://www.youtube.com/watch?v=IZpQPme-EdQ 物販→ https://mymr.base.shop/categories/2341559
twitter→https://twitter.com/mayumura_movie/status/1248460155059982344

『アボカドの固さ』HP→https://avokatas.com/ twitter→ https://twitter.com/avokatas

『トム・オブ・フィンランド』
HP→https://www.magichour.co.jp/tomoffinland/

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