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映画『チェンジリング』

うっかり観てしまった感半端ない。
観終わってそこそこ寝る時間なのに書かないと眠れない程の衝撃だった。いやこれうっかりスクリーンで見なくてよかった。

2008年の作品なので、あらすじその他はググっていただければ良いと思うが、実際にあった事件を元にした映画なんである。

主役のアンジェリーナジョリーは目に入っていたが…(だからうっかり観てしまったんだが)クリント・イーストウッド監督だと後で気が付いた。2008年といえば、私はお仕事まっしぐらだった時期なので見逃してたのかなぁ。

まぁ、基本、母・息子というだけで身につまされる。映画の時間軸で7年分あるわけだが、それにしても142分でこれだけ様々に展開していくとは。

普通ならもっと猟奇的な箇所を刺激的に表現しそうなもんだが、どれもこれも事件そのものは淡々としたリズムで描かれている。んだが感情のほうの伝達度が凄すぎて揺さぶられるなんてもんじゃない。

誰に言っても信じてもらえないイライラ感とか、権力の都合で隠蔽されて絶望感とか、理不尽な圧力への恐怖感、僅かな希望に揺さぶられ、最悪の状況下で理解者と出会い、犯人が最後を迎える感情までが流入してくる。怖いわ。

捕まった子供たちの恐怖感の描写は短い目な気がしたが、もしかしてアマプラさんシーン調整してる?私が怖すぎて脳内早送りしたのかもしれん。

私の中で一番影を落としたシーンがある。
「信じて」そう叫び続けたアンジー演じる母親・クリスティンの切実な訴えは、周りの良心的な人々によって真実を見出されていく。その後、法廷で猟奇殺人の犯人が「やってない。信じてくれ」と叫んで一瞬ゾッとする。この人にも別の真実が存在するのではないか。そんなことは無くただの安易な言い逃れなのだが、私の中でこの「真実」と「嘘」の対比は大きく響く。読み取り方としてはお門違いで穿りすぎかも知れないが。

私の中でプチ感動したシーンもある。共犯させられていた少年に刑事が「自分で掘れ」というシーン。「なんて酷な事を!!!」と胸痛くして見ていたが次で刑事の意図が伝わってきた。その刑事の大人としての深さも凄いが、説明っぽいセリフも何もないのにそれが伝わってくるこのシーン自体が凄いな。

観終わった後で口コミ感想など読んだが「ロス警察クソだな」的なものが多く見受けられた。これがどこまで脚色されているのか分からないけど、映画で受け取るところではそれで正解なんだろう。

けれど、細かに忠実に1920年代を再現している本作品が本当に表現したかったのは「そういう時代があった」という歴史なんだと思う。女性の立場の描写についてもそれを歴史として伝えておくべきという作品なでもあるんだろう。

圧力・腐敗の歴史と書いたが、歴史上だけでなく今でも存在はするんだろうな。それに圧力は何も権力や財力などに依ったものだけではなくて、昨今流行りの「同調圧力」だってきっと同じだ。

その理不尽の中にあってアンジーは凛として美しかった。いや、演じているアンジーも美しいのだが、元になったご本人が美しい。これまたどこまで正確に再現されているかにもよるが、映画で受け取る限りはそうだ。きっと映画ほど凛とした感じではなくもっと迷い複雑で辛かっただろうと思うけれど。

ああ、辛い。口コミ感想の中に溢れる「しんどい映画」。いや、ほんまにしんどいでこれ。

それでも途中で投げ出さずに見てしまったのは、自分の心境の変化なのだと思う。少し前ならわざわざこのような映画を選ばなかった。

ちなみに冒頭に選んだイラスト。
明日ゆっくりだから映画を観ようと思って珈琲淹れたけど、一口も飲まずにすっかり冷めてしまった…という事を表現している。

何だかうっかり凄い作品を観てしまった。

ペンギンのえさ