詩子は真夜中の庭で
あれは6年前のこと。忘れもしない。あの頃私は引越してまだ間もなく、仕事が変わり、今の夫との同棲も始まりと、新しい環境に慣れるのが精いっぱいでした。目まぐるしい日々の中で、それは起きたのです。
後に夫はこのように伝えています。夜、いつものように眠っていると、隣にいた私がう~んう~んとうなされていたそうです。
(あっ、うなされてる…)
だけど、ただうなされているのとは様子が違っていたそうです。苦しそうというか、むにゃむにゃ喋っているというか。何だかおかしいと思い、夫は私を起こそうとしました。
「おい、大丈夫?おい?」
すると次の瞬間、
「あ…!あ…!ああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
なんと突然、私が目をくわっ!!と見開き、まさかのゼロから100の勢いで、一気に覚醒して叫び出したそうです。
(ええぇぇぇぇぇぇぇーーー!!??)
そのとき、夫の脳裏には エクソシストという言葉が浮かんだそうです。さあ、どうする!?神父もいなけりゃ十字架もない!!
「だ、大丈夫だよ、大丈夫だよ」
とにかく落ち着かせようと、仰向けに硬直しながら、パニック状態で叫んでいる私のお腹をポンポンと叩きなだめる夫。すると、
あんなに大声を出して叫んでいた私が、ふと落ち着いたそうです。そこからです、私に記憶があるのは。
金縛りにあっていたようです。いや、どんなって?実はこんな夢を見ていたのです。
いつものように寝ていたら、玄関から知らない男の人が入って来ました(注意:夢です)どうやら泥棒です。目ぼしいものはないかと、部屋の中をウロウロ歩き回っています。
(ちょっと!!)
私は、隣で寝ている夫を小声で呼び起こそうとしました。
(ねえ!!ちょっと!!)
すぐそばに知らない男の人がいるっていうのに、一向に気づく気配がない夫。
(んにゃろ~!この状況で起きねえって、どーゆー神経してんだっ!)
だんだんイライラしてきた私。このまま泥棒に好き勝手させるわけにはいきません。きっと私が起きれば、夫もすぐに起きて応戦するでしょう。そう強気に目論んだのは、我が家には、夫が格闘技みたいな何かを習っていたときに買った木刀が、いざという時のために枕元に置いてあるのだよ(ニヤリ)
勇気を振り絞って、俺から行くぜえっ!!!
「あ…!あ…!ああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
↑ 夢の中ではこうでした。
自分が叫んだことにより、その叫び声で目を覚ました私。ど、泥棒は!??我に返ったところで、ようやく気がつきました。
「ああ~・・・夢か」
身体中、冷や汗でびっしょり。夢の中ではあんなに勇ましかったけれど、内心とても怖かったのですね。ぐったりしていましたが、すぐにほっとしてまた布団に身を預けました。その後のことは覚えていません。ただこんな状況の中、夫がよくパニックにならずに、落ち着いて声をかけていられたものだと少し感心したのです。
私は思いました。この人なら器もあり、結婚後も安心できそうだと。夫はこう思ったそうです。これは・・・・・・自分がいないとダメだと。
お読みいただきありがとうございました!タイトルの『詩子は真夜中の庭で』というのは、イギリスの児童文学作家、フィリパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』からインスパイアされて命名しました。
1958年にカーネギー賞を受賞した作品で、私も学生時代に読んで、すごく夢中になった不思議な作品です。秋の夜長にこちらもぜひ読まれてみてはいかがでしょうか?私の庭は、1LKのコンパクトな庭でしたけれどね。
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