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オリンピック・イヤーに観て考えたい、インポッシブル・アーキテクチャー展

2019年2月から全国を巡回している「インポッシブル・アーキテクチャー展」。現在、最後となる大阪・国立国際美術館での展示が行われています(2020年3月15日まで)。オリンピック・イヤーに観て、考えるにふさわしい展覧会です。なぜなら、企画を決定づけたのが、ザハ・ハディドによる「新国立競技場」案がキャンセルされたことだったから。

私は広島展で見たのですが、会場にはザハ案のCGが出ているだけでなく、風洞実験模型や実施設計図書も展示されていました。ザハのスタジアムは決して「インポッシブル」ではなく、確認申請を待つばかりの状態だったことに、改めて気付かされました。

オリンピックで思い出すのは、北九州での講演で、磯崎新氏が言及していた幻の「福岡オリンピック構想」です。博多湾岸を主会場に、大型客船を選手村とし、東シナ海沿岸の国々を結ぶ。氏は「九州から世界のオリンピックにもの申す。20世紀とは違う、21世紀のフォーマットだ」と語っておられました。しかし結局、今度の東京オリンピックは「21世紀型」にはなりそうにありません。
 
ザハが「アンビルトの女王」なら、磯崎は「アンビルトの論客」でしょうか。今回の展示には磯崎の「東京都新都庁舎計画」も出ています。コンペで超高層の要請に逆らい、市民のための大広間を設けた低層案。そして、展示の最後のほうでは、会田誠と山口晃による、ユーモラスな「東京都庁はこうだった方が良かったのでは?の図」「都庁本案圖」が楽しませてくれます。

ふたりの画家がそれぞれ日本橋を描いた作品も出ていて、いずれも現日本橋の上空を通る首都高の上に、さらに被せて木造の巨大太鼓橋を架けるという奇抜な絵。でも、個人的には首都高の地下化より共感できます。

山口晃さんの日本橋の絵はこちらで見られます。

全国4館の共同企画ながら、東京の館が一つも入っていないことも、つい深読みしたくなりました。

下の写真は磯崎新「東京都新都庁舎計画」模型。同展ではなく、撮影可だった大分市美術館「磯崎新の謎」で撮ってきたものです。

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