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2024/06/05 仁義なきサブカル映画バトル

※このnoteでは特定の映画のことを指していません。今まであった経験をもとにそこそこ脚色しています。

その日の読書会は少しゆるい会で、紹介する本以外の話題もそれなりに盛り上がった。となりに座っているAさんがやや社会派の本を紹介したあとに、「そういえば」と付け加えた。
「この作家さんがツイートで紹介してたあの映画、めっちゃ良かったんですよ~」
『あの映画』というのは今世間を賑わせているある洋画のことだ。口コミから瞬く間に話題が広がり、空前のヒットを飛ばしているらしい。
「見ました?」「とても良かった」「内容が考えさせられた」「息をつく暇もなかったくらい」
と読書会が盛り上がっていく中で、わたしはひとりぽつねんとしていた。
どうしよう。その映画、まったく面白くなかった。

SNSで流行しているなら……と、ややミーハーな気持ちで見に行ってみたら、思いのほか面白くなかった。というか、意味がわからなかった。
ところが世間は違った。「面白い」「感動した」そして、「意味が分かるとすごい」「構造がよくできている」らしい。
わたしはその映画の意味がわからなかったのだろうか? 考察を見てもあまりピンと来ない。でも、読書会のメンバーはなんと全員見ているらしい。しかも、絶賛の嵐だ。
「この前の読書会でも一瞬その話題になりましたよ」「すごい! やっぱみなさん見てるんですね~」「賞の受賞は確実でしょうね」「あの映画、見ました?」
あ、話題がわたしの方向に来た。これは濁したとしてもマイナスな意見を言いにくい雰囲気だ。おとなしく無難な話題で流されておこう。
「見ましたよ。キャストも演出も豪華でしたよね。ラストの展開も面白かったし」
「そうそう。ラストの展開がいいんですよね。それまでの伏線も面白かったし。主人公が郵便受けに手紙を受けとるシーンとか」
「そういうシーンありましたっけ」
あ、しまった。うっかり口がすべった。自分が真面目に映画を観てないことがばれてしまう。
「え! あったじゃないですか! しかもそれなりに重要なシーンでしたよ」
「あ、そうでしたっけ」
みんなよく覚えてるな。自分は八割忘れているというのに。そのあとも読書会はその映画の考察などで盛り上がって、盛況のうちに終了した。
でも、あの映画はつまらなかったと思うんだけどな……。

家に帰って、わたしはかたっぱしからSNSで「○○ 面白くない」「○○ つまらない」で検索してみたけど、出てくるのは「つまらなそうと思ったけど面白かった」「面白くないと思う人のセンスが謎」ばかりひっかかって、心が折れてしまった。
そんなにわたしの感性って鈍いかな????
それとも、もっと探せば自分と同じ意見の人もいるんだろうか。
でも、もう疲れたので、わたしは「上半期に見た映画十選」の中の8番目くらいにその映画を入れた。ツイートに「ストレートに面白かったというより変化球」と紹介して、なんとなく通ぶることによって終わらせた。