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臆病なんだ

あの人は皆んなに優しい。
勘違いすんなよ。

特に要件はないけれど、名前を
「呼んでみただけ」って笑った瞬間に熱を見た。
ときめいたりすんなよ。
ただのいたずら、暇つぶしにすぎない。

前に話した、なんてことない会話の内容を
覚えていただなんて。
キュンとするんじゃないよ。

ちょっといじわるされるからって、
もしかして…?って期待すんなよ。
良くない妄想癖が盛んになる。
気持ち悪いから必死で否定する。

会えないと寂しいとか、いないと心細いとか
乙女みたいな発想を殴りたくなる。
少女漫画のヒロインには程遠いんだから。

でも恋がしてみたい。
誰かを好きになって、両想いになって、
他愛無くてしょうもない話題で笑い合える喜び
会いたくて苦しくなる痛み
好き同士でいる尊さを、
他人のエピソードでもなく、想像によって紡ぐ小説の登場人物を通してでもなく、
“私自身で”知りたい。

だけど、これが恋と呼ぶのかはわからない。
好きなのかすら分からない。
恋人になりたいと願う相手なのかも。
もしかしたら刹那的感情であって、
それを未来まで繋ぐ意思は無いのかもしれない。

怖いんだ。好きになる事。
怖いんだ。近づく事。
怖いんだ。知る事。

怖いんだ。求められる事。
怖いんだ。触れられる事。
怖いんだ。裏切られる事。

一人でいる事に慣れたり好んだりしていても、平気だと思っていたら、本当は寂しいんだって些細なことがきっかけで思い知るんだよなあ。

リアルな恋愛経験を一度でもしてみたい。
けど恋愛をする自分は想像ができない。
誰かの彼女になる現実がピンと来ない。
手を繋ぐ事でさえ憧れなんだ。

いつか来るかなぁ。
隣に心を寄せる人がいる“いつの日か”が。
たった一人の人からの優しさ、温もり、思いやり、愛情の美しさやかけがえのなさとその重みをその身で受け止め、同じものを与えていく未来があるだろうか。

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