見出し画像

嫦娥奔月

斑竹姑娘と並び、竹取物語との関連を指摘されるのが「嫦娥奔月」です。「じょうがほんげつ」(Chángé Bēnyǜe)と読みます。中国の神話です。

斑竹姑娘がチベット伝来の物語とあって、中国ではそれほど読み継がれていないといわれるのに対し、嫦娥奔月は日本の竹取物語のように子供たちへも読み継がれています。

竹取物語とは共通項も多く、ただ同じではないため、どちらかがどちらかを手本にした、あるいは翻訳していく上で相違してきたともいわれます。

あらすじを簡単に書きました。

昔々、后羿(こうげい)という弓矢の名手がいました。
また彼には、嫦娥(じょうが)という名前の美しい妻がいました。

世界には太陽が十あり、その日差しに人々は苦しんでいましたが、后羿が九つの太陽を射落とします。そして一つ残った太陽は毎日同じように昇り、沈むようになります。

この功績を称えられ、后羿は女仙である西王母(せいおうぼ)から、不老不死の薬を貰い受けました。

その後、后羿は弟子や家来を多く持ちます。その中に逢蒙(ほうもう)がいました。彼には野心があり、隙を見て不老不死の薬を盗み取ろうとします。

それを防ぐため、嫦娥は自ら薬を飲みました。すると嫦娥は不死の身として月に移り住み、暮らしたといいます。

嫦娥奔月にも様々な筋書きがあり、例えば、

・嫦娥は身勝手な女で、不老不死の薬を盗んで飲んで月に上るものの、罰として蛙(カエル)になった。

・后羿は太陽を落とした功績によって偉くなり、人が変わってしまったので、后羿が不老不死になったら世界が危ないと思い、嫦娥が飲んだ。

・嫦娥が月へ上った後、后羿は逢蒙によって殺されている。

・月には兎(ウサギ)がいた。

・嫦娥は月に行った後、兎になった。

・月には呉剛という男がいて、彼は強欲の罪を罰せられた身で、永遠に生えてくる月桂樹を切り続けていた。

・嫦娥を哀れに思った后羿が、満月の夜に祈りを捧げると、嫦娥が月より戻ってきた。

など、たくさん派生しています。

竹取物語との共通項は「月に上っていくこと」「不老不死の薬を取り巻いていること」この二つです。嫦娥はかぐや姫のように化身の者ではなく、人物を含めた全体が神話の世界として描かれています。

竹取物語の成立は平安時代初期頃といわれるので、西暦だと九世紀に入ってからなのですが、嫦娥奔月はその数百年前からあったなんていわれます。斑竹姑娘のように後付けを指摘されるのではなく、竹取物語を書く手本にされた可能性も否定できずにあるのですね。

兎角まあ…中国は途方もない歴史と文化を持っています。