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都議選各党の公約を比較する④-まとめおよび雑感-

 都議選における各党の公約についての比較検討、最終回の今回は自民党、都民ファーストの会、日本共産党、立憲民主党の主要政党の政策について、私の見解を述べると同時に、政策の比較検討をする意義について述べたい。

自民党について

 自民党はソフト面においては、中小企業者への障がい者助成の強化、教育面での習熟度別授業などを主張しているほか、ハード面でも羽田空港の機能強化、24時間稼働など、経済活性化をメインに置いた政策を展開している。

 多摩、島しょ対策としても、多摩に高齢者医療の拠点確保、中央線の複々線化、島嶼にはエコツーリズムによる観光振興とインフラ面を中心とした政策を掲げている。

 ここからすると、自民党が社会インフラに対して重点を置く傾向がみられると言える。

都民ファーストの会について

 都民ファーストの会は、ソフト面については、ひとり親の養育費確保支援、特別養護老人ホームなど介護施設の着実な整備、1日あたり利用者10万人未満駅のホームドア整備といったほかは、具体的な社会政策が見られない。また、都内の実情に即した少人数学級への対応、少人数指導・教科担当制の強化という点も抽象的で具体的にどうするかがわかりにくい。

 ハード面については、自民党同様に交通アクセス線、多摩都市モノレールなど交通ネットワークの着実な整備をするとしている他、上下水道での民間経営手法の導入のほか、市場、都営交通でも同様の措置を導入するなどいわゆる民活に対して積極的な姿勢を示している。

 多摩については、東京都立大学の強化、交通ネットワークの強化、立川防災センター機能強化、多摩メディカルキャンパスの再構築を通じた多摩地域の医療向上と、教育、社会インフラ、防災、教育など幅広い面について言及している。島しょについても、八丈島を拠点とした東京消防庁ヘリコプターによる救急搬送体制の確立、交通アクセスの向上、定住促進と、多摩・島しょ地域についての政策が具体的である。

 上下水道、市場、都営交通での民間経営手法の導入など、どちらかというと民間での市場原理を公共性が強いとされている部分に導入する意味で、小さい政府志向の政策を展開しているのが特徴的と言える。

日本共産党について

 日本共産党は、ソフト面では、18歳までの医療無料化、障がい者医療助成費の対象拡大、30人学級の実現、夜間定時高校の推進など社会政策、教育に対しての財政支出、助成に対して積極的な姿勢を示している。

 ハード面については、羽田空港の新ルートの廃止、東京外環道路の建設反対と、住民側からの不安、反対が大きい公共事業に対して否定的な見解である。また、上下水道の民営化についても反対の姿勢を採っており、民営化に対して否定的な立場を採用しており、都民ファーストの会とは対照的である。

 多摩・島しょについては、「市町村総合交付金」の増額・拡充をはじめ、市町村に対する財政支援の強化、島しょ住民の島しょ地域外医療機関への通院のための補助金を出すなど財政支援、個人への助成を強調している。

 全体として、助成金や個々人の福祉を手厚くする方向性の強い政策を打ち出しており、大きい政府志向の政策を強調していると言える。

立憲民主党について

 立憲民主党の政策はソフト面では、低所得者、高齢者、ひとり親家庭など、住宅確保要配慮者への家賃補助(クーポン)などの実施、教育の無償化、私立高校の保護者への特別奨学金助成を拡充するなど社会政策を重視する傾向もみられるが、共産党ほど個々人への助成金に対する積極性はない。

 ハード面については、羽田アクセス線など6路線の整備など自民党と共通する積極インフラ政策を展開する一方で、東京外環道路については原因究明と納得できる再発防止などの措置が採られるまでという条件付きながらも、工事に反対するなど、共産党と同様に住民からの反対の声がある公共事業に対しては慎重な立場を採っている。

 多摩・島しょについては、多摩ならではの産業振興を図る、立川、八王子をはじめ地域の拠点づくりを支援するとしているが、具体的な政策にはあまり言及がない。

 全体としてはソフト面の政策に一応の配慮はあるものの、ハード面を否定しているわけではないという意味では自民党と共産党の間に位置づけられる政策の方向性がみられると考えられる。

 なお、公明党についてはホームページ上の公約である「チャレンジ8」(※1)の内容が比較検討をできるだけのものではないと判断し、省略した。

 以上が、私が感じた各党の政策の違いである。

政策を比較することの意義

 ともすると、選挙期間中はどの党がどれだけの議席を得るか、勝つか、負けるかといった点にのみ話題性が集中する。各党の勢いに関する情勢分析を軽視したり否定するつもりはない。ただ、それ以前の問題として政策を提言し、どう反映、活性化させるかを切磋琢磨する環境がなされなければ、有権者が望む政治はなされず、議会が形骸化し、政治が貧困化するということを忘れてはならない。

 議会の活性化には、有権者一人ひとりが政策をきちんと比較検討し、時に、政策についてあれこれ要求をする政治環境を整えていく努力が求められる。そのことが、候補者に有権者がきちんと政策を比較検討をしていると認識させ、候補者に有権者に対してより良い政策提示しようと努めるようになると考える。だから、一人ひとりが、noteをはじめ輿論を起こし、いろいろな政策について比較検討をしていくということが求められるのではないだろうか。

 都議選公示後、3回にわたって主要政党の公約を比較検討をした。急ぎ足であったために粗削りなところもあったが、それでも一都民として、また地方自治の意義を改めて認識するためにも公約の比較検討を行うべきでは、と判断してのことである。どの党も政策はたいして変わらないという俗説もあるが、比較するとオリンピックの開催の可否以外にも、ソフト面重視かハード面重視かだけでも方向性の違いがあることがわかる。

 環境問題、情報公開、人権(多様性)などについても言及をしたかったが、時間の関係でできなかった点をお許しいただきたい。また、最後にご参考までに、政治山の各党の都議選の比較を掲載したHPを掲載したい。私が挙げたものよりもコンパクトでわかりやすい意味でお勧めなので、都民の方はご参考いただければと思う。

 今日、期日前投票をして参りました。既に期日前投票をされた都民もおられるでしょうが、まだ投票をされていない都民の方は明日の投票日には是非政策を比較検討した上で、投票所に足をお運びいただければと思う次第です。

東京都議会議員選挙2021「重点政策・公約比較表」


皆が集まっているイラスト1

私、宴は終わったがは、皆様の叱咤激励なくしてコラム・エッセーはないと考えています。どうかよろしくご支援のほどお願い申し上げます。

(※1)



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