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日々の雑感⑤-ある芸能ニュースを見て感じたこと(中編)-

 不破遙香(芸名「フワちゃん」)の安井かのん(芸名「やす子」)のツイッター返信投稿についての記事を、前後編に渡って書いています。前編では、ツイッターの返信投稿の内容の是非を中心に述べてきました。中編の今回は不破の普段からの非常識な言動を、バラエティ番組で利用することの問題点に対する批判的考察を述べたいと思います。(注:前回、不破の問題行動を、発達障害と結びつける行為についての批判的考察についても今回言及すると述べましたが、都合により次回、後編に回させていただきます。よろしくお願いします。)


公衆道徳がないタレントを安易に楽しむリスク

 不破の非常識な言動を肯定できないことについて、安井への返信投稿の内容の問題性を中心に前回述べたが、問題行動を起こす人物が、奇抜さを理由に大衆ウケするとして重宝されたのは不破に限ったことではない。過去には奇抜かつ野球監督の妻ということから、野村沙知代をバラエティ番組が重宝したことがある。のみならず、野村に目を付けた政治家が野村に衆議院選挙への立候補を要請し、野村は衆議院選挙に出馬(落選)をした。

 タレント議員という知名度だけで当選した政治家を揶揄する言葉があるが、いわゆるタレント議員は、仮に一部で反発があったとしても、その反発以上に集票力があると政治の側が判断し、私たちがそれを黙認した場合には、タレント議員が続出するリスクがある。(※1)倫理観、公衆道徳がない人物を奇抜さや大衆ウケするとして、安易に使う業界も問題だが、それを楽しむファンや放置する私たち一人ひとりも問われている。奇抜だから面白いということになれば、私たちは「帰ってきたヒトラー」(※2)をも面白がることだってあり得るのである。

 であるからこそ、不破の公衆道徳がないことを口実としたSNS上で蔓延した不破へのバッシングは、倫理面、社会常識という点から問題というだけではなく、業界や関係者に誤ったメッセージを伝える可能性がある点においても問題であると言える。(※3)メディアの側は、バッシング、人格攻撃の動きがウケると誤解して、積極的にこれらの動きに加担をすることがビジネスになると誤解する危険性があるからだ。不破に対する批判は、誹謗中傷ではなく、飽くまでもその言動というファクトに基いた上で、不破の公衆道徳のなさを指摘するものであることが求められる。

不破を利用したメディア関係者の責任

 こうしてみると、芸能ニュースも安易に切って捨てられないと感じさせられる。普段から社会に対する問題意識を持ち、かつ様々な問題にアンテナを張っていくことで、様々な出来事に対し、私たち一人ひとりが考え行動することが大切と感じさせられる。

  不破が、普段の素行の問題、お笑いのセンス、レベルの点で、そもそもお笑いのプロ、テレビタレントとして妥当であったかどうかの是非をテレビ、雑誌などのメディア業界関係者が反省を含め、検証、考察するべきではないか。不破に対しては芸能人の「お友達」が批判されている傾向にあり、メディア業界関係者自体への批判はあまりなされない。しかし、不破の一連の問題に関する責任は実際に番組、広告として不破を活用してきたメディア業界関係者のほうがはるかに責任が重い。

 不破はいい大人であり、自らの責任は自らが取ることは当然だろう。しかし、その不破をここまで好き勝手にさせたのはメディア業界関係者が使い勝手がいいとして、不破の問題行動を奨励していた側面は否めない。今回の安井への返信投稿で世間の反発が、メディア業界関係者の想定よりも大きく、収集しきれないと判断してから、自らの責任を無視してすべての責任を不破-場合によっては不破の芸能人の「お友達」-に押し付ける形で切り捨てる姿勢には疑問を禁じ得ない。メディア業界関係者の都合によって持ち上げられ、切り捨てられた結果、芸を磨き、自らの言動を省みる機会を逸したまま、活動停止に追い込まれたという意味では、不破も被害者の側面はある。

 昨今テレビ離れを耳にする。SNSという新しいメディア媒体の登場がテレビ離れの原因とされているが、SNSのみに原因を求めるのではなく、テレビ業界に携わる者自体が番組内容をきちんと検証、考察し、より良い番組を作成するという意志に欠けていることがないか、今回の騒動から改めて問われている。

私、宴は終わったがは、皆様の叱咤激励なくしてコラム・エッセーはないと考えています。どうかよろしくご支援のほどお願い申し上げます。

脚注

(※1) その典型例としては、参議院議員に当選しながらも一度も登院をせず、除名された東谷義和が挙げられる。東谷についてはこちらの記事を参照のこと。

議会制民主主義が問われているー東谷義和(ガーシー)前議員の除名に思う|宴は終わったが (note.com)

 また、タレント弁護士としてバラエティ番組に出ていた後、大阪府知事、大阪市長となった橋本徹も典型例と言えよう。

(※2) ティムール・ヴェルメシュが2012年に発表したヒトラーが現代によみがえったらどうなるかを描いた小説及び2015年に映画化された作品。現代によみがえったヒトラーが大衆受けするべくコメディアンとして活動をするというパロディの要素と、大衆受けの状況を利用して再び政界に進出し、権力を手中に収めようと試みる不気味な要素を描いている。
 元々大衆受けするエンターテイナーが権力を握った例としては、ドナルド・トランプのアメリカ大統領就任がある。また、2024年8月31日現在トランプは共和党の大統領候補として再び大統領を目指している。

(※3) 不適切SNSを中心とした不破へのバッシング-不破に対する個人的な確執、または「祭り」に便乗して声を出す識者、芸能人を含む-の動きについては、芸人である村本大輔は、社会情勢の問題がそっちのけになっているとした上で、

いい歳した著名人、芸能人達が「死ねはだめだと思うよ」「許してあげようよ」って真面目に発信してて、選ぶトピックが小学校の終わりの会と一緒

村本大輔 2024年8月8日 10:01 ツイッター

と発信している。不破に対するSNS上でのバッシングが、小学校のクラス内での問題に対する苦情とそれに対する表面的な提言、「議論」が行われやすい傾向と重複する部分があることは否めない。

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