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長いオンガクの基本設計図(前編)【長い音楽(仮) 制作メモ3】

前章はこちら。

1.長さが障害にならない音楽とは

前章で、音楽が長いということに物理的な無理があるということを論じてきました。
特に現代ポップスとの相性の悪さが致命的です。サビありきの音楽をそもそも長くする必要性がないのです。

とはいえ、ここまで言い切ってしまうとさらなる疑問が思い浮かぶのです。
少数ながら、長いポップスは存在しますし、ポップスの範疇に含まれるか疑わしい曲まで含めれば、長い音楽なんかいくらでも存在するのです。
本当に長いことが障害になるだけなのであれば、今頃淘汰されていたでしょう。
長いということにメリットもあります。
これに関しては小説の長さと一緒です。長い方が情報量が多いし、大作になる傾向があるといえるでしょう。

ということはこれから私が作るのは、大作で、情報量が多くて、飽きない、そして分かりやすい音楽ということになります。無茶だ・・・

2.長くても飽きない構造を考える

前章で述べた長い音楽の課題を整理します。

①サビありきの形式に慣れていて、それ以外の要素が長いと焦点がぼやける
②途中での中断・再開が容易でない
③そもそも長いと飽きる

これらを解決する方法を考えようと思ったのですが、よくよく考えると、これらは繋がっているんですよね。
もしかしたら、中断・再開が容易なら、すべて解決するのでは…?

いったん休憩ができれば、飽きてなかなか最後まで聴けないということもないでしょうし、焦点がぼやけることも防げそうです。

ここでヒントになると思ったのがテレビアニメの構成です。
例えば1クール13話として、本編は1話につき22分とすると286分、およそ5時間です。

1話ごとに少しずつストーリーが進行していき、毎週1回、3か月ほど観続けたところでストーリーが完結するという構造になっています。
5時間ほどのアニメを中断なしで観るのは結構しんどいと思います。私は無理です。いつもちょっとずつ進めています。

各話もただ淡々とストーリーが進行しているだけでなく、1話完結型の作品でなくてもそれぞれ山場があることが多く、1話だけの視聴にも耐えうるものとなっています。好きな回だけ何度も観るという人も多いでしょう。

ということは音楽も、全編通して作ったものを、細かく分割できる構造にすれば、飽きずに最後まで楽しめるかもしれません。

ただそうなると、古来より存在する「組曲」とか、「複数楽章の楽曲」との違いを考えなくてはなりません。ただ細かく楽曲を分割するだけでは、当然複数の楽曲の集合体になってしまうわけで、そうではなく、あくまで1つの楽曲であって、ただ分割可能なだけである、という構造にする必要があります。

3.具体的な構成

楽曲の長さを最初から目標として定めるのはナンセンスですが、仮に20~30分とします。

おそらく1曲として通して聴くのに大きな障害がない長さを5分と見積もります。

すると、1曲を4~6のパーツに分割可能にする構造ということになります。

中断をどのように実現させるかというのは作曲の技術による部分が大きいと思いますが、それは後々検討するとして、気をつけなければならないのは、中断を前提とすることで以下のようになる可能性があることです。

中断可能な切れ目を作るということは、そこが曲と曲の間であると誤認してしまうリスクを抱えることになります。
ということはこの「切れ目」は、曲の結末部と誤認しないような作りにする必要もありそうです。
アニメで言うところの、ピンチを迎えたところで「次回へ続く」みたいな感じでしょうか?でもそれを音でどうやって実現させるのか考えなくてはなりません。

そして、それだけでは「曲の中心部が把握できない」という問題点の解決にはなりません。
この中にサビを組み込むことは当然可能なのですが、それでは一瞬のサビと大量の蛇足ということにになってしまいかねません。

サビというものの重要性は、曲の中心部分が明確であるということなのであれば、全体がどんなに長くともリフレイン形式の良さをつぶさないようにする必要があります。

そもそも、ただ長い曲を作るだけなら、サビのない構成にした方が簡単だったりします。A→B→Aの三部形式なんか、単純そうに見えて長くする余地がいくらでもあるように思えます。歌モノには一般的に不向きと思われがちですが、ソナタ形式でも使えば曲は自然と長くなります。
それでも、今回はリフレイン形式をベースに制作するという方向性に今のところは迷いはありません。
何度も書いている通り、長い曲を作ることだけが目的ではないのです。
自分の中にある固定観念を打ち破れる音楽ではなければ意味がないのです。

曲の中心部が明確で、なおかつ全体が1曲に聞こえるとなると、例えばこういう方法があるように思えました。

A→B→C→D→Eのように同じメロディーを繰り返さずどんどん展開していくのも面白いとは思うのですが、やはり一貫性、統一性を考えると、このように繰り返す構造にすることを考えるとうまくいきそうです。
さらに、Bの部分をサビと考えれば、サビを数回繰り返す、典型的なリフレイン形式の形に近づいていきます。
もちろん5分にわたるサビというのは、それはそれで中心部を見失いかねないので、更にミクロな内部構造について検討する必要が出てきそうです。

基本的な方向性は何となく見えてきた気がします。
次回は、内部の構造に関する検討を進めていきたいと思います。

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