ハンバーグ&から揚げ弁当みたいな映画(中島哲也「来る」)
中島哲也監督の「来る」を見た。
ホラーと異能バトルが前半後半でドッキングされていて、それぞれ役者の演技が立っていて面白かった。それでいてワクワクが最後まで途切れないのが嬉しい、ハンバーグ&から揚げ弁当みたいなボリューム感たっぷりの映画だった。
あとは場面が切り替わるときの音楽の使い方がうまいんだよな。木村カエラの「Butterfly」を流すタイミングとか悪意100%じゃないですか。法事→結婚式っていうこの薄っぺらな行事笑えるでしょ? という悪意を隠さない演出で、こちらも安心して秀樹にヘイトを向けられる。
ライターの野崎がアメ車で登場するときに毎回ロックンロールがかかるのも「HiGH&LOW」の日向君かよと思って笑ってしまう。音楽のおかげで、ここでホラーから一気に撮り方変わった! というのが観客にも伝わってくる。
公開当時は柴田理恵の怪演が話題になっていたけど、知名度ある役者を集めているだけあってみんな演技がすごいよ。盛り塩踏みつけてニカッと笑う黒木華が一番怖い。
登場人物の中では、民俗学准教授の津田が秀樹に抱く感情だけ異質な愛で哀しかった。「お前もからっぽなあいつのこと指さして笑ってたんやろ!」って、スクリーンのこちら側にえらい問いかけてきますやん。でも彼は秀樹が死んだ後まで秀樹のものを奪い続ける愛の戦士と思うとかっこいい。
結局“あれ”を呼び込んでいたのは誰なのか、ラストは決着がついているのか、釈然としなかったけど、終盤の怒濤の勢いに押し切られてまあこれでいっか、と思ってしまった。
序盤~中盤にかけて丁寧にリアリティある“嫌さ”が積み重ねられていたから、終盤のはちゃめちゃな展開にもかかわらず破綻がそこまで気にならなかったんだと思う。「親戚のおばあちゃんが作った見るからに不味い漬物を断れない」世界の実在に対する信頼がある。
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