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春雨の名残 【超短編】

 でき得ることなら春雨の名残の水溜りの泥のようにただ乾かされて土埃に変じてみたい......今の彼にとってはこのような幻想の実現ほどに切望される恩寵はないのであった。彼は聖堂前の広場の朝日の当たるベンチで頭を垂れて身勝手な恩寵を泥のように待ち続けた。

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