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言わない日課 【超短編】

 彼には他人に言わない日課があった。しがない勤めから重い脚を引き摺るように帰宅するとアパートの郵便受けの前で祈るように目をつぶってからその蓋を開ける儀式。
「必ずクリスマスカードを贈るから待っててね」
 三年前そう言い残して消息を絶った彼女の言葉を彼は今も信じたかった。

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