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【イギリスの音楽事情】最近はどんな曲が演奏されてるの?

この記事が初投稿です☺。

このnoteについて

このアカウント「うたえ場♪英国」の中にいる人は、1人は高校の音楽科教員(テノール)、1人が大学で音楽を教えている人(ピアノ)です。

この2人は、よく一緒に演奏もしている仲で、好きな曲をよく歌われているように、もしくは先生に習った通りに歌うというよりは、詩や楽譜に書かれた音と向きあい、資料を読み漁り、今回はどういう表現が良いだろうか、と試行錯誤のなかで演奏をつくりあげるようなスタイルでいつも演奏しています。

そんな感じで演奏活動をしているのですが、近年イギリスの音楽に2人そろって関心を寄せ始めました。というのも、素敵な曲があるというのはもちろんのこと、加えてイギリスの歌曲って日本ではあんまり演奏(紹介)されていないこと、それに日本語で読める資料はそんなに無い、ということに気づきました。

いいな~と思う曲も、私たちのような演奏スタイルだと、その曲のもつ背景や作曲意図などを理解するために努めたい一方で、イタリア歌曲やドイツリートと同じようにはいかない…。先日はG. Finzi(1901-1956)の作品に取り組みましたが、もちろんFinziのことだけでなく、取り上げた作品の詩を書いたT. Hardy(1840-1928)についても勉強を進めていくと、(当たり前なのですが)イギリスの音楽事情を知らなければいけない…、これは(勉強せずに)イタリア歌曲やドイツリートと似通った演奏法とはじめから決めつけて取り組んでしまうのは危険だ…と思い至りました。


そんなわけで、イギリスの歌曲を歌えるようになりたい!というシンプルな目的のために、まずはイギリスの音楽事情を知ろう!という感じで、始めたのが「うたえ場♪英国」です。

どちらかというと、読んでくださる方のためにネタをつくるというよりは、自分たちが知りたいこと、考えたことのメモという位置づけで、更新していきたいと思います。そのため、不定期、内容も当たり前のことだったり意味不明なこともあるかもしれませんが、もしご覧いただき考えていただいたことがあれば、コメント欄でメッセージいただけるととてもうれしいです☺。


Wigmore Hallでの歌曲演奏会の近況

イギリスの音楽史や歌曲に関する資料をまずは集めんかーい、というお声もあるでしょうが、そもそも、最近のイギリスでは、どんな歌曲が演奏されているのか、イギリスの作曲家による作品ってどれくらい演奏されているんだろうということが気になったので、歌曲の演奏会が数多く開催されている(であろう)かつプロフェッショナルな演奏家が使用するホールであるWigmore Hallに焦点を当てることで、最近のイギリスの演奏会の傾向をほんの少し眺めてみようと思いました。今回は、2022年1月~6月までの公演スケジュールのうち、歌曲の演奏会(歌い手+ピアニスト)に焦点を絞ってみてみました。
※実施日は2022年3月6日

参考:Wigmore Hall


結論から申し上げると、2022年1月~6月までの公演スケジュールのうち、

 ①歌曲の演奏会は63回開催されること
 ②そのうち、各演奏会で取り上げられている作品の作曲家の総数は125人
 ③作曲家を出身国別にみると19カ国(+不明)
 ④イギリス出身の作曲家は23人

となりました。
上記②~④については、せっかくなので本記事末の参考に示してみました。


整理した情報をもとに考えていたこと…

・日本で取り上げられやすい作曲家や、声楽を学習するうえで触れる作曲家 とは違うラインナップな気がする。例えばアイスランドの作品ってどんな曲なんだろう…。
・ドイツとオーストリアは日本とも共通するレパートリーが見られるけど、イタリアは少し違う気がする。あと、イタリアでトスティ、チマーラ、ベッリーニ、ドニゼッティ、レスピーギ、ピッツェッティ等が登場していないのも意外(今回の限定の仕方によってたまたま引っ掛かってこなかっただけかもしれないけど)。
・日本でレパートリー化されたり、勉強される作曲家って、初修教材で触れたことのある作曲家を中心に展開されているという可能性。特にイタリア。
・イタリア、フランス、ドイツの作曲家の数が多いのは予測しやすい。イギリス自国の作曲家も多く、アメリカの作曲家も多いけど、これは英語という共通点かな。
・イギリスに注目すると、パーセル以降、エルガーまで150年の間に活躍した作曲家は取り上げられていない。この150年間ってなにがあったんだろう。ちなみに、Wikipedia「イギリスの音楽」の項を参考にしても、バロック時代の次に紹介されるのはサリヴァン(1842-1900)になっている。
・イギリスの作曲家のラインナップを見ると、"serious music"が中心なのか?という気づき。"light music"というような、イギリスを中心として発展した音楽は出てこないのか。だけどこれはWigmore Hallという、ホールやそこで演奏する演奏家の特徴とも関連するかもしれない。(例えばトスティが登場しなかったことも、なんだかここと関連する可能性もあるけど…)

参考

アイスランド
Sigvaldi Kaldalóns (1881-1946) 
Jón Þorarinsson (1917-2012) 
Valgeir Sigurðsson (b.1971) 
アメリカ
Amy Beach (1867-1944) 
Charles Edward Ives (1874-1954)
Charles Tomlinson Griffes (1884-1920) 
George Gershwin (1898-1937) 
Aaron Copland (1900-1990) 
Richard Rodgers (1902-1979) 
Samuel Barber (1910-1981) 
Margaret Bonds (1913-1972) 
Ned Rorem (b.1923) 
Hale Smith (1925-2009) 
Owens (1925-2017)
Stephen Sondheim (1930-2021) 
Libby Larsen (b.1950) 
Juliana Hall (b.1958) 
Rufus Wainwright (b.1973) 
アルゼンチン
Alberto Ginastera (1916-1983) 
イギリス
John Dowland (1563-1626) 
John Danyel (c.1564-1626) 
Henry Purcell (1659-1695) 
Edward Elgar (1857-1934) 
Frederick Delius (1862-1934) 
Frederick Keel (1871-1954) 
Ralph Vaughan Williams (1872-1958) 
Roger Quilter (1877-1953) 
John Ireland (1879-1962) 
Rebecca Clarke (1886-1979) 
Peter Warlock (1894-1930) 
Michael Head (1900-1976) 
Gerald Finzi (1901-1956) 
Meirion Williams (1901-1976) 
Lennox Berkeley (1903-1989) 
Benjamin Britten (1913-1976) 
Alec Roth (b.1948) 
Judith Weir (b.1954) 
Andrew Brixey-Williams (b.1956)
Joshua Borin (b.1989) 
Kate Whitley (b.1990) 
Nathan James Dearden (b.1992)
Stephen Bick (b.1993)
イタリア
Antonio Salieri (1750-1825) 
Muzio Clementi (1752-1832) 
Luigi Cherubini (1760-1842) 
Girolamo Crescentini (1762-1846) 
Ferdinando Paer (1771-1839) 
Gaspare Spontini (1774-1851) 
Gioachino Rossini (1792-1868) 
Giuseppe Verdi (1813-1901)
Amilcare Ponchielli (1834-1886) 
Giacomo Puccini (1858-1924) 
ウクライナ
Mykola Vytaliyovych Lysenko (1842-1912) 
Yaroslav Lopatynsky (1871-1936) 
Kirill Grigoryevich Stetsenko (1882-1922) 
Ostap Bobykevych (1889-1970)
Mykola Fomenko(1894-1961)
オーストラリア
Percy Grainger (1882-1961) 
オーストリア
Johann Joseph Fux (1660-1741) 
Joseph Haydn (1732-1809) 
Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791) 
Franz Schubert (1797-1828) 
Gustav Mahler (1860-1911) 
Alexander Zemlinsky (1871-1942) 
Arnold Schoenberg (1874-1951) 
Franz Schreker (1878-1934) 
Johanna Müller-Hermann (1878-1941)
Alma Mahler (1879-1964) 
Alban Berg (1885-1935) 
Erich Wolfgang Korngold (1897-1957) 
Imogen Holst (1907-1984) 
Olga Neuwirth (b.1968)
スイス
Othmar Schoeck (1886-1957) 
スペイン
Isabella Colbran (1785-1845) 
Manuel de Falla (1876-1946)
Joaquin Turina (1882-1949) 
Xavier Montsalvatge (1912-2002) 
チェコ
Jan Ladislav Dussek 
Viktor Ullmann (1898-1944) 
ドイツ
George Frideric Handel (1685-1759) 
Carl Friedrich Zelter (1758-1832) 
Ludwig van Beethoven (1770-1827) 
Carl Maria von Weber (1786-1826) 
Felix Mendelssohn (1809-1847) 
Robert Schumann (1810-1856) 
Richard Wagner (1813-1883) 
Clara Schumann (1819-1896) 
Johannes Brahms (1833-1897) 
Richard Strauss (1864-1949) 
Hanns Eisler (1898-1962) 
Kurt Weill (1900-1950) 
ノルウェー
Edvard Grieg (1843-1907) 
ハンガリー
Béla Bartók (1881-1945) 
Joseph Kosma (1905-1969) 
フィンランド
Jean Sibelius (1865-1957) 
フランス
Charles Gounod (1818-1893) 
Pauline Viardot (1821-1910) 
Gabriel Fauré (1845-1924) 
Henri Duparc (1848-1933)
Ernest Chausson (1855-1899) 
Claude Debussy (1862-1918) 
Joseph Guy Ropartz (1864-1955) 
Reynaldo Hahn (1874-1947) 
Maurice Ravel (1875-1937)
Joseph Canteloube (1879-1957) 
Nadia Boulanger (1887-1979) 
Jacques Ibert (1890-1962) 
Lili Boulanger (1893-1918) 
Francis Poulenc (1899-1963) 
Henri Sauguet (1901-1989) 
Maurice Thiriet (1906-1972) 
Barbara (1930-1997) 
ポーランド
Maria Szymanowska (1789-1831) 
Moniuszko (1819-1872) 
Karłowicz (1876-1909) 
Henryk Czyz (1923-2003) 
ルーマニア
Tiberiu Brediceanu (1877-1968)
Emil Montia (1882-1965) 
ロシア
Mily Alexeyevich Balakirev (1837-1910)
Modest Musorgsky (1839-1881) 
Pyotr Ilyich Tchaikovsky (1840-1893)
Sergey Rachmaninov (1873-1943) 
Mykhaylo Zherbin (1911-2004)
不明

George Hall (b.1953)
Long Wang

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