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MAミキサーという職業を選んだワケ

"このEQはバイパスでインサートするだけで音の抜けが良くなるんだよ"

 この一言で2002年の夏、僕は
レコーディングエンジニアになるのをヤメた。

この先生が何を言ってるのか全くわからない。
もちろん半年間、音響の専門学校でそれなりに勉強してきたから単語の意味は理解できる。だからこそこの発言の理解できないのだ。


※バイパスとは機材の効果を機能してない状態にすること

 この先生と、賛同している周りの同級生たちにしか聴こえてない世界がホントにあるとしたら、その世界では僕は生きていけないかもなと、ポキっと何かが折れる、乾いた音が鳴った。人生2度目の挫折。

 1度目の挫折は、大学に落ちたとき。

 高校の時にバンドをかじっていて、音楽の楽しさを知った。
音楽に携われる道に進みたいなぁとボヤっと思いながら、大学進学を目指した。両親の影響で大学に進学することが刷り込まれていたから、大学に行くことはごく自然な選択だった。

滑り止めの大学には引っかかったものの、第一希望の大学に落ちて
浪人でもしよかなーと思ってたら、両親が離婚した。
記憶が飛んでるからあんまりうろ覚えだけど、
「学費は出すけど、浪人の費用は出せない」みたいな事を言われて、
そんなこんなで音響系の専門学校に進学することになった。

 2度目の挫折の後、学校が後期に差し掛かると、
クラスを3つに分ける選択授業になる。


レコーディングコース、ラジオミキサーコース、そしてMAコース。
映像あった方が楽しそうだなぁと、それだけの理由で、
MAが何の略語かもわからないままMAコースを選んだ。

 MAの授業は、有名アニメに6mmという業務用のカセットテープみたいなデカい機材から再生される音を、シブサンというこれまた馬鹿でかい
カセットテープの親分みたいな機材に効果音を録音したり、
学生たちでアフレコをやってみたり、
件の、"自分の目に見えないものを信じる"という授業の時と違って、
"見えているもので良し悪しが決まる事"が多いということが、
これなら才能が無い(と決めつけていた)自分にも出来そうだなと、
レコーディングの時よりも少しだけ、未来の自分が見え出した。

2年制のこの学校では、2年次に上がる少し前くらいの3月から
嫌でも"就職"の2文字が学校中に響き渡ってくる。
学校に提示されている企業の一覧を見ても、

この会社がどんな会社なのか、どんな設備や環境なのか全くわからない。
冷たいフォーマットの一枚の紙から僕が得られる情報は、

"福利厚生""資本金"”従業員の数”そして"初任給"と"ボーナスの有無"

メディアを通して日本を明るくしたい!

そんな社風を言われても、まず俺の未来を明るくしてくれ。
似たような企業理念の冊子を何枚か眺めながら、
初任給で選ぶしかないなぁと思った。

でも履歴書書く時どうしよ、、

「初任給が他の会社よりぶっちぎりだから御社に決めました(ハート)」って書くわけにもいかないし。

「御社が携わっている番組が好きで入社希望します」

せや!これや!シンプルに好き好き言ってくれるやつの方が入ってきて欲しいやろ。先に理由決めて、後からそれを現実にする戦法で履歴書を書いたろ。(神奈川県横浜市生まれ、横浜育ち)

とりあえず一番好きな番組をやっている会社を調べよう。

フジテレビで毎週土曜日に放送しているめちゃイケという番組が、
深夜時代の"とぶくすり"という番組名の時から大好きだったので、
その番組を、部屋にあるテレビデオで録画をして、エンドロールを見て
それっぽい会社の名前を検索をした。
衣装の会社、番組制作の会社、また衣装の会社を繰り返して
やっと見つけた文字、

「IMAGICA」

ここだ。ここでめちゃイケはMAをしているんだ。

履歴書にそれっぽい事を書き連ねてさらっと通過した2003年の6月。
その後のSPI試験は難なく合格、これは大学受験でマジメに予備校に通ってたお釣りで通過したんだと思う。人生やってて無駄なことなんてないなと思った。

次は集団面接。僕の隣の学生は、東京の誰もが知る有名大学をまもなく卒業する映画好きの男性、その隣も、一番端の女性も4年制の大学を卒業予定の学生だった。

"こりゃ記念受験だな"

学歴コンプレックスの僕は、戦いの前に敗戦濃厚な気持ちで溢れていた。
(正確には"受験"じゃないけど。)

結論から言うと、その面接をパスして、あれよあれよとわからぬまま、
7月末には『内定』の二文字が書かれた封筒が僕の元に届いた。

面接前にメンタルブレイクした僕は、まぁ落ちてもいいやと、面接官たちの質問に強気に出たのが結果的に良かったと、数年後、上司に聞いた。

中でも一番インパクトがあったという僕の回答は、
『総合職は、内定後に編集やMAに振り分けられる訳だけど、もし編集に配属されたらあなたはどうしますか?』という面接官の質問に、

『編集でも100%力を発揮できる自信があります。しかし、MAでなら120%の力を出だせる可能性が僕にはあるので、編集に配属なら御社へは行きません。』

面白そうなやつだなと思ってくれたのか、運よく希望通りのMAに配属され、さらに運良く、めちゃイケが行われるエリアにも配置された。
(後からたくさんの支部があることを知った。あぶねぇ。)

好きな事を仕事にするという事を早々に諦めて、
"得意な事を仕事にする"を選んだ僕の人生は、
これからどうなっていくのか。

3度目の挫折があったのか無かったのか。
パート2-業界最大手の会社員がフリーランスを選んだワケ編に続く。

※MAミキサーとは、番組で収録された音声(ピンマイクやガンマイクで録ったセリフなど)や、ナレーション、BGM、SEの音量バランスを整えるお仕事です🙆

最後まで読んでいたきありがとうございました。

MAミキサー 阿部 雄太

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