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三分の一も伝わらない

私はおしゃべりだ。
たぶん、家族の間ではそういう認識だろうし、私も「私ってよくしゃべるなー」と思いながらここまで生きてきた。
おしゃべりの印だよ、と言われる唇の上のホクロもある。しかも二個も。
だけど、私と会ったことがある人は、必ずこう思うはずだ。
「汐月さんって大人しい人だよなぁ」
なぜなのか。
答えは簡単、私が極度の人見知りだからだ。
人見知りにも種類があって、そもそも集まりに出ない(人と接したくない)タイプの人見知りと、集まりには出るが人と話すのが苦手(人と接したい)なタイプの人見知りがあると思う。
私は後者だ。

自分で言うのもなんだが、私はパッと見は人当たりが良さそうな雰囲気を醸し出していると思う。
人の目を見ることを意識しているし、笑顔でいることも意識している。それに、話す時も一人の人だけを見るんじゃなくて、その場にいる人たち満遍なく見て話すようにしている。
それなのに……それなのに……、
会話が絶望的に盛り上がらない。
自分で言っていて悲しくなってきた。
わかっている。わかっているのだ。会話というものは、テンポが大事だということくらい。わかっているのに、上手くできない。

例えば、誰かが私に質問をしたとしよう。
私は咄嗟に「どう答えればいいかな」もっと言うと、「どう答えるのが正解なのか」と考えてしまう。
私の言葉で誰かが嫌な気持ちになってほしくないのだ。「こう言ったらこう思う人がいるんじゃないか」「この言い方は上から目線っぽいかもしれないなぁ」
なんて、いろんな考えを巡らせているうちに、時間は過ぎ去っていく。
すると今度は、「こんなに時間をかけるのは変だよな」という考えに変化して、結局慌てて無難な返事をするのだ。
いや、返事ができたらまだいい方で、「あはは~そうですか~」と笑って誤魔化すこともしばしば。
こうなってくると、当然ここで会話が終了することになり、盛り上がるはずもない

問題は、考えすぎることだけではない。
話すことが超絶下手なのだ。
話すのが下手なおしゃべりという、聞き手にとって不快極まりない人間であることについては、反省はしている。

そもそも私は、英語の構文のように話す癖がある。

「私、〇〇に行ったんだよね」

言いたいことが先に出てきてしまう。
そのあとで、「あ、〇〇には△△を食べたいから言ったんだけどね」「□□に誘われてさぁ」と必要な情報を付け足していく。
これはすごくわかりにくい。話の内容がいったりきたりするのだから。
別に私が帰国子女だとか実は日本人じゃないとか、そういう理由は特にない
本当に単純に日本語が下手なだけだ。
考えるより先に口が動いてしまうからこうなっているのだと思う。

親しい人にはこれでいいかもしれないけれど、初対面の人に対してこの話し方はどうだろう。
何言ってんだこいつ……と思われること必至だ。
なので初対面の人と話す時は、一回自分の中で話すことを考えて、それを組み立て直して話すようにしている。
言っている意味がわからないかもしれないが、本当にこの通りなのだ。
その結果、話すのにめちゃくちゃ時間がかかる

考えすぎる上に、話すのに時間がかかる。
この二つの要素が重なることによってどうなるのかというと、それはつまり「大人しい汐月」の爆誕である。

本当はもっと楽しくしゃべりたい。
本当はもっとたくさんしゃべりたい。

しかし現実とはままならないもの。
私が話したあと、なぜか止まる会話。微妙~な表情になるみんな。変な空気。ああ、今日もまた……。

「きっとあの人には、私の本当に伝えたいことの三分の一も伝わってないんだろうなー」

そんなことを考えながら、私は帰路に着く。
せめて、これから会う人には「汐月さんってこういう人だもんね」と思って温かい目で見守ってほしいものだ。
(伝える努力もしようね)

















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