論述の表現について(東大日本史の理論:補論)

はじめに

共通テストお疲れ様でした。今は二次試験に向けての勉強に余念のないことと思います。

さて、今回は論述の表現で気を付けるべきポイントについて紹介します。先日の「東大日本史の理論Ⅱ」において下のように書きました。タイトルにもあるように、これは「補論」となります。

いざ論述となるとめちゃくちゃな日本語になりがちかもしれませんが、めちゃくちゃな日本語=論理的思考力の欠如、と判断されかねません。自分は、
①一文の中で因果関係を表す接続詞(「ゆえに」「ため」)を多用しない。複数使う場合は文を分ける、
②「また」は論理的説明の放棄ととられかねないので極力使わない。
などのマイルールをだんだん決めていきました。最初うまく書けないのは当然ですから、段々自分なりの答案の書き方を見つけていきましょう。

現在大学の方は、期末レポート課題の真っ只中で、レポートを書く中で思い出すことがいくつかあったため、記事にして発信しようというわけです。

1.言葉の重なりに気を付ける

上の引用部①を、広くしたものです。なんとなく日本語を書いていると、接続詞、助詞などが重複しがちです。特に「の」という助詞は、気を抜くとすぐに重複します。

例えば、
当時の将軍の徳川家光の指示によるものである
という文章を書いたとしましょう。大学の先生は学部生のレポートを何千枚何万枚と見てきているでしょうから多少の表現の不自然さは不問でしょうが、可能であれば直してきたいとことです。
当時の将軍、徳川家光が指示したものである
とすればスムーズに読めますね。

もちろん接続詞の重複も要注意です。特に、資料文を読む中で突然の気づきがあった場合、急いで書くので順説では「ため」とか「ので」、逆説では「が」を連続して使いがちです。
600年の遣隋使で後進性を指摘されたため、文明国となるため憲法十七条や冠位十二階の制を整えた
という文章があったとしましょう。二つの「ため」は用法が違いますが。どこかひっかかります。
600年の遣隋使で後進性を指摘されたことで、文明国となるため憲法十七条や冠位十二階の制を整えた
とすればよいでしょう。

◯因果関係を表す接続詞一覧
順説:ため、ので、ことで、ゆえ
逆説:が、しかし

2.因果関係を使うときは慎重に

さきほど接続詞について述べましたが、そもそも因果関係を論述答案に盛り込む際には慎重になってください。他の接続詞と同じ感覚で安易に因果関係を扱い、因果関係がない場面で「ため」とか「ので」だの「ことで」を使うと、その分野の専門家である先生にとってはかなり印象が悪くなるでしょうし、使いどころによっては「資料文を読んでいない」というイメージを与えかねません。現代文の林先生は「論理の捏造」という言葉を使います。

「また」は論理的説明の放棄となるので極力使わない、と書きましたが、論理を捏造するくらいなら「また」やそれに準ずる助詞を使ったほうが幾分ましかとおもいます。

とにかく、答案を作るときは、因果関係の助詞の前後に「原因ー結果」とか「事実ー歴史的意義」の関係が①資料文の記述と、②自分の知識と照らし合わせて成立しているかをよく確認しましょう。

3.一文が長くならないよう気をつける

今までいろいろと接続詞について述べてきましたが、たとえ因果関係の検証を慎重に行い、言葉の重複がないよう気をつけたとしても、一文が長ければ読みにくいことこの上なく、そうした努力がパアです。

問題にもよりますが、4行(120字)以上の問題は2文以上に分けたほうがいいと思います。

文の分け方としては
①二面性、変化、差異を指摘するとき(A↔︎B)「日本の律令制はA。一方で/しかしB。」
②因果関係を指摘するとき(A→B)「A。そのため/そこで/こうしてB。」
③因果関係を指摘するとき②(B→A)「A。それはBのためである。」
④時期区分するとき「中世前期はA。(一方で)中世後期はB。」
⑤追加するとき「A。さらにB。」

とりあえず思いつくのはこれくらいです。これらを組み合わせて使うなどして3文以上になる場合もあります。ダラダラと接続詞でつなぐより、きっぱり文を分けたほうが綺麗な論述答案になる場合が多いですから、少し気をつけてみてください。

きれいな文章の切り方は、たくさんの模範解答に触れるのが最も手っ取り早いでしょう。もう解かない予定の過去問の解答があったら、もう一度見直して文章構成を学んでみましょう。

4.「また」はなるべく使わない

前にも述べた通りです。「論述」は「論理的に述べる」行為ですし、200字以内で収まるのですから、「また」を使うと、「それどこから持ってきた?」という印象を与えかねません。

本番で論理関係を捏造するよりはマシかとは思いますが、練習段階では「また」を使わずに文章を構成してみるとともに、「また」を使いそうになった場所は自分の弱点ですから重点的に見直しをしましょう。

おわりに

もう、自分の文章の癖や、表現しにくい箇所はわかっていると思います。その時に、多くの解答例に触れ、技術を「盗む」ことが大切です。参考になったのであれば幸いです。

また、学研プライムゼミの野島先生が下のような記事を公開されていますから、こちらも併せてご覧ください。自分も先生と同じ考えです。


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