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【参考書レビュー】日本史の論点

基本情報

書名:日本史の論点 論述力を鍛えるトピック60
著者:塚原哲也・鈴木和裕・高橋哲 共著
出版社:駿台文庫

ジャンル:参考書
ねらい:基礎知識習得・論述問題への橋渡し
対象:論述問題が課される大学志望の受験生
前提レベル:センター8割以上安定くらいの基礎知識

強み

 この参考書の強みの一つは、教科書ではバラバラに記述されていることがつながっていることです。
 山川の『詳説日本史』では、(仕方ないことではありますが)奈良時代(外交→社会→政治→土地→文化)⇨平安時代前期(政治→土地→文化)⇨平安時代中後期(政治→外交→文化→土地→社会)というような構成になっているため、教科書のみで学習をしている受験生は、あるテーマの数百年単位の変遷を問われると脆いものです。また、同時代の異分野間の関連についても意外とわかっていません。そのような視点を補完してくれるのがこの参考書であるといえます。
 もう一つの強みとして、「論述問題で求められるトピック」が厳選されて載っていることが挙げられます。
 入試問題には、「頻出テーマ」が多く存在します。そこに対応できる力をつけてくれるのがこの本です。例えば2019年東大の第二問のテーマ、「承久の乱以降の朝幕関係」はすでにこの本で扱われています。様々な大学の対策として活用できるでしょう。
 また、「論点に即して120字程度/90字程度で要約せよ」という課題もすべての論点に付されており、自分で考えながら書くことで単に読む以上に効果を得ることができます。論述の練習にもなるでしょう。この本の考え方をストックしておくことで、東大の問題にもアプローチしやすくなります。
 先生のサイト「つかはらの日本史工房」では、本書準拠の「短文論述問題のリスト」というページが追加されました。これをやることで各論点の理解が盤石になり、この本を真に修めたといえると思います。ここまでやれば、ほとんどの大学の過去問演習に心置きなく入れるでしょう。

注意点

 ただし、決してストックだけで東大の問題を解けるわけではないことには留意してください。解答の軸を形成する助けとしてはこの本は非常に効果的ですが、最後は自分で思考し、手を動かすことが大切です。この本が終わるまで過去問に入らない、ということをやっていると過去問への慣れが不十分になる恐れがあり、本末転倒です。

使い方(あくまで一例)

 まずは、本の冒頭にある「本書を使って何ができるか」というコーナーをよく読んでください。単なる使い方にとどまらず、日本史論述の学習全体の指針が示されています。

◯時間がある場合
高2のうちに通史が終わってしまったなど、過去問始めるまでに数ヶ月の余裕がある場合には、この本を使い倒してください。
①論点で提示される問いに対して、本文を見ずに自分で考え、書いてみる
②本文を読む。この時必要に応じて教科書や資料集・授業ノートも参照して自分の知識の体系化を図る。
③120字・90字要約を行う。
④「短文論述問題のリスト」掲載の問題を解く。

◯読む時間くらいはある場合
高3の夏頃から使い始める場合、あまり時間はかけられないので、上から①と③の一部を削らなくてはならないと思います。少しくらい手を動かしてはほしいですが、過去問に入る時期との兼ね合いも考えながら使うといいでしょう。(もちろん過去問演習と並行して使ってもいいと思います。)

◯時間がない場合
過去問演習を始める高3秋頃から使い始める場合、網羅的に一から読むのは、ほとんどの受験生にとっては大変だと思います(英数がある中、日本史の過去問演習に時間を割くこと自体大変なので)。演習の後、問題で触れたテーマやそれに隣接するテーマの論点を読んで少しづつ理解を深めていくしかないでしょう。
また過去問を解く際に参照するのはさらに効果的です。直前期はともかく、解答プロセスを身につける段階では、何も見ずに「何となく」答えてしまっては演習しているようでしていません。何かを参照してもいいので、「どの知識を使えばいいのか」「要求は何なのか」熟考しましょう。(「過去問を解く際に」の部分は塚原先生ご本人からアドバイスをいただきました。ありがとうございます!)

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