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石田裕己の妹・系譜ペンギンによる「てなかま THE LIVE」評

2023年8月19、20日に、初台にあるアートサロン えん川で行ったパフォーマンス「てなかま THE LIVE」について、僕の妹である系譜ペンギンさんにご執筆いただいた批評を公開いたします!!(本名での公開も提案したのですが、ペンネームがいい、とのことでした)
一回に鑑賞できる人数がとても少ないパフォーマンスだったこともあり、実際にご覧になった方は少なく、ぜひこちらの文章をお読みいただいて全容を想像いただければ、と思います…!

パフォーマンスを実施するに至った経緯は、姉の全肯定ペンギンさんによる批評「石田裕己 この人を見よ」に書かれています!!まだ読まれていない方はこちらも合わせてお読みいただき、想像の助けとしていただければ。

「てなかま THE LIVE」
企画者:ペンギンプラネット
制作者1:全肯定ペンギン
制作者2:石田裕己
出演者:石田たち
スペシャルサンクス:小倉久典

会場:アートサロン えん川(〒151-0061 東京都渋谷区初台1-37-7、京王新線初台駅南口より徒歩2分)
日時:2023年8月19日、20日(各日14時・18時から開始、各回45分から1時間程度を予定、計4回)
料金:500円

本文


 私は今回のパフォーマンスを見て、今まで持っていた芸術のイメージががらりと変わった。今までは芸術と聞いて、美術館に展示されている絵画や彫刻、動きのあるものでいうと映画などの映像作品が想像された。しかし、このパフォーマンスでは、演劇と似ているが、また違った新たなジャンルの芸術に触れることができたと思う。製作者である石田裕己(姉の全肯定ペンギンなる人も参加しているらしいが、私たち兄妹に姉はいない)が自分の身を捧げて行うパフォーマンスがそこにはあったと思う。その場で出せる全てを使って表現し、精一杯のパフォーマンスを完成させるという思いがさまざまな場面において伝わってきて、面白いと感じた。また、このような”新しい芸術のあり方”を知った。
 まずはじめに、全体を通して裸足で行うパフォーマンス体制に驚いた。会場の床には絨毯などはひいていなく、コンクリート状の床であった。そのため、裸足での登場とその場の独特な雰囲気で私が今まで触れてきたパフォーマンスとは何か違うものを序盤から感じていた。さらに特に印象に残っているのは、表現者である石田裕己がその場でハンバーガーを食べさせられ、食の快楽を朗読する場面である。私はこの場面で苦しみながらハンバーガーを頬張る姿と朗読される文章が矛盾しているような不思議な感覚になったが、その矛盾した感覚こそが表現者が求めていたものなのではないかと考えた。苦しみと快楽は一見真逆の感覚のように思っていたが、このシーンを見ていると考えれば考えるほど紙一重なもののように思わされた。石田裕己がアシスタントによって拘束されるというシーンも自らの身を削ってパフォーマンスをしているという面と観客が参加型の場面だったという異様な空気感が印象に残っている。衝撃を受けたシーンほど印象に残りやすいということを体感した。
 今回のパフォーマンスは石田裕己の幼少期からの趣味から大きくインスピレーションを受けていたのではないかと感じた。ヒーローショーや戦隊もののアニメを見ることが彼の幼少期からの趣味であった。この作品はヒーローショー的要素が多かったと思う。作品全体のストーリーをたどっても“主人公が助けを得ながら苦難を乗り越えて敵を倒す”というヒーローショーの筋書きと似通ったものがあった。このようなヒーローショー的なストーリー性を持つ作品づくりは彼の目指していたものの一つなのかもしれないと感じた。さらに、場面の切り替えの時に使われた“ぬいぐるみ”を使った表現にも石田裕己という人間の特性が現れていたと思う。小さな頃からぬいぐるみや置物に興味を示すことが多かった。ぬいぐるみに命を吹き込むように言葉を話したりすることで感情表現し、利用していたことが彼らしい表現方法だと思った。
 また、今回のパフォーマンスでは会場の狭さによって表現者と観客の距離を縮めることでより表現力が高いものを提供することに至ったのではないか。実際にその場へ足を運んで分かったことだが、会場はとても狭く、6人ほどの観客を入れるのが精一杯という広さであった。そのため、表現者と観客の物理的な距離はとても近かった。しかし、このことが作品に迫力を与える一種のスパイスとなり、見入ってしまう場面もあったため、このパフォーマンスに面白みを与える要素の一つになっていたと思う。さらに、このように会場が狭いということは表現者からも観客の反応がとてもわかりやすいということだ。表現者は観客からのその時々の反応を良くも悪くもダイレクトに受けながらパフォーマンスをしていたのではないか。実際に観客にレスポンスを求める場面も数箇所あり、そういった場面では観客の空気感や感情がとてもわかりやすく伝わっていたと思う。
 個人的にはこういった芸術作品を観覧する人は男性の年上の方ばかりだという完全なステレオタイプを持っていた。しかし、若い女性もいて場面によって表情豊かに見ているのを実際に見て、男女や年齢問わずこの作品に興味を持って足を運んでいることに驚いた。私が以前抱いていた芸術のイメージも年配の方ばかりが見るというものであった。今回の作品を見て、このような新しい芸術のあり方をもつ作品には老若男女問わず興味を持って足を運ぶ人がいるということを知り、これまでの芸術に対しての固定概念がなくなった瞬間でもあったため、今後芸術というものが時間を経てどのように変化していくのか気になるきっかけになったパフォーマンスだった。
 私にとって初めて見るジャンルのパフォーマンスで理解できるか不安だった。実際に見ても驚くことが多いパフォーマンスであったが、想像していたよりも面白く鑑賞でき、飽きる場面がない作品だったと感じた。石田裕己の感性と趣味が詰まった今回の「てなかま THE LIVE」は、これに続き今後どのような作品を作り上げていくのか、そして趣味や好きなものがどのように作品に生かされていくのか、彼の今後の表現力が楽しみになったパフォーマンスであった。

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