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【おすすめ勉強会・イベント】「三文会」の朝活勉強会

『東大生が参加できる勉強会はありませんか?』
こんな質問がよくUT-BASEの質問箱に流れてきます。
「ちょっと時間があるから、自分の学びになるような活動をしたい」そんな好奇心旺盛な東大生のみなさんに、UT-BASEメンバーが実際に参加して「面白い!」と思ったイベントや勉強会をご紹介していきます。

初回である今回は、UT-BASEの記事作成部門部門長が参加した朝会をご紹介します!

三文会とは?

まず、朝会を運営されている「三文会」さんについてご紹介します。
「早起きしてちょっと世界を広げよう」をモットーに、毎週土曜日の8:00~10:00に東大近く(もしくはオンライン)で開催される朝の勉強会。毎回異なるテーマのプレゼンを聞き、その発表を基に活発に議論を行います。東大生に限らず、他大学の学生や社会人まで多種多様な参加者がいます。現在はオンライン中心で活動を行っていますが、今後の状況に応じて対面活動を行う可能性もあります。

これまでのテーマには以下のようなものがあります。
・東大女子はなぜ増えないのか?
・『現代思想』の読み比べ
・日常化した例外状態〜コロナと生権力〜
・よく見るYouTube動画紹介
・高校生でもわかるCG研究最前線
・禅と茶道と日本美術と近代科学

UT-BASEでのサークル紹介記事は[こちら]
三文会公式サイトは[こちら]

今回のテーマは「イノベーション」!

「イノベーション」という言葉は、学界でも産業界でも官界でもよく聞くワードです。でも「イノベーションって何?」と聞かれると、具体的な定義が思いつかないのではないでしょうか?

「イノベーション」の概念は、経済学者のヨウゼフ・A・シュンペーターが『経済発展の理論』(1912年)で提唱したといわれています。今回の勉強会では同書の内容を踏まえて「イノベーション」について考えました。

まずは自己紹介

朝会の最初には、自己紹介タイムがあります。
三文会には多様なバックグラウンドを持った人が集まっています。今回の朝会に参加された方にはこんな方がいらっしゃいました👀
・東京大学教養学部生
・東京大学工学部生
・東京大学大学院生(複数名)
・スタートアップ支援
・大学教員(複数名)
・ITコンサルタント
文理も専門分野も年代もさまざまで、どんな議論が生まれるのか楽しみです…!

また、自己紹介とともに「イノベーションと聞いて思いつくことは?」の一言発表を行いました。
iPhone, AirPodsなど、「イノベーション」ときいてよく思いつく製品はもちろん、「文字・農耕・活版印刷」など予想の少し斜め上をいくものも。また、「ソニー最初のイノベーションはウォークマンではなく『トランジスタラジオ』である」というお話までありました(笑)
さらに、「イノベーションのジレンマ(巨大企業が新興企業を前に力を失う理由を説明した企業経営の理論)」「Winny」「科学技術・イノベーション基本法」「技術的に可能だというだけでなく、事業として成り立ったものこそがイノベーション」などなど、参加者によって千差万別の答えがありました。

早速プレゼン!『経済発展の理論』から「イノベーション」を考える

三文会写真1

自己紹介が終わったら、プレゼンターの方からの発表が始まります。冒頭にも書いたように、今回はシュンペーターの『経済発展の理論』での議論をもとに、「イノベーション」という言葉の意味をその起源から探り、プレゼンターの専門分野である科学・技術政策論の立場から論じていきます。

三文会写真2

発表内容はスライドに準じますが、シュンペーターの言説をまとめるだけではなく、その背景や含意まで考察されています。すごい……!

スライド2~3枚分のプレゼンが終わったところで、早くもチャット欄は質問やコメントの嵐になっています。それをきっかけにし、以下のようなやりとりが繰り広げられました。(筆者にもわからないほど高度な話もいくつかありました……)


Q「経済が循環する」とはどういうこと?
A:経済学の一般均衡理論が背景にある。需要と供給とをはじめとして、時間が経つにつれて経済のいろんな要素が均衡し、同じ活動の繰り返しになっていく、ということ。

Q:「新結合の遂行」が資本主義社会の中で受容されるのはなぜ?
A:本の中に該当部分はないと思う。ただし、シュンペーターは、消費者の需要が先にあってイノベーションが応えるのではなく、逆にイノベーションが消費者の需要を生み出す点を強調している。
しかし、必ずしもイノベーションは受容されるとは限らない。
ペルーの衛生当局がある村で、食中毒を防ぐために食材の煮沸(イノベーションの一種といえる)を普及させようとしたところ、住民に「煮沸したものは病人の食事」という観念が根強く、普及活動が失敗した、という事例もある。


筆者が感動した「考察」の部分については、以下のようなプレゼンがされていました。私がイメージしていた「イノベーション」は、もっぱら科学技術を伴うものだったのですが、「イノベーション」の原義は科学・技術を前提としないものであることが意外でした。現在はなぜ原義と異なる用法で使われているのだろう?という新たな問いも生まれました。

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白熱した議論

話が進んでいく中でもハイスピードでチャットが流れていきます。みなさん今までに自分が読んだ文献や自分の経験に基づいて質問やコメントをされていくので、コメントを読んでいるだけでもすごく勉強になります。ここでは、コメントから発展した議論のうち、筆者が「面白い!」と感じたものをピックアップしてお伝えします。

①イノベーションであるものとそうでないものの線引きはどこに?
 (Aさん)結局、何がイノベーションで何がイノベーションじゃないかの線引きはどこにできるのでしょうか? シュンペーターの主張を見る限りでは、日常生活にもイノベーションがあるのではないかと感じてきました。
 (発表者)そうですね。本書の通り、イノベーションあらゆる経済現象の起源だとすれば、私たちの日々の経済的な営みにもイノベーションが含まれるのではないかと僕も思います。しかし、だからといって、循環に流されてルーティンをこなしているだけではイノベーションといえません。「こうやったらどうなるんだろう? ちょっと挑戦してみようかな」という思いがイノベーションの始まりなのかなと。


②意図せずにイノベーションが生まれる時もある(鳥獣戯画を例に)
 (Bさん)僕は暇を持て余している時の方がイノベーションは生まれるんじゃないかなと思います。人文学や芸術がイノベーションに使われるのは、もっぱら価値観の部分なんじゃないかなと、僕は最近鳥獣戯画展(東京国立博物館平成館特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」)に行ってきたんですけど、鳥獣戯画って本当にわけがわからないんです。あれは4巻あって、みなさんが知っているような動物が踊っている場面の他、動物図鑑のような箇所や、遊ぶ人間を描いた箇所もあります。しかも全部で44mもあります。しかも、これって何か目的や意思があって描かれたものじゃないと思うんですよね。あれが描かれた時の紙の価格ってすごく高いだろうし、描くのにもすごく時間がかかると思うんですね。あれは一歩間違えたら捨てられていたかもしれないし、圧倒的に暇とお金がないとできないことだと思うんです。それが今すごくバズってて、商業的価値も生み出しているし、時には漫画の起源とも言われている。あれも一種イノベーションなんじゃないかな、アニマルスピリッツ以外から生まれてくるイノベーションもあるんじゃないかなと思います。
 (発表者)これって、「作為的・経済的でないイノベーションもある」という、現代から見たシュンペーターへの本質的な批判にも聞こえます。面白いですね。

③うまくいかないイノベーションも記録しておくべき
 (Cさん)イノベーションは提案しても90%はうまくいきません。うまく行くのはそのうちの10%、利益につながるのは1~2%ではないでしょうか。うまくいかない例はたくさんあるのに、文献や歴史に残りません。しかし、うまくいかない例も意味があるので、それを拾い出して整理していくのも大事なのでは、と思っています。
たとえば、千葉県に人工雪を使ったスキー場がありました。僕はこれがすごいイノベーションだと思っていたんですが、結局うまくいきませんでした。なぜなら、新幹線で日帰りでスキーに行くことが可能なシステムができたからです。素晴らしいのにうまくいかなかった例と、なぜうまくいかなかったのかを記録に残しておく必要があると思います。
 (Dさん)それ関連で言うと、成功しなかったスタートアップの例がまとまっている記事がありますよ!

参加した感想

私は三文会さんの朝会に参加したのはこれで3回目なのですが、発表のクオリティと議論の活発さに感動します……!  経済発展の理論について全く読んだことがなかった筆者は今回の勉強会についていくのが精一杯だったのですが、他の参加者の方のコメントなどを読むことで、テーマに関連する周辺知識も勉強できるのでお得感を感じました(笑)

普段の様子

参加者が集うSlackがあり、そこで雑談や情報共有などを行っています。時々参加者同士でスピンオフ読書会が開催されることも。また、「論文の読み方」「面白いオンラインイベント」「おすすめサイト・ツール」などのお役立ち情報も流れてきます!(特に「論文の読み方」は非常に参考になりました)

参加したい方へ

最後までお読みくださりありがとうございました!
今回ご紹介した勉強会は誰でも・どの回でも参加することができます。
毎週土曜日の朝8時から行われているので、もし興味ある方はぜひ参加してみてください✨
[三文会ホームページ]中の、毎週の内容紹介ページに記載されているZoomのURLから参加することができます。


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