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よく書くことは、よく読むこと。

ずっと文章を書くことに対してコンプレックスを持っていた(持っている)。
何か思うことはあるのだけれども、うまく形にできず、伝えられない。
出されるお題に対しては、「なぜこのトピックについて書かなきゃいけないの!?書くことないよ!?」と変な反骨精神が芽生え、結局筆が全く進まない。もう面倒くさい、やる気が起きない。そんな負のループに陥ることが、義務教育中たくさんあった。

だがらなのか、私は文章読本に手を伸ばしがちだ。そうした過程で、『めんどくさがりなきみのための文章教室』(飛鳥新社)と出会った。はやみねかおる先生との再会だ!

第1章を特に気に入った。 序盤に出てくる2つのフレーズが、作文と格闘していた小中高校時代の思い出を浄化することの助けとなったからだ。そのフレーズというのが、

「ぼくには抱負がないから、正直に「中学2年生になったけど、抱負はありません」って書くように教えられた」(P.20より)
「めんどくさく感じるのは、才能がある証拠!」(P.26より)

の2つ。
小中学生時代に感じた私のモヤモヤを肯定してくれたような気がして、心が軽くなった。

第1章の特徴は、日記や作文を書く時に生じる「めんどくさい」という感情に、真摯に寄り添い、徹底的に向き合ってくれていることだ。文章を書こうとするものの、結局途中で面倒くさくなることは、日常茶飯事。書かなきゃいけないのに書きたいことが何も見つからなかったり、反対に、書きたいこと・書かねばならないことが多すぎて、まとまらなかったり。こうした、ひとつひとうの「めんどくさい」を見逃さず、筆が止まってしまう状況と要因、その解決策を示してくれている。 これに則れば、心に嘘をつかず、等身大の自分で文章を発展させるための心構えと法則を学べる。辻褄合わせで翻弄されることとは、もうおさらばだ。その結果、文章執筆への抵抗感を減らすこともできるだろう。第1章を読み終わる頃には、誰にでも、何か書きたい気持ちが芽生えているに違いない。

第2章より、内容がマインド面からスキル面へと移行する。読み手に伝わり、かつ、味のある文章を書くために必要となる考え方とテクニックを身に付けられる。第3章は小説執筆に向け特化しているものの、小説家志望じゃなくても面白く読める!小説を書く気なんかサラサラ無い私の興味を引いたのは、小説の題材を決めるために、自分の好きな作品が好きたる理由を探ることを勧めるアドバイスだ。

「感動で、心が震えた。そうしたら、一度立ち止まって考えよう。自分はどうして感動したのか?この答えを見つけよう。」(P.176より)
「感動した作品の、本質的な部分を見よう。」(P.178より)

私が備忘録風・エッセイ風の文章を残したくなる欲求は、この教えが示すことと同じ所から来るものだと気が付いた(実際は承認欲求的なのも加わるだろうが)。noteやブログを更新したくなる動機が、思いもよらぬ所で突如として言語化されてしまったので、びっくりした。

さて、この本の帯コメントに、朝井リョウ氏が「文章を書く力、つまり心の形を描く力」と寄せている。本章はまさに「心の形を描く」ための how を温かく示してくれた本であった。読書感想文に悪戦苦闘していたあの頃の自分に渡してあげたい一冊。

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