自慰式箇条 - 0 -
「プロローグ」
金欠なのである。
記念すべき第一回の第一声が金欠というのも、なんとも情けない限りではあるが、
しかしそうも言っていられないほどにまで金欠なのである。
当方、今年で三十歳。
金欠である。
自慢じゃないが幸せな家庭に生まれ、何不自由なく育ち、両親に愛され、友人にも恵まれ、大学も留年することなく卒業した。
それなりに順風満帆な人生であった。
そんなぼくが、まさかここまで金欠に陥ってしまうとは。
まさか100円のおにぎりを、否、ブラックサンダーを一つ買うのにも躊躇してしまう人間になるとは。
一体なにがいけなかったのだろう。どこでぼくは道を踏み誤ったのだろう。
……とまぁ、過去を振り返れば「あの時こうしていればよかった」と後悔することは多々あるけれど、いちいちそれを思い返して、わざわざ歯軋りしていても始まらない。
過去は変えられないのである。
もちろん、タイムマシーンが完成して今すぐ過去の自分に会いにいけるのならば、
去年の夏に酔っ払った勢いでガールズバーに8万円落としてしまった自分に脳天からおもいっきり冷水をぶっかけてやるし、
女の子を口説くために散財した挙句、ラブホテルで自分のモノが機能せず、相手に呆れられ先に帰られたあと、煌びやかな部屋でひとり落ち込むぼくにそっと歩み寄り肩に手を添えてやるけれど、
それはまぁおいおい、タイムマシーンが出来てから考えるとして、今は今のこの現実を自らの目で眼差すしかない。
過去に起きた出来事そのものは変えられないにしても、過去の出来事を評価するのは、その都度その都度、今の自分だ。
要するに、今のぼくが変われば、薄暗い灰色模様の過去の景色にも雲間の光芒が射し込むかもしれないわけだ。
というわけで、今日からそんなぼくの日常をここに書き出していきたいと思う。
好きな映画や漫画の話、最近読んで面白かった本の話、初恋、将来の夢などなど。
そんな中で、過去の手痛い思い出を書き記すこともあるだろう。
けれどそれは前述した通り、過去を振り返って悲劇ぶって歯軋りをしたいがためではない。
あくまでこれは、今の自分の目で過去を見つめ直し、評価をし直そうという魂胆である。
好きな映画の話をするのも、本を紹介するのも、初恋を振り返るのも、すべては今のぼくをポジティブに再評価するための行為。
ぼくはそれをここではひとつ、自慰式箇条と呼ぶことにする。
これからここに書き記すのは、惨めな男が自らを慰めるための稚拙な箇条書きと思っていただければ幸いである。
話が脱線してしまったが、
さて、
金欠なのである。
まごうことなき、金欠なのである。
次回はなぜぼくがこんなにも金欠に陥ってしまったのか、その根本的原因を探っていこうと思う。
それでは、また
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