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3倍レバレッジの罠:TQQQ投資に潜むリスクとは②

TQQQは1倍レバレッジの3倍得をするわけではない?
高リターンの夢と隠されたリスク。TQQQを巡る投資家の必読ガイド

※本記事は連載となります。前回はこちら※


前回は、TQQQのようなレバレッジ型上場投資信託の基本的な特徴と、TQQQがNASDAQ100指数の動きに連動している点について述べました。

今回は、より本格的にTQQQに隠された落とし穴について解説していく予定です。
少し難しい内容ですが、ご安心ください!私たちアメリカ株式義塾が全力で分かりやすく解説しちゃいます。


早速一緒にポイントを見ていきましょう!


本日のポイント

  •  3倍レバレッジなのに2倍も上がらない?TQQQってQQQの3倍得するものじゃないの?リバランシングの落とし穴



お待ちかねのTQQQシリーズ2篇です!

TQQQの仕組み

ほとんどのレバレッジ3倍型ETFはこれと似たような仕組みになっています。

TQQQの組入銘柄

組入銘柄

TQQQを構成している組入銘柄を調べてみたことはありますか?
TQQQの組入銘柄の現物の割合は、実はそれほど大きくありません。 その代わりに「Nasdaq 100 Index Swap~」などといった「スワップ」というものが大きな割合をしめています。

このような金融会社がレバレッジを実現している

「スワップ」とは?

Nasdaq 100 Index Swapの横にはSociete Generale、BNP Paribasのような名前がついています。これは、投資会社や金融会社の名前です。 その下にはJP モルガンやゴールドマンサックスのような馴染みのある会社名もありますね。スワップは、投資会社が運用するIndex Swap(インデックススワップ)というデリバティブ商品のことなのです。

インデックススワップとは?
難しかったら、飛ばしても問題ありません!

各投資会社に一定の利息を支払い、指数変動に応じた一定の利回りを受け取ること。この利息はTQQQの運用会社であるProSharesが受け取る手数料から支出される。

つまり、TQQQの仕組みは、TQQQが独自に3倍のレバレッジをかけて3倍にしているのではなく、この多数のインデックススワップというデリバティブをProSharesが数十の投資会社と分割して契約し、適切に現物、先物商品とウェイトを配分して、全部合わせると結果的に指数変動の300%に相当する収益が得られるように設定しているのです。

投資するのにこんなことまで知っておく必要があるのかと思う方もいるかもしれません。確かに、このような原理を知っているからといって、収益率が上がるわけではありません。

しかし、基礎をしっかり理解していれば、皆さんが自信と安心感を持って投資をする上で大きな助けになるでしょう。 ですから、難しいかもしれませんが、諦めずに一緒に進んでいきましょう。

これ以外にも、SOXL、LABU、FNGUなどのほとんどの3倍レバレッジも、運用会社一社だけでは3倍レバレッジをかけることはできないので、関連するデリバティブを投資会社と直接分割して契約し、それらを再び組入銘柄の中に集めて3倍レバレッジを実現しています。


TQQQ投資の注意点

ここは非常に重要なポイントなのでしっかり解説していきます。
当然ですが、3倍のレバレッジにはそれだけのリスクが伴うことを意識する必要があります。

毎日のリバランス

TQQQは運用会社(ProShares)が毎日「リバランス」を行っています。

TQQQの最も大事な落とし穴

さて、TQQQの話に戻しましょう。すべての上場投資信託は、資産運用会社が定期的にリバランスを行い、可能な限りその目標値原資産に合致するようにしています。TQQQの場合は、リバランスを毎日行っています。このリバランスについて簡単に説明するしていきます。

 まず、TQQQの目標はナスダック100指数を3倍「追う」ことです。 これは、どういうことかというと、変化の基準となる値が日々更新されるということです。

より簡単に例えてみます。

ナスダック100が10000から10500の間で変化して毎日横ばいだとしましょう。今日は10000、明日は10500、明後日はまた10000...このように5日間、10000と10500を行ったり来たりしているとしてみます。

  • ナスダック100指数の変化:10000 → 10500 → 10000 → 10000 → 10500 → 10000

すると、ナスダック100指数が10000から10500になるときは5%上昇し、10500から10000になるときは1-(10000/10500)=4.76%下落することになります。

TQQQは当然これの3倍を追うので、ナスダック100が10000から10500に上昇した日には15%上昇し、ナスダック100が10500から10000に減少した日には約14.3%下落する必要がありますね。 上昇と下落の基準となるのはその前日の価格で、その3倍を追うように調整することがリバランスの意味なのです。

 では、これを、計算してみましょう。
 やはり計算しやすいように、TQQQの初日の価格は100ドルとします。

TQQQの株価の変化:
100→115(15%上昇)→98.56(14.3%下落)→113.3(15%上昇)→97.1(14.3%下落)

ナスダック100指数が10000~10500の間で永遠に毎日500ポイント上昇、500ポイント下降を繰り返したと仮定し、ナスダック100指数とTQQQのチャートを描くとこのようになります。

TQQQの値は徐々に減少していきます

TQQQの原資産であるナスダック100指数は100ドルに戻り続けている、つまり横ばいの時、なんとTQQQの値は徐々に減少していきます。

ナスダック100が横ばいの時、TQQQを保有し続けるとどんどん損をするんです。TQQQで起こりうる損はもちろんこれだけではありませんが、ひとまずこれがTQQQで考慮すべきリスクの中で最も大きな損失となる可能性があるものです。

上のチャートは私が適当に作ったものですから、 次は2021年の実際のTQQQとナスダック100指数の動きを比較したチャートで、より具体的に見てみましょう。

NASDAQ100が横ばいでも、TQQQは下がり続ける

おっ!こんなところに良いチャートがありました。
上のチャートを見てみましょう。

紫色がナスダック100指数、青色がTQQQです。
さて、手前からA、B、C、D、Eの地点を見るとナスダック100指数はほぼ横ばいでした。 (当時のナスダック100指数は15000あたりでした。)ですが、ナスダック100指数がAからBまでほぼ横ばいに推移する間にも、BからC、CからD、またDからEまで横ばいに推移する間にも、TQQQの株価が下がっていることが確認できますね。ナスダック100はA→Eで元値に戻ったのに、TQQQは回復できず下がっているのです。

これはFとGでより顕著に見ることができます。ナスダック100指数がFから騰落を繰り返しGまで戻る間に、TQQQはFとGの間で大きく下がっていますね。

長期的に見ると、ナスダック100指数は一般的に右肩上がりです。しかし、短期的にとると頻繁に下落する場合も多くあり、指数回復に長い時間がかかる場合も多くあります。

そのため、私たちがTQQQに投資する場合、私たちが負担しなければならないリスクは思っているよりも大きく、想定しているよりもリターンが少ない可能性があるのです。


いかがでしたか?
今回は、様々な種類のスワップ契約が組み入れられTQQQの3倍レバレッジが実現されていること、そしてQQQQで毎日行われるリバランシングが株価に与える負の影響について分析してみました。

次回予告

皆さん、落とし穴はこれだけじゃないんです!
次の記事では、TQQQの他の落とし穴について具体的に解説していきますので、お楽しみにしてください!

  • 「LPと乖離率の秘密」

  • 「運用手数料の穴」: TQQQって長期投資に不向き?

※本記事は全4回の連載となります。次回の投稿までお待ちください※


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