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子ども/アート/ワークショップの哲学

『ゲンロン10』の東浩紀さんの巻頭論考『悪の愚かさについて、あるいは収容所と団地の問題』を読んだ。

哲学と批評と紀行を融合させる試みとして書かれたものとされる。

中国のハルビン、ポーランドのクラクフ、ウクライナのバビ・ヤールなどの地を訪れる。これらの地にはそれぞれ、凄惨な人体実験をくりかえしていた関東軍の七三一部隊、プワシュフ強制収容所、10万人以上の犠牲者を出したというナチスによる大量虐殺の現場があったという。

これらの地を訪れながら、「大量死」と「大量生」の問題をつなぎ、笠井潔による探偵小説の批評を参照しながら、団地の問題を描き、そしてハイデガー、さらには村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』の批評を通して、悪について考える新しい視点を描き出していく、まさに圧巻の論考だった。

この論考は、幼少期の東さんの経験から、向き合うべき課題に向き合い始めたものだという。この熱量に感化されて、ぼくも「自分が向き合うべき課題ってなんだったっけ・・・?」と考えてしまった。

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