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対話型鑑賞にもとづいて「観察」と「共感」を学ぶ場をつくる

ぼくはこの1年ほど、もっぱら対話型鑑賞に関心をよせている。このマガジンでも、対話型鑑賞とは何か?いったい何が面白いのか?そして、ビジネスパーソンに向けて説明するにはどのような言葉があるか?といったことを探究している。

最近とくに関心をもっているのは「対話型鑑賞における"学習"とはなにか?」ということだ。他者と対話しながらアート作品を鑑賞することをとおして、ぼくたちはどのような"学習"を経験しうるのだろうか。

これに関しては、さまざまな論文を読むことができる。

対話型鑑賞における鑑賞者同士の学習支援に関する研究
こちらの論文は、鑑賞の初学者である鑑賞者が、対話型鑑賞をするなかで、熟達者であるファシリテーターのようになっていくことを書いている。具体的には、他者の発言を引用したり言い換えたりするようになっていくという。

ファシリテーターの役割を鑑賞者同士が学習し、"わかちもつ"なかで、ひとつの"場"として共同的に発達していく過程とその考察が書かれている。

半開きの対話 ー対話型鑑賞における美学的背景の一考察
こちらの論文では、「作品の自由な解釈」を開きすぎることを懸念し、美術史や形に込められた作家の企図といった、解釈を「閉じる」はたらきをもつものの重要性を語っている。

「開く」と「閉じる」を両立させ、鑑賞者に対して作品の解釈が「半開き」にされた状態をどのように作り出すことができるかが描かれている。そのなかで、「概念変化」や「日常知の組み替え」といった教育的効果に関する言及がある。

論文はまだまだリサーチ中だ。

今日は、対話型鑑賞をベースにした観察と共感の方法を学ぶ場づくりについて、過去の経験を語ってみる。

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