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アートの探索遠足#006 オンライン対話型鑑賞

こんにちは、臼井隆志です。今日は「アートの探索遠足」のお誘いです。

「アートの探索遠足」は、このマガジンの読者の皆さんとアート作品を鑑賞しながら、感じたこと、考えたこと、その根拠について対話するイベントです。

また、このイベントはオンラインで開催することで、以下の3つの目的を持っています。

①オンラインでも対話型鑑賞は可能であることを実感してもらう
②どんな場所からも気軽に参加してもらえる
③オンライン上に公開されているアート作品を活用する方法を考える

今回のイベントでは、③のように「アート作品を鑑賞し活用することが、ビジネススキルを育むことにいかに寄与できるか?」ということを考えてみたいと思っています。

3人1組で、ブラインド・トーク

今回行うのは、「絵を見ている人」と「見ていない人」に分かれて対話する「ブラインド・トーク」です。この活動を、3人1組のグループになって行います。

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2人が絵を見て、その絵を説明する。1人は絵を見ないで、頭の中でイメージする。3人で協力して、絵を見ていない人が正確にイメージできるよう対話する活動です。

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絵が見えていない人から質問するのもOKです。「絵の右側はわかったけど、左側ってどうなってるの?」というような感じです。

ゲームとして面白いだけでなく、普段と異なる思考を用いるのが、とても面白いのです。

さて、以下の文章では、こうした活動における学習の効用について、仮説を提示します。

アートを見て言葉にすることで起こる”葛藤”とは?

アート作品を見て対話するなんて、一見するとものすごく地味な活動に見えます。しかし、作品を見て感じたことを言葉にしようとすると、なかなかうまく語れません。

たとえば、こちらの作品をよく見てみてください。そして、この作品に描かれているものを、この作品を見ていない人に、正確に、言葉だけで伝えてみてください。



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https://www.artic.edu/artworks/81546/the-petite-creuse-river

ぱっと見の印象で、自分だけ理解したければ、「山と川の絵なんだな」ぐらいで理解が止まります。

しかし、言葉にしようとすると、観察しながらいくつもの問いが芽生えます。

「いくつ山があるか?」
「どのような表面でできているか?」
「どこまでが川で、どこからが岸辺なのか?」
「山と川と岸辺の境界を言葉にするにはどうすれば良いか?」

など、観察すればするほど様々な問いが芽生え、どう説明していいか葛藤が生まれます。

このような葛藤を楽しみつつ、実験的に言葉にしてみて、あるいは他の参加者の意見を参考にしてみて、考えることができるのです。

あるいは、作品の時代背景や作家の置かれた状況などを調べ、考察しながら見ることで、政治と芸術、産業と芸術などの関係性を考えることもでき流でしょう。

このように、アートを見て対話することで、観察する、問う、他人と協調する、実験的に言葉にする、他の事象と関連づけて考えるなど、様々な活動が生まれます。

対話型鑑賞とイノベーションスキル

こうした活動の効用は、「イノベーションのための機能的スキル」について考えることで見えてきます。

ビジネスにおいてアートがどのように寄与するかが研究された論文が紹介されているこちらのPDFでは、以下のようなスキルが紹介されています。

Questioningは,既存の体制に対する、または個人や組織・社会に挑戦するような疑問を持つスキルを示す。
Observingは,新しい環境だけでなく日常も観察できるスキルである。Networking は,多様アイデアを持った人々のネットワークを新しいアイデアや洞察につなげるスキルを意味する。
 Experimenting thinking は,精神的物理的両面で探索をするスキルである。Associational thinking は,知識や産業・地理的なことなど様々な情報で誰も知らなかった新たな繋がりをつくるスキルである。

引用:ビジネスにおけるアートの活用に関する研究動向
原典:The Innovator’s DNA: Mastering the Five Skills of Disruptive Innovators 

対話型鑑賞の中にも、問う、観察する、他人のアイデアと繋げる、実験的に思考する、別の情報を繋げる、といった活動が起こります。

鑑賞と対話の中で小さく起こるこれらの活動を、日々の業務に類推して考えることで、学習の”転移”が起こると考えられます。

目的を持っても持たなくても、どちらでも良い

こんな風に、対話型鑑賞を行うことである種のスキルが育まれていくことがあるでしょう。

ぼく自身は、対話型鑑賞の活動を行うことで、ファシリテーターとして「問いを立てる力」が著しく成長した実感があります。

とはいえ、ぼくはアート作品を鑑賞することに目的は必要ないとも思っています。

目的がなくとも、ふとアートを鑑賞することで日常が豊かになったり、あるいは社会を豊かにするためにできる行動を考えるきっかけになったり、そういうことが起これば良いと思うし、起こらなくても良いと思っています。

最初はビジネススキルを伸ばしたいという目的を持ってアートを鑑賞していたが、次第に目的がなくなっていって、鑑賞することが習慣化する人が増えたらいいなと思っています。

美術館に足を運びづらい時代になっても、アートの観客が豊かにアクションしていくことが、文化を衰退させず、耕していくと考えているからです。

アートの探索遠足#6 オンライン・ブラインドトーク 開催概要

日時:6月27日(土) 14:00~15:30

会場:ZOOM+MURAL

内容:オンラインで対話型鑑賞における「ブラインド・トーク」を実践する。

14:00~14:15 イントロ+自己紹介

14:15~15:15 ブラインド・トーク

15:00~15:30 リフレクション
15:30~16:00 ゆるやかなアフタートーク(参加自由)

このマガジンは、アートワークショップの設計を専門とする臼井隆志が、ワークショップデザインについての考察や作品の感想などを書きためておくマガジンです。対話型鑑賞イベントの実施に加え、週1~2本、2500字程度の記事を公開しています。

参加をご希望の方は、以下二つの方法をお選びください。

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