「リアルごっこ遊び」の可能性
こんにちは。ワークショップデザイナーの臼井隆志(@TakashiUSUI)です。今日は「ごっこ遊び」に付き合う大人のきもち、について書こうと思います。
子どもの頃のごっこ遊び
まずは、前回の記事で募集した「おたより」をご紹介します。前回のテーマは「子どもの頃にやって楽しかった/お子さんと遊んで楽しかったごっこ遊び」でした。
まずはこちら。
私自身が昔やっていたごっこ遊びは、主に家族ごっこ・セーラームーンごっこ・お姫様ごっこでしたが、妙なスリルも味わえて楽しかったのが「パトカーにひかれるごっこ」でした。
教えてくれたのは、近所に住む一個上の男の子。
パトカーがゆっくりとした速度で巡回してくるタイミングを狙い、進行方向の前方にスタンバイ。通りがかった瞬間に「うわぁー!」と言ってはねられた演技をします。パトカーは基本無視して通り過ぎていくのですが、走り去っていくパトカーに向かって敬礼して見送る、というのが一連の流れです。
「パトカーにひかれるごっこ」!これはきっとゲラゲラ笑いながらやってたんでしょうね。学校の帰り道とかにやるんでしょうかね。子どものごっこ遊びの中に「事故」「怪我(あるいは死)」というモチーフって、時折登場しますよね。そして本物のパトカーというところがいい。轢かれているのに敬礼するの謎ですね〜。その男の子、いつ思いついて、誰と始めたんだろう。
つづいてはこちら。
小学生の頃、2歳年下の妹とよくラジオ番組をつくる遊びをしていました。どちらかがラジオパーソナリティ役をやって、どちらかがゲスト役。CMっぽいナレーション、お便りコーナー、突然はじまる楽曲紹介のフリに歌を歌ってみたり、最初の設定だけ決めてあとはアドリブで。カセットテープに録音して家族みんなに聞かせてゲラゲラ笑っていました
なんというか、、、おしゃれ!ぜひ音源を聴いてみたくなりました。カセットテープって録音と再生がフィジカルにできて、いいおもちゃになるかもしれません。しかも、ご家族がリスナーっていうところが素敵ですね〜!
ぼくの知人と当時2歳の娘さんがやっていた「ごっこ遊び」で面白かったのはこんなエピソード。
ご飯を食べてお風呂にはいったあとに、アイロン台をテーブルにして「バーごっこ」をする。娘はママ役で親はお客さん。大人2人はビールで、娘は牛乳や炭酸とフルーツの飲み物を飲む。3人そろって遊ぶことが好きなようで、「自分が主催している感」がいいのかも。このバーの遊びはとても満足そう。「今日はお茶にしようかな〜」って言ったら、「ビールにしたら?」と言われてビール飲むことになったりする。
このエピソードは本当に大好きでたびたび人に紹介してしまうのですが、親が子どもの前で晩酌するのを我慢していない!というところがいいですよね。娘さんにとっては寝る直前までたっぷり遊んでもらえるだけでなく、「本物の飲み物」が登場するワクワクする活動。ぜひ、我が家でも真似したい遊びの1つです。
半分リアルなごっこ遊び
今回ご紹介したエピソードに共通するのは、「半分リアル」ということ。パトカー、カセットレコーダー、そして飲み物と、どれも「おもちゃ」として作られたものではない「本物」。「ごっこ遊び」が現実と何かしら交差していました。
先日、発達心理学者の森口先生がこんな研究を紹介されていました。
こうした研究から、子どもたちは実は「本物の活動」がしたいのだけど、その欲求を昇華させるために「ごっこ遊び」で我慢している、ということが推察できそうです。だから本物に触れる遊びがみなさんの記憶にも残っているのかもしれません。
狩猟採集民族の「リアルごっこ遊び」
ちょっと話は飛びますが、文化人類学では、狩猟採集民族における子どもの「遊び」について、興味深い研究がたくさんあります。
彼らの生活の中には「玩具」がほぼ存在せず、本物の調理器具、狩りの道具などを使い大人たちの模倣をしているといいます。すると、ほぼすべての活動が「生活の練習」になります。
たとえば、オノをもてあそぶ幼い子を、大人は決して止めず、自分の責任で遊ぶ様子を見守ると言います。また、幼い子に対して少し年上の子が世話を焼くことなども観察されています。
おそらく、オノやナイフといった生活の道具をつかって、大人の真似をして遊び、それを少し年上の子がサポートしてあげることで、「遊びの中で生活の練習をする」ということが起こっていると考えられます。狩猟採集民族はおしなべて「リアルごっこ遊び」を通して生活の術を学んでいる。
では、ぼくたちは・・・?
*『学びの認知科学辞典』『子どもの文化人類学』などを参考にしています。
おたより募集
一度狩猟採集生活まで話がとびましたが、次回は、身近な「リアルごっこ遊び」について考えてみます。
とりわけ気になっているのが「バーごっこ」にも通ずると思うのですが「リアル料理ごっこ」です。いや、それ料理じゃん、というツッコミはなしにしましょう。
おたよりのテーマは、
子どもの頃、料理を手伝って楽しかった話、もしくはお子さんと一緒にやってみて面白かった料理
です。
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