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「ごっこ遊び」はなぜ高度な遊びなのか

こんにちは。ワークショップデザイナーの臼井隆志(@TakashiUSUI)です。今日は、子どもの「ごっこ遊び」について考えてみたいと思います。

前回の投稿で、子どもは大人にたくさん「遊んでもらう」と今度は子どもが別の人に「遊んであげる」という関わり方をするようになるのだ、という話を書き、LINEで「おたより」を募集したところ、貴重なご意見をいただきました。

「大人に遊んでもらったり仲間とのじゃれ合ったりしている子が、どうやって仲間と対等に遊べるようになっていくのかをくわしく知りたい」

「対等な遊び」ができるようになるのは5~6歳からです。いや、大人でも難しい。だいぶ説明をはしょってしまいました。というわけで、今回は5~6歳ぐらいから積極的に行われる「ごっこ遊び」を事例に、それがなぜ高度な遊びなのか。そしてどのように学ぶ遊び方なのかを考えていきます。

対等な関係とは

この「おたより」にもあった「対等」という言葉。この言葉の定義をぼくなりにしてみたいと思います。

ぼくは「対等な関係」とは「上下関係が順次入れ替わっていく関係である」と考えています。「遊んでもらうー遊んであげる」という関係にはちょっとした「上下関係」があります。似たような関係に「教える/教えられる」「質問する/答える」というがあります。

例えば、有名なクリエイター同士の対談があるとします。対談の場合、2人で話を進めていきます。このときクリエイターたちは、質問をする/質問に答えるという役割を交互にこなしていることが多いと思います。AさんからBさんへの質問で、Bさんが自分の考えを教え、Aさんが教わる。逆もまた起こる。そうして面白い対談は生まれるわけです。

こんなふうに「教える/教えられる」「遊んであげる/遊んでもらう」といった上下関係が交互に逆転していく関係こそ「対等である」と言えると思います。そしてそれって、とても高度なコミュニケーションの技術ですよね。

「ままごと」はなぜ高度なのか

「ごっこ遊び」は、まさにこの「上下関係が交互に逆転する関わり方」の実践と言えます。みんなで役を割り振り、相手の役割を理解し、相手に行動を促し、あるいは相手に促された行動に応答する。こんなふうな高度なコミュニケーションが、ごっこ遊びのなかで展開しているのです。

たとえば、5歳~6歳児が3人あつまって「ままごと」をしていると考えてみます。

まず、母親の役、赤ちゃんの役、おじいちゃんの役などを割り振られます。ある日常のシークエンスが再現されます。ここでは「赤ちゃんが母親にミルクをもらおうとしたら、料理中だったので、おじいちゃんにもらうことになった」という流れがあったとしましょう。

まず、赤ちゃん役は、バブバブといってお母さんに哺乳瓶をもって近づいていく。これは「次は赤ちゃんにミルクを与えるシーンをやりたいよ」ということを言葉を使わずに、母親役に伝えようとする振る舞いです。

母親役はそれを受けて、おじいちゃん役に声をかけて行動を促します。これは言葉を使って「次はおじいちゃんがミルクをあげるというシーンだよ」と伝えています。

「ままごと」はこのように「相手の役割を理解し、相手に行動を促す」ということを互いにやりあう高度な遊びです。

みんなが相互に「遊んであげる」という状態

「相手の役割を理解し、相手に行動を促す」ということを互いにやりあう高度な遊びであると書きました。

これは前回のテーマにつなげて言えば、「遊んであげる」という態度そのものです。相手の状態を把握し、相手が喜ぶ遊びを考え、提案する。

「ままごと」のなかではみんなそれぞれ相互に「遊んであげる」という態度をもって、遊びを面白くしようとし協力し合っていると言えます。子ども同士で、大人のサポートなく、こうしたコミュニケーションをスムーズに行っているわけです。

ごっこ遊びには、家庭を再現した「ままごと」以外にも、お店屋さんごっこ、警察ごっこ、学校ごっこ、レンジャー/プリンセスごっこなどがあります。

「ごっこ遊び」に至るまで

この「ごっこ遊び」に至るまでの遊びの発達過程を、ざっくりご紹介します。

「ごっこ遊び」の前段階に「役割の遊び」があります。子どもは例えば「運転手さん」の役割。止まる駅を言ったり「出発進行〜」と言ったりします。そして、そこには大人のサポートが必要です。「運転手さん、次はどちらの駅に止まりますか?」「この駅には止まりますか?」など、子どもが「役割」を演じるよう促していくサポートです。

その「役割の遊び」は、「ふりの遊び」から発生していきます。電車を運転する「ふり」をすることは1歳後半ぐらいから見られますが、まだ「運転手役」には至りません。

電車を運転する「ふり」から、大人のサポートのなかで運転手役ができるようになり、友達と打ち合わせをして「ごっこ遊び」ができるようになる。大人の模倣から「ふり」が始まり、「役割」の演技ができるようになり、仲間と一緒に「ごっこ」を企て、実践する。こんなプロセスを経て、ごっこ遊びができるようになります。

このとき重要なことは「役割遊び」の段階で、大人のサポートの仕方を十分に経験することです。役割を演じようとする人のサポート方法を、自分自身がサポートされることで学び、それによって仲間と一緒に「ごっこ遊び」をするときに、仲間のことをサポートできるようになるからです。

まとめ
・「対等」とは上下関係が交互に入れ替わるコミュニケーションである
・「ごっこ遊び」は「相手に行動を促し、また促された行動を解釈しふるまう」という対等な関係のなかで成り立つ遊びである
・「ふりの遊び」「役割遊び」を経て仲間同士の「ごっこ遊び」に発展する
・「役割遊び」の段階で、大人のサポート方法を十分に経験し、学習することで、仲間をサポートできるようになる。

おたよりのテーマ

さて、このnoteではLINE@でおたよりを募集しています。今回のテーマは「ごっこ遊び」でした。

お子さんがやっていて面白かった「ごっこ遊び」、もしくは昔ご自身が遊んで面白かった「ごっこ遊び」を教えてください。

次回は「とはいえ、大人がごっこ遊びに付き合うのってしんどいよね〜」という話を書こうと思います。

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