場の「温度感」を感じとる「観察」の練習
盛り上がる飲み会と、しっとりする飲み会は、なにが違うのでしょうか。なにがきっかけで場の「温度感」が変わるのでしょうか。
もちろん、そこに集まった人の特性によっても変わりますし、偶然生まれた問いかけによっても変わるでしょう。でもそれは単なる偶然ではなく、その場に集まる人の感情や思考のクセ、言葉の発し方や受け取り方、あるいは目線や身振り、声のトーンなどによって変わっていくはずです。
ファシリテーターは、このような場の「温度感」を調整します。ほどよい暖かさ、たくさんしゃべっても喉が乾かない湿度、さわやかな風を吹かせることもあれば、あえて不穏な予感を漂わせることもあります。
この温度の調整方法を学ぶには、人の身振りを観察するのがオススメです。
今日は、場の「温度感」がどのように醸成されるのか、そのプロセスを観察する方法を書いてみます。
いつ観察するのか
場の「温度感」が醸成される現場にはどんなバリエーションがあるでしょうか?じつは、ありとあらゆるシーンがそういう場所になっています。
たとえば、飲み会やお茶会。1対1よりも、3人以上の雑談の場がよいでしょう。
シンポジウムやトークイベントでも観察可能です。素敵な話し手の身振りや、ナイスな発言、あるいは司会者の質問の投げかけ方など、さまざまな方法見てみると、議論の中身以外にもたくさんの学びがあります。
ワークショップもまた、ファシリテーターや参加者同士の相互作用を観察する最高の機会です。
通常、ワークショップでは、参加者としてアイデア出しや制作活動に没入すると思います。しかし、没入しながら一歩外から自分たちを見るようにすると、誰のどんな問いかけで思考が加速したか、どんな介入で緊張がほぐれたか、などを察知できるようになっていきます。そのクセがつくと、他のファシリテーターの技を盗むのがうまくなっていきます。
それ以外にも、人が集まるならどこでも観察対象になります。
最近ぼくの気に入っているのは、公園や子育て施設に娘を連れて行ったときの保護者同士の会話や、保育士さんの介入の仕方です。会話が始まったり、介入されたりしたときに自分自身がどんな気持ちになるかを考えることもまた、ファシリテーションの学習につながります。
なにを観察すべきなのか?
前回のnoteで書いたとおり、観察すべきは表情、仕草、目線、発言内容、トーンや語気、そしてそれを聞いた自分の気持ちです。
今日ご紹介するのは「言葉のやりとり」を観察する方法です。おもに使う感覚器は「耳」です。
たとえば、目の前の二人がこんな雑談をしていたとします。
M「最近やりたいと思ってることなに?」
S「私、おもてなしが好きなんですよ。だから、ホームパーティーやりたいと思ってて」
M「いいじゃん、いいじゃん、どんなホームパーティなの?」
S「私の好きな料理をたくさん出して、お酒も用意して」
M「いいね〜本屋もやりたいっていってたもんね。そうやって自分の場所持ちたいってことなのかな?」
S「うん、そうかも。昼は本屋で夜になったら小料理屋みたいな場所いいかも」
こんな会話をしているとします。これをメモにとると、だいたい発言者に注目して、こんなふうになりがちです。
しかし、この書き方では、これがどんな問いかけから生まれたのかを忘れてしまいます。そのために、発言者を区別することが有効です。
現場のメモでは、このくらい頑張って書いてみます。
その後、観察内容をふりかえるときにMさんの問いかけがどんな意味を持っていたか。どんなムードだったかを書き出していきます。
さらに、Mさんの発話についての自分の気持ちや印象を書き込んでおきます。
こうしておくと、観察者であるぼくやあなたがどんなふうにこの場の温度を感じていたかを記録することができます。あとでふりかえるときに、有効です。
観察すべきは会話の「聞き手」
ぼくの考えでは、人々の「言葉のやりとり」を観察するとき、観察すべきは「聞き手」であると考えています。
話し手の言葉の内容だけを追っていると、なぜその言葉が引き出されたのかがわかりません。もちろん話し手のキャラクターが場のムードをつくることもありますが、ぼくは多くの場合「聞き手」がその温度感を醸成していると思います。
話し手がどれだけ盛り上がっていても、聞き手が退屈そうにしていると、場の温度感は良くなりません。逆に、話し手が言い淀んでいたとしても、聞き手が暖かく迎え入れるように聞いていたとすれば、場にはよい温度感が生まれます。
だからこそ、聞き手の問いかけや相づちに着目しながら会話を追うことで、場の温度の生まれ方を考察することができるはずです。
ぜひやってみてください。
前回の記事はこちら。
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