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医学生が解説! 医療系スタートアップ最前線 ~マインドフルネス~

こんにちは!北のアンビシャスです。今までUSMLE(米国医師免許)や基礎研究を主体に動いてきましたが、

2021年度は医療ベンチャー分野の勉強、発信にも力を入れて行こうと思います。

PR TIMESのプレスリリースに掲載された情報を元に最新のスタートアップ(起業、新規立ち上げ事業)の情報を編集発信していきます。

2週に1回、毎週金曜日の発信を目指そうと思います。

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今回は自分が診療科の中で一番興味があるメンタルヘルスについて紹介したいと思います。

コロナ渦のメンタルヘルス分野で注目を浴びているのが”マインドフルネス"です。緊急事態宣言等に伴い、外出自粛や在宅勤務が増え、今までとは違うストレスが生じるようになりました。そこで、自宅にいながら自分で心の負担を軽くするマインドフルネスを実践する人が増えています。

マインドフルネス

マインドフルネスとは1979年に米国の分子生物学者 ジョン・カバット・ジンが生み出したストレス緩和法です。「今この瞬間の体験に気づき、ありのままにそれを受け入れる方法」[1] と定義されています。仏教などに見られる瞑想とは異なり、宗教的要素はありません。瞑想との最大の違いは目的です。

目的

瞑想:穏やかな気持ちになること

マインドフルネス:心理的負荷を減らして仕事や勉強の効率を向上させること

なにやらよくわからないので、簡単に噛み砕きます。

日常生活で感じるイライラ、集中力の低下は脳疲労のサインとされます。疲労の解消がうまくいかず蓄積していくとパフォーマンスの低下、時には心の病に至ることも考えられます。

マインドフルネスは、静かに座って意識を呼吸に集中している間に浮かび上がってきた思考(後悔、罪悪感、不安)に対し、善悪の判断を下さず「今の自分はそう思っているんだぁ」と受け入れる。そうすることで脳や心への負荷を減らし、心理的負担を緩和するものです。その結果、仕事や勉強のパフォーマンスを向上させていくことを目的としています。

エビデンス(科学的根拠)はあるの?

実際にいくつかのメタアナリシス論文(小規模な試験をいくつか集めて総合的に治療の効果を評価する論文。根拠の信頼性が比較的高いとされる。)を読んでみた。

不安症状・うつ症状

39件の試験(参加者は合計1140人)をまとめた結果、「中程度のレベル」で症状が改善したという論文がありました[2] 。

うつ病の再発予防

6件の試験をまとめた論文[3]を発見しました。参加者508人で解析した結果、マインドフルネスを施行した集団は、施行しなかった集団と比べて再発率が20%(58%→38%)減少したとあります。

もっと多くの参加者で評価しなければ確実な結論を述べることはできませんが、マインドフルネスは不安症状やうつ症状、うつ病の再発防止に対してある程度の効果を期待できるかもしれません

マインドフルネスを日本で展開する企業

株式会社 Melon

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株式会社Melonは2019年4月に設立され、マインドフルネスのスタジオ運営を行っています。   日本において「マインドセルフネス・カルチャー」を作り、世界にそのカルチャーを拡大させることで世界中の精神疾患を減らすことをミッションに運営されています。独自のマインドフルネス・プログラムを開発し、当初は表参道と日本橋でサービスを行っていました。

 新型コロナ感染症の拡大を受け、2020年の4月にオンラインサービス「MELON ONLINE」を開始。

毎日朝6:00から夜23:00までの間、初心者向けから上級者向けまで様々なコンテンツ(月300クラス以上)を配信しています(月額3,500円)。

緊急事態宣言、国内自殺者の増加を受け、オンラインサービスの無料開放を実施しました。2021年1月13日~3月12日の間、プログラムの完全無料開放が行われました。

 また現在は、Melon有料会員1名につき、無償で1名にプログラム提供を行う「Sit with You Program(SYP)」というプロジェクトを実施しています。無償サービスの提供対象は、

・東京メンタルヘルスケア

・一般社団法人ひとり親支援協会

上記の団体の紹介者となっています。今後も連携団体を増やしていく予定だそうです。


株式会社 Melonの代表者について

代表者:橋本 大佑 氏

早稲田大学 政治経済学部卒業。シティグループ証券投資銀行本部で大手上場企業の資金調達とM&Aアドバイザリー業務に従事。その後も米資産運用会社など様々な外資系金融企業で活躍した。家庭での悩みや友人の自殺、自身の抑うつ経験から瞑想に出会う。マインドフルネスの効果に感銘を受け、事業化するために15年にまたる外資系金融でのキャリアに終止符をうち、株式会社Melonを設立。日本中にマインドフルネス・カルチャーを発信し、日本のメンタルヘルスを向上させることに力を注ぐ。


まとめ

メンタルヘルス分野の医療ベンチャーについて記事を書こうと題材を探したところ、マインドフルネスを見つけました。コロナ渦で多くの人が新たな環境、ストレスに曝されるようになりました。新しい社会に対応していくためのツールとしてマインドフルネスは今後広がっていくかもしれません。 

  何よりも興味深いなと思ったのは、医療とはもともと関係がない業界の人がメンタル分野のベンチャーを創業しているという点です。「医学界の常識」では、「専門外の人間は口出しするな」というように、専修していない人が何かを立ち上げたり行動することはしばしば槍玉に挙げられます。おそらくこの風潮は医療界だけの話であり、ビジネスでは畑が全く違う人々が全く違う組織を立ち上げることが日常的に起きているのではないかなと思います。

 医療はまず精密性が重視される。一方でビジネスでは、新規性や独創性も重視される。着眼点が大きく違うのだと思います。ヘルス分野に新規参入してきた人や組織にもチャンスがあるならば、いわんやヘルス分野で働いてきた人にも可能性はある。さらにはヘルス分野以外にも延伸可能だと思う。まず自分は「ベンチャー」という曖昧とした概念にとらわれず、今世の中ではどのような仕組みやサービスが生まれているのかをたくさん見て咀嚼しなければいけない



[1]Jon Kabat-Zinn(1994):Wherever You Go, There You Are: Mindfulness Meditation in Everyday Life. Hachette Books.

[2] The effect of mindfulness-based therapy on anxiety and depression : A meta-analytic re- view.」J Consult Clin Psychol. 2010 Apr. (Hof- mann, et al., 2010)

[3]「The effect of mindfulness-based cognitive therapy for prevention of relapse in recurrent major depressive disorder : a systematic review and meta-analysis.」Clin Psychol Rev. 2011 Aug Epub 2011 May 15. (Piet ; Hougaard, 2011)






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