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【空と大地に挟まれて】田植えにまつわるアレコレ

こんにちは。

我が家は、毎年米を作っている兼業農家で、年に2回、時期をずらして作付けしています。そして毎年、ゴールデンウィークに一回目の田植えを行っています。(ひと月ズレぐらいで、もう一度行います。)

今回は非常にざっくりですが、我が家での田植え時期前後の作業と、それにまつわるアレコレをご紹介します。なお、けっこう濃いめの記事ですので、胃もたれしない程度にご覧いただけると幸いです(^^;)


①箱苗作り

そもそも、苗がない事には田植えのしようがありません。というわけで、今回は苗箱づくりのところからご紹介していきます。

我が家でのスケジュール感としては、4月の頭ごろに播種(種まきのこと)を行い、7日~10日前後の期間を育苗器で育て、その後外に出して育てています。

播種は、この動画のような機械を使って行います。(よそのお家の動画を拝借…我が家も、だいたいこんな感じでやっています)

通常、箱苗は「床土(下土)・種もみ・覆土(上土、かけ土)」という3層構造で作ります。

ただ、ここ最近では、床土の代わりに育苗用のマット(田植え後、土に溶けるもの)を使用する農家さんも増えています。床土に比べ、マットだと箱苗の重量がだいぶ軽くなるので、女性や中高年の生産者向きの方法にはなります。

通常の床土で作る方法だと、だいたい6kg程度です。それに対し、マット苗だとおおよそ4kg程度なので、結構違います。

後はコストの問題や、水の管理方法がやや床土と異なるので、そのあたりの違いを受け入れられるかどうかといったところではないでしょうか。

ちなみに、上の動画ではどうもマットを使用されています。ですのでマットを敷いた状態で機械に投入し、種もみをまいた直後に、覆土をかぶせています。

なお、私の家では昔ながらの床土を使う方法ですので…この動画の作業の前に、一度床土だけを入れる作業を別に行ったうえで、播種・覆土の作業を行います。

箱苗が完成したら、今度は育苗器に投入します。(我が家のものとは少し違いますが、だいたいこんな感じのものです)

育苗器の最大のメリットは、温度と湿度を管理することで種もみの発芽のタイミングをそろえ、苗箱内の苗の品質を標準化できる点にあります。

極端に言えば、単に発芽させるだけであれば育苗器は無くても発芽はするのです。でもそれだと、発芽のタイミングがばらけ、幼い苗と成長しすぎた苗が混在してしまいやすくなります。そうなると、田植えもやりにくくなるし、その後の生育管理もしにくくなってしまいます。

その点、育苗器内では24時間連続で、発芽に最適な環境(約30℃、湿度ほぼ100%)にすることができます。このおかげで、均一な品質の苗が作りやすくなるのです。育苗器を使うと、だいたい2日~3日で全体が発芽してくれます。

発芽後は、段階的に日差しを当てていきます。発芽間もない苗は日差しにやられやすく、一気に強く当ててしまうと日焼けの原因となってしまいます。

育苗器から出した後は、最初の内は寒冷紗などを使い、日差しを和らげてあげながら、段階的に日差しに慣らしていきます。結構、手間がかかる作業なんですよ!(笑)

 

さて、育苗器の内部では湿度が100%なので水やりの必要はなかったのですが…一度外に出すと、毎日ひたすら水やりに追われます。毎日、朝一回と、昼過ぎ一回…日差しが強い日は適宜もう一回…と、必ず水やりを行っています。これを忘れると、苗が水切れを起こしてしまい、日差しが強い日なんかだと一発でチリチリ…になってしまうので、実は結構ナーバスな作業なんです。

特に兼業農家では、普段家にいる人(嫁さんとか、お母さんとか…)が水やり当番に任命されていることがほとんどではないでしょうか。

旦那が、職場から嫁さんに

「今日は日(日差し)の強かばってん、お前ちゃんと水ば、かけとるや?(やや、かけていないことが前提のニュアンス)」

「○○時頃、ちゃ~んとかけとります!(アンタに言われんでもかけとるわい、というニュアンス)」

…なんて電話のやりとりは、九州の兼業農家あるあるです(笑)

もうすぐ田植え…という段階の苗です。もう2・3日…というところでしょうか。

苗の大きさもいろいろあって、大きければいいものでもなく、また小さければいいものでもありません。

品種や、その地域の気候・栽培管理方法などにもよりますが、私の所ではだいたい播種から25日~30日前後の、中苗と呼ばれるサイズで植え付けを行っています。主に本葉の枚数や生育具合によって、稚苗~中苗~成苗と呼んだりします。写真は、稚苗後半からギリギリ中苗かな…というところですね。

②田んぼの耕耘・畦塗・代掻き

「耕耘」というのは、田んぼや畑を耕すことを一般的に指す言葉です。また、基本的には乾いた圃場(田んぼや畑の事)に対して行うことを指して言います。トラクターを使って圃場の土を引っ掻き回すことで、雑草(や、その種)を切り刻んで土の中に埋めたり、下層の土を表層側にひっくり返して空気に触れさせ、土壌の微生物のバランスを整えたり、肥料を混ぜ込んだり…と、時期によってさまざまな目的がある作業になります。

我々の地域では、稲刈り後(10月~11月頃)に1度耕耘し、春先まで寝かせ、箱苗を育てている時期(4月上旬頃)にもう一度耕耘するのがオーソドックスなやり方になります。地域によって色々と言い方はあるようですが、この春先のものを「春起こし」なんて言ったります。

でもこの「春起こし」が終わった後、すぐに水を入れられる…わけではありません。もう一つ、「畦塗」という作業が必要です。

「畦塗」は、田んぼの外周部分(畦まわり)を土で塗り固める作業になります。どうしてこんな作業をするかというと、畦周りというのは基本的に、水を張ったときに水漏れしやすい部分だからです。

モグラやヘビが冬眠の為に穴を掘りまくっていたりして、そこが原因で水もれしたりします。ですので、この部分を土で塗り固めてしまうのです。

恐らく、米農家でない方は「???」かと思います。お時間がある方は、ぜひニプロの畦塗機の動画を見てみてください。要は、こういうことなのです(笑)なお、我が家もニプロの畦塗機を使っています。


畦塗りが終われば、後は代掻き作業となるのですが…この代掻きが非常に難しいのです。

代掻きは、田んぼに水を入れた状態で行うのですが…この時に水を入れすぎると、なかなかうまくいきません。目安は、土の8割が見える(2割が水面下)程度です。

我が家では、この写真ぐらいの状態で代掻きをしましたが…正直言えば、もう少し水が少ないほうがいいなぁ…というのが本音です。水を入れるのも、水を抜くのも、結構それだけで時間がかかる作業なので、時には無理やり作業を行うのも、兼業農家の常だったりします…( ノД`)シクシク…

代掻き作業は、通常の耕耘用のロータリー(トラクターの後ろにつける、作業を行う部分のこと)でも可能ですが、代掻き専用のロータリーを用いれば作業性がアップします。下の写真がそれです。ドライブハローといいます。

これをトラクターの後ろに接続し…こんな感じで代掻きをやっていきます。

この代掻き作業も、大きく分けると「荒掻」と「植代掻(上代掻)」とがあって、2回に分けて行うのが本当はいいのですが…我が家では、天候や作業ができる日程の関係で、2回に分けたり、1発でやったり…と、安定しません(^^;)今年は一発でやりました(笑)

田んぼの中は、結構高低差があったりします。この代掻きの作業で最も重要なのは、田んぼの中の高低差を無くし、均一に水が張れるようにすることです。

作業終了後は、こんな感じになります(本音を言えば、ちょっと土も荒いし、高低差ももう少し整えたいのですが…時間がないのですよねぇ…(笑))

なお、代掻きの直後は土がフワフワしすぎていて、田植えに適しません。この状態だと、植えたとしてもすぐに抜けてしまいます。

この後2~3日ぐらい置くと土がだいぶ締まってきて、田植えに適した状態になってきます。そのタイミングが、うまくGWに来るように調整しながら、その前までの作業をやっています(^^)

③田植え

さて、我が家では5月3日~4日にかけて田植えを行いました。なんとか天気が持ってくれたので、よかったです♪

なお、今回は苗箱を約170箱分植えています。最初に書いた”苗箱の重量”の問題は、こういった家から田んぼまでの横持作業や、畦から田植え機への受け渡し作業の時に、地味に影響してきます。

幸い、田植え機のおかげで、田植えだけであれば最悪1人でもできないことはないです。でも、2人、ないし3人ぐらいいるだけで、一気に作業性が向上します。4人以上いれば、使用後の苗箱洗いも同時並行でできたりします。

やっぱ、人数は重要ですね…(^^;)ちゃんと長男と次男も、お手伝い頑張りました♪

せっせか、せっせか


じいじとドライブ

なお、動いているところは、下の動画を見ていただけたら分かりやすいです。我が家のものと同じ機種(我が家はNW5。5条植えの機種です)です。(noteって、自分がとった写真は簡単にアップできるのに、動画はできないんですね…)

最近の田植え機は、田植えと同時に、肥料散布まで行えます。施肥自体は前の機種でも行えたのですが、散布量の管理がややしにくい部分がありました。

それが、去年このタイプに買い替えたところ、前の機種よりも格段に施肥管理がしやすくなっていて、かなり気に入っています。植え付けの精度も非常に良くなっているように感じます。やっぱり、色々進化していますね!

なお、この機種からGPSまでつくようになりました…が、私は使っていません(笑)


④洗車・洗浄

使った後は、ちゃんと洗車を行っていきます。

専業農家はさておき、兼業農家で一番重要なのが、もしかしたらこの洗車作業なのかもしれません。

自動車と比べたら分かりやすいかもしれません。自動車って毎日数時間乗って、10年程度乗りますよね?ところが田植え機なんてのは…年間何日動いているでしょうか…?

兼業農家において、物持ちの良い・悪いを決定的に決めるのは、使用していない際の保存状態にあるといっても過言ではありません。きちんと泥を落とし、しかるべきところに注油し、直射日光に当て続けないようにする…

そういう、保管の基本さえしっかり押さえておけば、よほどのことがない限りはそう壊れたりはしないものです。

でもこの時期、農機具メーカーの修理担当は大忙しです。本当のトラブルは仕方がないですが…実際には単に保管状態が悪いことからくる「しょーもないトラブル」への対応が、たくさんあるようです。

ベルトが切れる、施肥パイプが詰まる、作業手順を守らずに機械をイカれさせる…そういった事がたくさんあるのが、この時期の兼業農家の実情であったりします。

私は性格上、そういう類は「そりゃ、つまらんかろうもん!(ダメでしょ!)」というタイプなので、取説はしっかり読みこんで、メンテナンスをしっかり行うタイプです。

いわゆる、業務用のエンジン洗車機で、泥をズババーっと落としていきます。ケルヒャーなどの家庭用の高圧洗車機も、あれはあれでいい品物なのですが…いかんせん、水量が足りないのです。やはり農機具洗車用としては、こういったタイプのエンジン洗車機に、圧倒的に軍配が上がります。

農業用水路から水をくみ上げ、ズババーっと洗います。

洗車前はこんな感じですが、しっかり洗っていきます。タイヤや植え付け機部分だけでなく、シャーシ下面や駆動シャフト周りの泥を、下側から水をぶっかけまくって泥を落としていき…こんな感じになりました。



うむ、よきかなよきかな(笑)ちなみに、同じようにトラクターやドライブハローも洗っています。

あと、苗箱も洗います。以前は全部、洗車ブラシで手洗いをしていたのですが、ここ最近はこのタイプの苗箱洗い機を使っています。だいぶ楽になりました(^^)


そんなこんなで、何とか無事1回目の田植えを終えることができました(^^)

とはいえ、もうすぐ2回目の苗箱づくりが始まり、怒涛の草刈りシーズンに突入します…休むまナシです、ホント(^^;)

次回の農事の記事は…何のことを書くのか、全くの未定ですが…田んぼの事か、畑の夏野菜の事か、どちらか書こうと思っています。

では、次回もお楽しみに!(笑)

・・・おわり

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