農業経営における最重要課題:赤字経営を回避するために



農業経営において最も重要なことは、経営がマイナスにならないこと、つまり赤字経営を避けることです。この基本を守ることが、持続可能な経営の第一歩です。農業法人の場合、個人の所得と生活費が切り離されるため、経営を厳格に監視する目が養われます。個人の消費と経営を分けることができる一方で、個人経営の場合は生活費との区別がつきにくく、知らず知らずのうちに経営が悪化するリスクがあります。したがって、法人化していない個人経営の時こそ、しっかりと経営を学ぶことが不可欠です。

融資と支払いに対する厳格な管理

マイナスにならない経営を実現するために最も重要なことは、融資や支払い期限に対して厳格であることです。融資を受けた場合、返済は法人の場合は税引き後の利益から行われますが、個人経営の場合は税引き後の所得から返済が求められます。個人経営では、税引き後の所得から生活費を差し引いた金額が実質的な所得となり、その所得から融資の返済が行われます。返済後に残った金額が利益となり、この利益が貯蓄や次年度の農業への投資資金となります。

計画的な融資返済の必要性

融資の返済は主に設備投資に対するものであり、金額が1000万円以上で、返済期間が12年以上に設定されていることが一般的です。特に初期の農業経営では、年間の融資返済額が100万円程度になることが想定されます。返済100万円、次年度への農業投資100万円、生活費350万円、税金、専従者給与100万円を合わせると、所得830万円程度が必要になります。これは非常に厳しい数字です。

後払いのリスクと現金主義の重要性

農業経営においては、運転資金として融資を受けることが難しいため、基本的には自己資金での経営が求められます。このとき、後払いによる取引は農業経営を赤字に陥らせるリスクを大幅に高めます。後払いに頼ると、将来の不確実な収入を当てにした支払いが発生し、所得830万円以上が確定しない限り、ハイリスク・ハイリターンの経営となります。農業は自然環境に依存しているため、計画通りに進むことは稀です。もし計画通りにうまく進んでいる場合、それは豊作による価格下落のリスクが伴うことを意味します。

堅実な経営力と規模拡大の考え方

このようなリスクを避けるためには、非常に慎重な経営力が必要です。まず、赤字を出さないためには、手持ちの資金内で資材を購入し、経営を行うことが大切です。後払いではなく、常に先払いを基本とし、その他の支払いについても、請求が届いたらすぐに対応し、支払い漏れを防ぐことが重要です。これを徹底できない場合、そも

そも農業経営は成立しません。お金の流れを理解し、栽培技術を習得することで、初めて農業経営の力がつきます。

そして、生活費以上の利益を上げることができたときに、初めて規模拡大を考えます。ただし、大規模な拡大ではなく、1.1倍程度の規模拡大を毎年続けていくことが理想です。毎年1.1倍の規模拡大を30年続けると、規模は約17.45倍になります。10年目では約2.59倍、20年目では約6.73倍に成長します。例えば、売上が1000万円の場合、10年目には約2593.74万円、20年目には約6727.50万円、30年目には約17449.40万円に達する計算です。このようなスピードで成長できれば、非常に順調な農業経営と言えます。しかし、数年で数億円規模の経営に成長させることは、破綻のリスクが高まるため、慎重に避けるべきです。

まとめ:現金主義と慎重な経営

最後に、農業経営においては現金主義を貫くことが大切です。堅実な資金管理と現実的な目標設定を行い、自然環境に合わせた経営を行うことで、安定した成長を続けることが可能になります。赤字経営を避け、着実に成長するためには、慎重な計画と確実な実行が求められます。

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