土作りのスペシャリスト潮田武彦(農業コンサルタント)

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菌根菌と根粒菌の違い|

菌根菌とは 菌根菌は、植物の根と共生することでその成長を助ける微生物です。主に外生菌根菌と内生菌根菌に分類されます。外生菌根菌は、樹木の根の外部に菌糸を広げ、キノコを形成することがあります。一方、内生菌根菌(アーバスキュラー菌根菌、AM菌)は植物の根内部に侵入し、細胞内にアーバスキュールという構造を作り、土壌から効率よくリン酸や水分を吸収するのを助けます。この菌根菌は特に野菜や果樹に有効で、農業において重要な役割を果たしています。 根粒菌とは 根粒菌はマメ科植物の根に共

    • 変化の時代における農業経営の未来

      世界的な変化とインフレの影響 コロナ禍を経て、世界は急速な変化の渦中にあります。特に、インフレの進行は我々農業者にとって重大な影響を及ぼしています。インフレが進行する中で、同じ面積と同じ経費で栽培した作物の売上は、毎年1.05倍から1.1倍程度増加する可能性があります。 市場の特性と経営の課題 しかしながら、市場は物価の変動に対して鈍感です。入荷量が多ければ価格は下がり、少なければ価格は上がるという原則は変わりません。一方で、ビニールハウスの価格は2年前と比べて1.5

      • 高品質人参の販売戦略と市場実験

        1. はじめに 私は以前、人参を1袋3本100〜600円で販売した経験があります。最終的には常時600円で販売していましたが、そこに至る過程で様々な実験を行いました。今回はその経験とデータを共有し、皆様の何か役に立てば幸いです。 2. 販売価格の変動と販売数の関係 まず、価格設定と販売数の関係についてのデータです。 100円の場合: 1店舗で1日200〜400袋売れました。 200円の場合: 1店舗で1日100〜140袋売れました。 250円の場合: 1店舗で1日

        • 効果的な作物経営:土作りと直販の組み合わせ

          1. はじめに ある作物の経営において、土作りと直販を組み合わせた場合の効果について考察します。以下に具体例を示します。 2. 土作りを行わない場合 まず、土作りを行わない場合のケースです。この場合、5反の農地で年間売上が3000万円となります(①)。しかし、土作りを行っていないため、土壌の質が安定せず、作物の品質や収量にバラつきが生じる可能性があります。また、農薬の使用量が増加し、長期的には土壌の劣化が進むリスクもあります。さらに、作物の品質が良くなく、人件費がかさむ

          「農業の核心:土作りとその重要性」

          第1章: 父から受け継いだ技術 私の栽培技術は、先代の父から譲り受けた技術をもとに、自分独自の栽培技術を加えたものです。父の技術は、50年にわたる全国の農業名人と共に培ってきた技術で、過去の日本の農業の集大成です。それをさらに発展させた私の技術は、農業者が80年という人生を費やしても到達することができない技術まで昇華させました。 第2章: 技術伝承の理由 私が農業コンサルタントとしてこの技術を農業者に伝える理由は、自然相手の栽培の方の大変さを減らしたいことと、販売や営

          直販比率を高めるための挑戦と成功の私が農業で行ってきた25年の軌跡

          スーパーマーケットとの交渉 直販コーナーを設けてもらうために、スーパーに直接交渉しました。私の頃は、直売所がなかったため、無理やり店舗と交渉して直売コーナーを設置してもらいました。いまは直売所に出すのは何の努力もしなくても出品できますが、その当時はこういうことをする農業者はあまりいませんでした。先行者利益を享受することは農業に限らずビジネス全般に言えることだと思います。誰もやっていないことに挑戦することは大切です。我々が努力したからこそ、今の直売所の形式が日本全国に誕生し

          直販比率を高めるための挑戦と成功の私が農業で行ってきた25年の軌跡

          農業者の「売り先がない」という現状への考察

          はじめに 現代の農業において、適切な売り先を確保することは、もはや常識と言える。しかしながら、いまだに「売り先がない」と嘆く農業者が存在する。JA全盛期が終わりを迎えた20年前ならば理解できるが、現代においてそのような状況に陥るのは、怠慢とも言えるだろう。本章では、その原因と解決策について考察する。 1. 現代の農業における常識 現代の農業者は、適切な売り先を確保するか、再生産可能な価格で要望を受けた場合に生産することが常識となっている。市場やJAに依存するだけではな

          農業者の「売り先がない」という現状への考察

          間違った技術と農業者の苦悩

          間違った技術と農業者の苦悩間違った技術の普及とその影響 最近の農業界では、間違った考え方に基づいて開発された技術がさらに誤った方向に進み、農業者に多大な影響を与えています。その最たる例が、ミニトマトやトマトの栽培において行われている2条定植と点滴チューブを使用した栽培方法です。これは、トマトの栽培や生理を無視し、農家本位の誤った栽培方法と言わざるを得ません。 2条植点滴栽培の問題点 ミニトマトやトマトの2条植点滴栽培は、1条植灌水チューブ栽培に比べて収量、品質の両面で劣

          高度化成肥料と低度化成肥料の使い間違いについて

          序章: 肥料の基礎知識 肥料は作物の成長に欠かせない重要な資源です。肥料には様々な種類がありますが、大きく分けると「低度化成肥料」と「高度化成肥料」に分類されます。それぞれの肥料は特定の状況や目的に応じて使い分けることが重要です。しかし、最近ではこれらの肥料の使い間違いが増えており、農業の現場で問題となっています。 低度化成肥料とは 低度化成肥料とは、主に10-10-10以下の成分比率を持つ肥料を指します。この肥料は成分の放出がゆっくりであるため、作物の元肥として使用さ

          高度化成肥料と低度化成肥料の使い間違いについて

          「継続的な土作りによる圃場の進化と作物生産の飛躍」

          章題名 序章:圃場の現状と土作りの重要性 第1章:5年目、6年目の成功事例 第2章:土作りによる目に見える成果 第3章:反収と品質の飛躍的向上 第4章:長期的な圃場改善の経緯と効果 第5章:圃場面積の最適化と生産性の向上 第6章:未来への展望:さらなる研究と挑戦 文章 序章:圃場の現状と土作りの重要性 近年、土作りを継続的に行うことの重要性が再認識されています。コンサル農家さんの圃場を訪れ、コンサルティングを受けてから、5年目、6年目にわたって同一圃場で土

          「継続的な土作りによる圃場の進化と作物生産の飛躍」

          日本における栽培方法の違いとその特徴

          はじめに 慣行栽培とは 有機栽培の意義 自然栽培の特徴 各栽培方法の比較と選び方 文章 1. はじめに 日本の農業では、慣行栽培、有機栽培、自然栽培の3つの主要な栽培方法が存在します。それぞれの栽培方法には独自の特徴と目的があり、農産物の生産において異なるアプローチを取っています。本章では、これらの栽培方法について詳しく説明し、消費者が自身の価値観に合った選択をするためのガイドラインを提供します。 2. 慣行栽培とは 慣行栽培は、日本で最も広く行われている農

          完熟堆肥の重要性:健全な農業生産への第一歩

          はじめに 完熟堆肥の施肥は、健全な農業生産を支える基盤です。堆肥の熟成度合いは、植物の生育と土壌の健康に直接影響を及ぼします。本章では、完熟堆肥の重要性と未熟堆肥によるリスクについて解説します。 第1章:完熟堆肥の効果と役割 1.1 完熟堆肥の特徴 完熟堆肥は、完全に分解された有機物で、土壌に豊富な栄養素を提供します。また、土壌構造の改善、水分保持能力の向上、微生物の活動を促進する効果があります。これにより、植物の健全な成長を支え、病気やストレスに対する耐性を強化しま

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          負けない農業経営:持続可能な農業のための実践ガイド

          はじめに 農業経営において「負けない」ことは、持続的な収益と安定した事業運営を確保するために不可欠です。農業は天候や市場の変動に左右されやすいため、計画的かつ堅実な経営戦略が求められます。本ガイドでは、現代の農業経営において重要なポイントと具体的な対策について解説します。 第1章:経営の基本姿勢 1.1 資材購入の原則 農業経営で資材を購入する際は、基本的に現金払いか前払いを徹底します。これは、後払いによる資金繰りの悪化を防ぐためであり、支払いの確実性を高めます。また、資金

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          急激な農業規模拡大のリスクとその解決策: 持続可能な経営のための教訓

          目次:はじめに 急激な規模拡大の典型的な事例 規模拡大の落とし穴と収穫逓減の法則 地道な土作りと持続可能な経営の重要性 規模拡大後の経営改善施策とその問題点 まとめ: 持続可能な農業経営のあり方 1. はじめに 農業経営において、急激な規模拡大はしばしば経営の脆弱性を高め、収益の悪化や倒産のリスクを増大させます。本記事では、よくある失敗事例やその背後にある要因について解説し、持続可能な農業経営のための適切なアプローチを示します。 2. 急激な規模拡大の典型的な

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          「ミミズが教えてくれる畑の成熟度:最適な土壌への道しるべ」

          はじめに:ミミズと土壌の関係 土壌の健康状態を理解する上で、ミミズは重要な指標となります。ミミズの存在は土壌の改善プロセスを示し、最終的に土壌の成熟度を示すバロメータとして機能します。本記事では、ミミズの役割を通じて、良い畑作りのプロセスを解説します。 ミミズが多い土壌:未熟な畑のサイン ミミズが多く見られる土壌は、まだ改善の途中にある未熟な畑のサインです。ミミズは未熟な堆肥や有機物を餌にし、土壌を豊かにする過程で活発に活動します。この段階では、ミミズの活動が盛んである

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          北海道の大規模農業に対する危機感

          序章 北海道は日本の農業生産の要であり、平均20〜30町の面積を持つ1農家あたりの売上は5000万から数億円に達しています。主要作物としては、玉ねぎ、にんじん、麦、大豆、ビート、そばなどが挙げられ、長らく日本の農業生産額1位を誇り続けています。広大な面積と豊かな土壌を活かし、効率的な農業を展開していますが、その反面で新たな課題が浮き彫りになってきています。 北海道農業の現状と課題売上と反収の現状 北海道の農家の売上は高いものの、反収(単位面積あたりの収益)は平均25万円