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ハドソン川の奇跡

 という映画を見た。
 鳥の群れを吸い込んだアメリカの旅客機が航空不能になる。機長は近くの空港に着陸許可を求めたものの、燃料が残りわずかなり、空港への着陸を断念、ハドソン川に強行着水して乗客、乗員が全員助かったことで機長のサリー(「サリー」は映画の原題になっている)は英雄になった。しかし安全委員会が、水中から引き上げたエンジンを調べたところ、完全にダメになったわけではなく、空港に着陸することも可能だった。だとしたら、サリーの判断は危険な冒険だった可能性があるとして、安全委員会は、サリーと副機長を召喚、査問会を開く。安全委員会はシミュレーターに二人の現役のパイロットを乗せ、当時の条件下で飛行させ、無事に着陸できたことを示し、然り而してサリーの判断はうまくいったからいいものの、危険過ぎたと主張する。これに対し機長は「我々は緊急事態下の操縦席にいるので色々と時間がかかる。せめて一分、時間を長くしてくれないか」と要求すると査問委員会は「三十秒ならいい」と言う。横にいた副機長が「我々は二分かかった!」と言うと、サリーは「三十秒でもオーケーだ」と言う。つまり自分たちは、それくらいせっぱつまっていたのだ。

機長を演じたトム・ハンクスと、監督のイーストウッド
実際の機長、サリー

 果たして、たったの三十秒だが、判断の遅れた飛行機は空港の手前のビル群に突っ込んでしまう。査問委員会は「あなたは正しい判断をした。真の英雄だ」と言う。質問責めから解放された機長は、副機長に「真の英雄は乗客

事故現場で救出に駆けつけた民間のボート

と救援に駆けつけてくれた人たちだ」と言う。
 ・・・という映画で、実際に映画を見た安全委員会は「我々はあんなに意地悪ではなかった」と言ったそうだ。イーストウッドにしてみれば、機長役は老け役でかつ地道な演技で「これ、本当にトム・ハンクス?」と思ってしまった。監督はクリント・イーストウッド。イーストウッドは南アフリカのマンデラ大統領のことも映画にしているし、案外、社会派だ。
 しかし、日本だったら「うまくいったから、それでいいんじゃやないか」で済んでしまうだろうし、うまくいかなかったら「秘密にしておこう」ということになる。国会でも「本当のことを言って貰うために非公開にする」なんて訳のわからないことがまかり通っている。だとしたら「公開の場では嘘をつきます」と、白状したようなものだ。


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