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オープンメタバース・サマーサミット2023まとめ

 7月28日(金)と29日(土)、clusterで初の主催イベント「オープンメタバース・サマーサミット2023」を開かせていただきました。
 イベントの目的は、マルチプラットフォームというメタバースの形態を提案することと、メタバースの具体的なあるべき姿を多角的に検討することでした。
 この記事では、マルチプラットフォームというメタバースの形態について改めて説明させていただき、さらに、2日間で参加者の皆さんから上がった意見や討論の内容を紹介します。

提案:マルチプラットフォームのメタバース

 現在の「メタバース」は、それぞれが別個のプラットフォームになっています。cluster、VRChat、Neosなどがありますが、簡単には互いに行き来はできませんし、文化も違います。

 オープンメタバースでは、これらのプラットフォーム間の互換性が高くなります。「オープンメタバース」で調べてみると、多くのサイトで、「同じアバターを別のメタバースで使える」ということが書いてあります。

 私は、この「オープンメタバース」をもう少し拡張して考えたいと思います。
 そこで、「マルチプラットフォームのメタバース」を提案します。現在の「メタバース」は、一個のプラットフォームそれぞれを指しますが、マルチプラットフォームのメタバースでは、プラットフォームが集まった全体を指して「メタバース」と呼びます。

 このメタバースには、clusterなどのVRプラットフォーム以外のサービスも組み込まれます。「完全なメタバース」を一つのVRプラットフォームで実現するのは困難です。GAFAのようなビッグテックが莫大なリソースを投入して作ることも不可能ではありません。おそらくそういう道もあるでしょう。
 ですが、ユーザー主導で「完全なメタバース」を実現しようと思った場合、多数の運営者でいくつものサービスを組み合わせた方が現実的です。そのためには、いくつかのVRプラットフォームを中心に、色々なサービスを接続した方がいいと思うんです。収益性の話は一旦置いておくとして、マルチプラットフォーム・メタバースではそれぞれのプラットフォームを結合する規格が必要になります。

 そこで、それぞれのユーザーのアカウントを統一します。一つのアカウントに様々なサービスが紐付いていて、同じアカウントを使って、メタバース内の全てのサービスを利用できます。
 ここまでが、私が構想している「オープンメタバース 」です。

意見と討論

 ここからは、2日間で上がった、参加者の皆さんの意見や、討論の内容を紹介します。完全にメモが取れているわけではないので、記憶の限りで抜粋します。

・フルダイブ(全感覚没入)技術と「意識のアップロード」

 現行のメタバースで最も没入感が高いアクセス手段は、HMD(VRゴーグル)とトラッキングセンサを用いることでしょう。
 しかし、独自のコミュニケーションの様式が生まれているとはいえ、物理現実の言語外コミュニケーションの域には達していません。
 そこで、フルダイブ技術が実用化されれば、より物理現実に近いコミュニケーションをとることができるのではないか、というものです。現在進んでいる研究では、ニューラリンク社などがあるようです。

 また、その先には「意識のアップロード」があるのではないか、という意見もありました。肉体を捨てて「思念体」となる、というものです。実は、私もこれには同意見です。

・Web3と未来のメタバース

 メタバースと併せて語られがちなWeb3ですが、現在の主流な「メタバース」への実装はあまり行われていません。

 しかし、いつか突き当たる問題になるでしょう。
 メタバースの規模が今後拡大し、(『竜そば』に登場する仮想空間"U"のように)数十億人のユーザーが存在するようになると、「ユーザー情報の管理者は誰にするか?」という問いが発生します。
 Web3では、ユーザーの情報はサービスの運営者ではなく、ユーザー自身が管理します。

 また、メタバースが動くサーバーの管理者と場所の問題もあります。メタバースへの権限をある一つの主体が握ってしまうと、現在のWeb2のようなユーザーや開発者への不利益になってしまう、という懸念はよくみられます。

 2日目には、「サーバーを南極に置いてはどうか」という少々突飛な提案がありました。南極は国家の主権が及ばないため、特定の国家の支配を受けない、というものです。
 南極では冷却や騒音の問題がない、というメリットが上がりました。

 しかし、これには問題が2つありました。
 1つ目は、資金源の問題です。南極の大規模なサーバーセンターまで光ファイバーケーブルを引き、管理するだけの費用を(マスク氏のような)大富豪が負担した場合、その権限も出資者が持つことになりかねません。これでは、誰かの影響力を避けて南極に置く意味がなくなるのです。
 2つ目は、地政学的な問題です。南極がどの国家にも属さないので、サーバーセンターへの物理的な攻撃のリスクも高くなるのです。

 ある意見では、「ブロックチェーンは個人間の公平性、オープンメタバースは国家間の公平性」を保ちます。

・世界規模のメタバースの治安維持を行うのは誰か

 数十億人が存在する将来のメタバースでは、誰が犯罪を取り締まるのでしょうか?

 ある意見では、国際規模のメタバースは国際機関の管理下に置かれます。プログラムによって警察機能を自動化する、という提案もありました。
 私は、成田悠輔さんの「無意識データ民主主義」をメタバースに導入することを提案しました。

・メタバースは「国家」になるか

 メタバースは国家のような存在になるのでしょうか?
 私の考えでは、そうはなりません。

 近代国家の3要素は、「国民」「領域」「主権」です。
 メタバースには地理的な領域がありません。物理法則が許す限り、規模はどこまでも拡張できますし、「メタバース」の「内」と「外」を明確に区切る境界線も引くことができないでしょう。
 また、メタバースの「国民」にあたるユーザーは、現在の「国家」のように固定的なものではないはずです。大規模なメタバースが実現するには、メタバースは「敷居の低い」ものである必要があります。

・プラットフォームで起こる現象の構造(?)とオープンメタバースの主体

 これは私の考えですが、SNSで起こる現象は、この構造で説明できるのではないでしょうか?
 例えば、Twitter(X)で起こる(「炎上」のような)現象は、LINEでは起こりません。(起こるのかもしれませんが。)これは、Twitter(X)は外部への発信、LINEは知人同士の連絡に使われるようデザインされていて、それが各プラットフォームでの「分化」が形成されるもとになっているからだと考えられます。

 プラットフォームのデザインは、現在はほとんど運営者によって行われます。しかし、オープンメタバースではユーザー主導で行うべきだと考えています。

 これは、先述の「無意識データ民主主義」を物理現実に先んじてメタバースに導入することで実現できると考えています。

終わりに

 後半、私の考えを述べる場になっていて申し訳ありません。このあたりの話は後々、改めて説明しようと思っています。

 この記事を読んで、皆さんもオープンメタバースの未来について、考えていただければ幸いです。

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