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君はもう「春はまだか。」を読んだか


「春はまだか。」読み応えたっぷりのボリューム。

青春が輝いていたと真っ直ぐに言える奴は帰れ 

 青春って思いだしたら身悶えして「殺してくれ!」と叫びたくなることばかり。キラキラ*アオハル♪なんてクソ喰らえじゃ木瓜が…という人も多いのでは?だからこそ青春と距離を置き、【無かったこと】にしている人は決して少なくないはず。しかし、それは突然ちょっとした弾みでやってくる。あの頃流行った音楽、夕方の空模様、すれ違う高校生の姿、金木犀の香り、そんなトリガーに触れてしまったら最後、もう身悶えするしかない…。だから、なかったことにしちゃいけないんです、たぶん。

では、どうするべき?それは、笑い飛ばしてもらうのです。なんてことなかったね、みんな分かるよね、そんな風に死にたくなる過去を「大したことないよ」と風化してくれるものと出会うべきです。
そこで今回オススメするのは、凸ノ高秀先生の「春はまだか。」

「春はまだか。」ざっくり紹介

 男子校に通う陸奥くん、真木くんが主にファミレスで恋愛について、ダベリ妄想し、時に暴走するコメディ作品。この度凸ノ先生が紙媒体にまとめてくださりました。嬉しい!!
 もともとWEB媒体で連載されていた時にも読んでいましたが、今回、改めて紙で「春はまだか。」を熟読したことで、先生の人間への解像度の高さに、当時の何十倍も感動しました。今日はその魅力を書き出したい。

ほのぼのコメディじゃないからな、そこはちゃんと解ってくれ

 凸ノ先生の作品の最大の魅力は人への【解像度の高さ】だと思います。他の作品でもその解像度高さゆえ、時に可愛いはずのヒロインに人間の汚さが見えたり、サイコパスな登場人物は最初から最期まで本心が読めない不気味な人物だったり、主人公が傷つくところはこちらまで嫌な気分になるようなものだったり…。普段から相当人間観察と取材を重ねられているんだと感心します。
 今作は発表こそある程度前のものですが、最近の作品に劣ることなく、キレキレな台詞回しや陸奥くんや真木くんなどの男子校生徒たち(および童貞たち)のキャラクターの設定や表情に、笑いと共感からずっとニコニコして最後までノンストップで読めます。ついでに当時のWEB版と異なり、ぐっと近づいてコマの端まで覗き込めるので、読者の私自身もより解像度高く作品に没入出来ましたので、やはり紙の本は偉大だなと改めて感じたところです。
 個人的には文化祭後のLINEスタンプは何を送ればいいのかとトビセンも交えて話す回が大好き。「シュールに逃げるな!」女の子に好かれる道を探るばかりに迷走する姿もいいですが、それを大人として一喝する素晴らしい台詞です。
 作品の全体のハイライトはその文化祭だと思いますが、もちろん彼らが運営するメイド喫茶にまつわるメインストーリーも良かったのですが、今回注目したいのはサイドストーリー。文化祭の中で自分が描いたと主張できないけど、絵が褒められて嬉しがっている美術部男子とか、バンドの演奏で悦に入っているけど全然周りが盛り上がってない姿とか、凸ノ先生はきちんと青春の青臭いところや暗いところも誤魔化さずに描いてくださるので、ここはニコニコしながらも、己の高校時代の陰の気が湧き上がって苦しかったです。しかしその青春のエグみもしっかりと笑いに昇華しながら描いてくださるので、少し過去の過ちが浄化されたかもしれません。ありがとうございます。
 この気持ち、みんなで共感しあおうや!!
(あと、真木くんの女装姿がシンプルに可愛かったです。みんな可愛いんですが、特に。妹と並んだときに更に良さが増しました。)

結論 凸ノ高秀という人はヒトタラシ

 思えばオモコロ時代から、私は先生の描く人が好きなんですね。可愛くて艶っぽくて阿呆で鬱陶しくてカッコよくて、魅力がいっぱいに詰まってます。
 そして、ラジオ漫画犬。やはり凸ノ高秀という人を語るうえで欠かせない単語です。毎週木曜日の深夜に心の裏庭に空いた穴に放るしか出来ないような声を、きちんと拾ってしっかり答えて、そして笑い飛ばしてくれる。毎週そういうお人柄も観ているし(聴いているし)、イベントでは御本人に会えば、当てられちゃうような色気と侠気があって、参ってしまいます。マンガ家のイメージを覆される…!
 凸ノ高秀先生、これからもますます魅力的な人々を紡ぎ出してくれると信じておりますので、どうぞお身体に気を付けつつ、漫画を描いてください。応援しています!!

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