【牛島薫子のそんな資格とってドーするの①「危険物取扱者」】
【牛島薫子のそんな資格とってドーするの①「危険物取扱者」】
最初はほんの小さな気持ちでした。
それは「炎の扱う能力者を主人公としたファンタジー小説を書きたい」というもので、しかし僕はガチファンタジーはとても苦手だったので「うーん。それじゃあ、ガソリンとか引火性がある薬品を利用した科学バトルにしようかな」と、そんな雑な設定で小説を書き始めたら容易に行き詰って「そりゃそうだ!僕ガチガチの文系だもん!」となったので「仕方ねぇ!そんなら勉強したるわ!」と、燃える物質について専門的な知識を得られる学問の領域ってなにかな。できれば難しくないのがいいんだけど……。
で、行きついたのが「危険物取扱者」という資格を勉強することだったんですね。
ほんで(後に紹介しますが)乙四で止めておけばいいのに思いのほか勉強が楽しかったので最終的に甲種まで取ってしまって、それから「資格を勉強することは最高にアメイジングな趣味じゃねぇか!?」と気づきまして、資格取得を趣味にしてしまいました。
そのため、僕は現在様々な資格(文系理系問わず)を勉強しておりまして、受験資格であきらめたり難しすぎて挫折したりもあるんですが、まぁ、それなりに資格に詳しくなったのでそれをタラタラ紹介する文章を書こうと思いつきましたのが、この「牛島薫子のそんな資格とってドーするの?」シリーズでございます。
独断と偏見、というより各々の資格を取得された方と話したことがないので本当の実際はどうかは不正確なのですが、自分なりに調べた範囲では間違ったことは言わないように気を付けています。ですのでこれを元にして知識を蓄えるというより「へぇ、そんな話もあるのねぇ」ぐらいの、読み物として受け取ってくだされば嬉しいです。
もしこのシリーズで「ぼくわたしこの資格を持ってるわ!」という方がいらっしゃったら、本当の実際をコメントしていただけると喜びます。
前置きが長くなりましたが、要するに「資格についておじさんが色々と語る」と言うニッチな話です。やっとお話を始めたいと思います。
第一回目は僕が最初に取得した「危険物取扱者」について。
危険物取扱者は国家資格です。
「消防法に定められる『危険物』を取り扱う」資格であります。
この危険物とはどこからどこまでの範囲を指すかと言うと、法別表という表に一覧として挙げられています。有名なところで言うと「ガソリン」とか「ニトロ化合物」などが危険物です。消防法に定められている危険物は「(常温で)固体または液体」と定められているので、プロパンガスなどの気体は危険物に含まれません。引火、爆発する危険のある気体はまた別の資格で取り扱われることになります。
危険物取扱者には甲種・乙種・丙種の3つがあります。
このうち甲種は「全ての危険物を扱える」資格です。
乙種は危険物を性状別に6つ(6類)に分けて、取得した種類のみ扱える資格です。乙種で一番有名なのは「乙種4類」という資格です。4類は「引火性液体」を扱う資格で、ガソリンやアルコールなど身近な危険物もこの類に入っています。危険物を扱う工場やガソリンスタンドの80%以上はこの「乙4」でカバーできるので、一番人気の資格となっています。
丙種は乙種4類の内の限られた引火性液体を扱えます。(ガソリン・軽油・灯油など)
乙種・丙種には受験資格がなく誰でも受けられます。
年齢制限もないので小学生でも受験することができます。(実際に小学生で乙4に合格した子のニュースを以前見ました)。
しかし甲種だけは受験資格があり、大学で化学系の単位を取得していたり、化学系の修士・博士号を持っていなければ受験できません。その他にも乙種の第1~第6類の内、4つ以上取得していれば受験資格ができます。多くの方は乙種を4つ以上取得して受験するようです。僕もそうでした。
ところで危険物取扱者はいったいどんな仕事をするのでしょうか。
多くのイメージとして「ガソリンスタンド」があるでしょうが、そしてそれは確かに合っているのですが、それだけではありません。
危険物を取り扱う場所は大きく分けて(この辺読まなくていいですよ)「製造所・貯蔵所・取扱所」の3つに分かれています。そして貯蔵所は「屋内・屋外・屋内タンク・屋外タンク・地下タンク・簡易タンク・移動タンク」取扱所は「給油取扱所・販売取扱所・移送取扱所・一般取扱所」と、かなり細分化されており、ガソリンスタンドはこの内「給油取扱所」ですから、その内のひとつでしかありません。さらに工場なのか、化学プラントなのか、保有施設なのか、それによっても異なるので危険物取扱者の働き先は多岐にわたります。
危険物取扱者はその中で「立ち合い」としての働きをします。
立ち合いというのはおそらく危険物取扱者資格の独特な表現で、行為そのものは「監督」とか「監視」とか、なんなら危険物を正しく取り扱うようにする「指導」的な意味合いも含まれています。
実は危険物を扱うだけなら無資格者でも(誰でも)できます。石油ストーブに灯油を入れるためにわざわざ危険物取扱者の立ち合いなんてありませんよね。セルフスタンドでガソリンを自分で入れられるのもこのためです。しかし自動車への給油行為は「危険物取扱者の立ち合いのもと」で行われる必要があります。セルフスタンドでは必ず事務所に誰かがいますが、それは危険物取扱者でなければなりません。(立ち合いができるのは乙種以上)。立ち合いがあってはじめてガソリンを扱うことができるのです。
工場や化学プラントでも同じで、全員が全員、危険物取扱者を持つ訳にはいきませんから、一般の従業員は危険物取扱者の立ち合いのもとで危険物を扱います。(つまり危険物取扱者がいないと仕事ができない)。
危険物取扱者は危険物を正しく運用する監視員のような働きをしているのです。
危険物取扱者の勉強をしていて一番「おもしろいな」と思ったことは「引火点」そして「自然発火」でしょうか。
たとえば気温10℃の中、灯油を入れたポリタンクにマッチを入れるとどうなるでしょう。正解はマッチの火が消えるです。しかしもし灯油ではなくガソリンだったら大爆発します。なぜでしょうか。
引火性の物質には「引火点」という概念がありまして、引火性の物質のほとんどは「物質そのもの」が燃えているのではなく、物質から発せられた「蒸気」が燃えています。引火性液体によってその蒸気を発せられる温度が異なるため、灯油では火が点かずガソリンでは点く訳です。(ちなみに灯油の引火点は約40℃なので夏場は場合によって火が点きます。ガソリンはマイナス40℃までなので北海道の真冬日でも平気で火が点きます)。
「自然発火」は火源がなくても自然に燃え上がることです。よくオカルトやファンタジーの世界で活躍する概念ですが、実際に存在します。たとえば黄リンという物質は空気中で激しく酸化して勝手に燃え上がってしまいます。そのため水中に保存する必要がある「自然発火物質」です。反対にリチウムは水と反応して燃える性質を持っているので、消火に水が使えない物質です。(リチウムイオン電池やバッテリーを備えた機器は家庭ごみで特別に扱われるのはこういう理由です)。
他にも「酸化熱」で自然に火災が発生する危険があります。たとえばアマニ油に代表されるような乾性油を多量に含んだボロ布などを風通しの悪い場所に大量に積み重ねておくと、酸化してその熱で自然発火することがあります。放火の疑いがなく、さらに火源がないのに火災が起きるなんて謎……なんてニュースを時折目にしますが、こういう場合は「自然発火」が原因となる場合があり、特に油を使うような食品製造会社で不審な発火がある場合は「不衛生な場所やったんかなぁ」と、なんとなく思う訳です。
このように勉強していてとてもおもしろい資格なのですが「意外に難しい資格」でもあります。実はこの資格、乙種レベルだと工業高校の生徒も受験します。そして「ガソリンスタンドのお兄さん」というイメージも強いため「それほど難しくないんじゃねぇの?」と思う人が結構います。
この資格をYouTubeで検索すると有名ユーチューバーが「1週間で合格できた」とする動画もあるため「なんだ、それぐらいの勉強で済むのか」と勘違いする人も出てきます。
確かに丙種は簡単です。僕も本を一冊読んだけで満点で合格しました。
しかし乙種以上はそれなりに勉強しないと「絶対に」落ちます。
なぜなら「物理・化学」の問題が平気で出題され、molなどの文系卒倒の単位も頻出するからです。化学系大学出身の「化学まかせろマン」も、複雑な法令分野を暗記できずに普通に落ちます。平均50時間くらいで乙種は合格できると言いますが、それは高校や大学で化学分野が得意な人で、かつ、頭のよろしい人です。普通の人なら70時間以上は勉強しないと落ちます。
乙種4類の合格率は毎回40%を切ります。(これはまぁ、受験資格がないのと高校で半強制的に受けさせられた不勉強な学生がそれなりに多いという理由もあるのですけれどね)。しかし、100時間未満の勉強量で合格できる国家資格は意外に少ないものです。
しかし、僕としては「これから難しい資格(宅建や電験など)を受ける前の前哨戦」として危険物取扱者を取得することをオススメします。勉強しなくちゃ絶対に落ちますが、勉強したら絶対に合格できます。(甲種はちょっと難しいです)。受験料も5000円しないので「勉強したら合格する」という自信をつけるために、みなさん受験してみてはどうでしょう。
国家資格って響きがいいんだよな、これ。
まとめ!
危険物取扱者は国家資格。
危険物をいろいろ取り扱えるよ。
仕事先は実はたくさんあって就職に困らないよ。
(給料は高くないです)
難しい資格を取る前にこれを合格しておこう!
乙4(人気の資格)は合格率40%↓ 勉強しろよ!
おわり
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