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舞台『広島ジャンゴ 2022』

2022.04.13

WOWOWライブ配信


ストーリーとか調べずに、ビジュアルだけ見て、なんか鈴木さん馬になってるし「コメディ系かな?」とか思ってたけど、西部劇パロディーにした、ごく身近にある、誰も感じたことがあるだろう「生きづらさ」が描かれていた。

戯曲の作・演出は第53回岸田國士戯曲賞を受賞『まほろば』を書いた蓬莱竜太 さん。
まほろばの時もそうだったけど、何気ない日常や生活を切り抜くお話が素敵。そこで取り上げられた問題や課題について、生きづらさを感じながらも、自分だったらどのような選択をするのかを問いかけてくれる。
そのようなことを今回は西部劇パロディーを交えて、時には不条理なことへの怒りををラップに込めて面白おかしく訴えかけていた。

会社のはみ出し者と、やっかい払いを押し付けられた者。
One for Allが生み出した、集団心理の恐ろしさ。
不義の行いや言葉によって支配する者と、それに苦しむ者。
憧れのヒーローでありたいと願うも、不条理な世の中に押しつぶされる者。
見て見ぬ振りをして生きていく者、正しいことを選ぼうとする者。
自分で自分の命を絶つ人、大切な人のためなら自らを犠牲にする人。

One for Allが別に悪いことではない。
ただ、会社の習わしだからとか、休みでも義務だから絶対参加しないといけないとか、会社のみんなは家族同然だから当然でしょ?みたいな、1つに固執して他は悪という考えになってしまうことがあるかもしれないという注意喚起。
「なんであの人はいつも、、、」と思うことはあるかもしれないけど、はみ出し者にはその集団での生きづらさや、はみ出し者にならねばならない理由があるのかもしれない。
その理由や、その人自身を勝手に決めつけるのではなく、実際どうなんだろう?と本人に寄り添っていくこと、お話を聞くこと、その人を知ることをまずやってみようと問われた、そんな気がする。
何気ない会話を積み重ねていくの中で、「はみ出し者」決めつけていた考えが打ち砕かれて、その人本来の姿が少しずつ見えてくるかもしれない。

上から言われるまま、流されるままに生きることも人生の術だけど、本当にそれでいいのか?
不正を行い、弱い者を痛ぶることは、はたして人間を豊かにするのか?
1つのことに固執していないだろうか?また自分が置かれている境遇で、誰かをこの人はこういう人間だと決めつけてないか?

「はみ出し者」の理由を聞き、正当さを確認し、尊重したが故にリストラ確定になってしまった者。
どちらも会社での居場所はなく、これからお先真っ暗なのは明らかだけど、会社でポツンと2人でただ同じ場所に居る、はじめてその人のことを知ろうと話しかける。ちょっとしたことで、その人の人となりを知る、もう少し知りたいと思う、、何気ないひと言から、会話が広がっていき、、暗転。

この2人の会話を、もっと聞いていたくなるような終わり方。
じわじわほわわんと心があたたかくなる。
2人のその後を、観てる側に預けてくれるこの感じが良い。
この後仕事がなくなるだろうこの2人の未来は?失業する苦労は絶対にあるだろうけど、それよりも人生を豊かに輝かせるものを得ることができたと強く感じさせられた。

2人の関係性にちょっとした変化が見れた最後。
そばに居る、歩み寄る。寄り添う。その人を知る。
しがらみが多くて、こんな単純なことさえも難しく思うことがあるけど、まずは立ち止まって考えてみる。そこからはじめてみたいと思った。

私自身が周りとちょっとズレてるからかもしれないけど、この作品の中での集団心理にも違和感を感じて(もちろん集団心理すべてが悪いとか言うのでもないし、そう陥る怖さや弱さもわかるけど)。ズレてる同士受け入れていきましょうよとかじゃないけど、「ここに居ていいんだよ」っていう安心感とか、居場所をつくれる人になれたらいいな〜と思った。

弱さ、泥臭さ、何処かしらに思いをぶつけたくなる衝動や不器用さ。葛藤が多い中でも生きよう!とする心底の強さがあらわれる鈴木亮平さんの人間味深いお芝居(今回はほぼほぼ馬の役だったけど🐴笑)はかっこよかったし、
はみ出し者と言われながらも、しっかりとした芯で愛する者のために生き抜こうとする母の強さ。西部の服装も牡蠣工場の格好でさえもカッコイイ天海祐希さんの存在感。すっごくよかった。

面白かった!
WOWOWさん、いつもありがとうね🥺💓

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