公募委員のススメ

「公募委員」という存在がいます。


 自治体にはいくつもの「審議会」や「委員会」があります。なかには、市民や市内通勤者から公募で選出した「公募委員」の枠が用意されていることがあります。

 専門家ではない立場から、市民のひとりとして(あるいは、市民の代表意見として)意見を述べます。わたしたちFJK的イキメン実践プロジェクトのメンバーには、多くの公募委員(ときには専門委員)がいます。特に多いのは「男女共同参画審議会委員」です。各自治体の男女共同参画審議会に委員として出席し、実施計画の策定内容や取り組みをより良いものにできるよう努めています。FJK的イキメン実践プロジェクトは、男女共同参画審議会委員(特に公募委員)の日本初の明確な「横のつながり」としてスタートしています。

 FJK(ファザーリングジャパン関西)ということで、関西にゆかりのあるメンバーが主に所属しています。関西各地に、わたしたちが審議会委員をそれぞれ務める自治体があります。自治体のサイトには、審議会の議事録が一般的に掲載されます。議事録の中に「わたしたちの声(市民感覚としての声)」を見ることができます。『専門家ではない』立場から発せられた意見が、自治体の大真面目な審議会の議事録に載る、そこから生まれる新しいつながりについて、事例をもとに紹介します。


『第37回大阪市男女共同参画審議会会議録』第18ページより引用

~~ここから~~

 (前略)

資料3の7ページ、「男性の家事・育児に費やす時間」で、質問2点のうち1点めは、平日の家事、朝の家事と夕方の家事で質や負担が違うと思うのですが、それらは個別のデータとしてございますでしょうか。

 (中略)

例えば、けさ、子どもの靴下が半分なくて、家の中を駆けずり回った私の身としては、朝に大変な重心と、あとは保育園に私が送って駅まで走るという生活で、妻は早目に保育園から帰って、夕方、夜、嫌がる子どもを、暴れる子どもを寝かしつける、何とか時間に寝かしつけて、次の日の朝、十分に起きられるような生活、私はそのころまだ帰宅をしていることが多いというふうにしています。ですので、どのように朝負担をしていて、夜負担をしているかということは、夫婦ないし各個人の社会生活をはかる上で有意義なデータとなるのではないかなと(後略)

~~ここまで~~


 大阪市の大真面目の議事録に突如として登場する「子どもの靴下が半分ない」。ここから新たに生まれるものは何か。


 ちょっとここで、公募委員の立場について振り返ります。

 公募委員は専門家ではありません。審議会には専門家や有識者がいます。大学教授、弁護士の方々などです。そして自治体職員の方々がいます。日頃から業務として男女共同参画に携わっています。そうそうたる出席者の中で『男女共同参画に興味のある程度の一般市民』の言葉に宿る輝きは「手に届く現実感」です。前述の会議録の引用は、内容としては「妻と夫の家事の合計時間だけではなく、生活時間帯による忙しさの違いは有用なデータになりうるから、今後のデータ収集の対象として検討してもらえないか」です。内容は大真面目ですよね。ただし、この内容を「市民の言葉」として場に持ち出せるのは公募委員だけです。市民の代表、市民のひとりの言葉として残ります。

 議事録を見るひとは、市民全体から見れば、多くはないでしょう。それでも、学校教育を含めて若年層は男女共同参画について一定程度知る機会があります。まさに家庭生活や子育てにまい進している(まい進してきた)親世代にも興味を持つ人は(ちょうどわたしたちのように)います。そんなカテゴリ分けをせずとも、男女共同参画に出会って共感するひともいます。そして、議事録に出会ったとき、その内容(の大部分が堅苦しい。良い意味でも形式的な意味でも。)に突如現れる「靴下が片方ない」。


 そこに人は思うかもしれません。『こういう話なら自分もできるかも』


 次の公募委員への応募のハードルをほんの少し下げるとしたら。このような議事録が、各自治体にどんどんと増えていったとしたら。自治体に住む人が自治体の審議会に手を上げやすくなり、より積極的な市民の意見を審議会が得られるとしたら。

 実際に、FJK的イキメン実践プロジェクトでは、審議会委員同士のネットワークから、「手に届く現実感」を宿した議事録の紹介、意見交換や共有をスタートしています。(もちろん、公開されている議事録をもとに、連携しても問題のない内容について。)

 男女共同参画に限らず、お住まいやお勤めの自治体にある「公募委員」にぜひとも手を挙げてみてください。そして、審議会や委員会で、ご自身の現実感を言葉にしていただくのはいかがでしょうか。

おススメいたします。

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