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Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2019 Early Spring Selection(2月25日〜4月7日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

三寒四温の日々の中で、春の訪れを心待ちにしながら、メロウ&グルーヴィーな心地よい楽曲を中心に、今回も計34時間分を新たに選曲した。
金・土・日トワイライトタイムの特集は、元号が変わるのを機に平成レトロスペクティヴとして企画された僕の現在制作中のコンピレイション『Heisei Free Soul』と連動した“平成フリー・ソウル”。時代を彩った名曲の数々を、様々な思い出を胸に楽しんでいただけたらと思う。
ニュー・アライヴァルで真っ先に紹介したいのは、TresorとBeatenbergの南アフリカから届いた2枚。どちらも音楽の至福を味わえる、フレッシュな瑞々しさに満ちた傑作で、両アルバムに収録されている互いのコラボレイション「Afrodite」はとりわけ名曲だ。
前クールで大推薦したEl Buhoの『Camino De Flores』に続く、南米エレクトロニック・フォークロア(1/23に放送されたdublab.jp suburbia radioの特集をぜひお聴きください)の注目株として名を挙げたいのが、Quanticがプロデュースを手がけるアルゼンチンのアンデス山間部出身の女性3人組Femina。リリースが待たれる最新アルバム『Perlas & Conchas』からの先行曲「Arriba」に一聴して魅せられてしまった。ジャケットから連想せずにいられないのか、人呼んで“パタゴニアのスリッツ”。
ジャズの新譜も大豊作で、プライヴェイトな時間はジャズばかり聴いていたような気がするが、Chris Potterの新作『Circuits』から公開された「Hold It」と並んでそのきっかけになったのが、LAのトランペッターTheo Crokerの新曲「Subconscious Flirtations And Titillations」にしびれたこと。アコースティックとエレクトリックの絶妙な溶け具合と透明感、リズムもメロディーも本当に素晴らしくて、聴けば聴くほどに深く魅了されてしまう。本人いわく「愛し合う二人の間に生まれる知的なインタープレイを描いた官能的な作品」。僕は彼を故ロイ・ハーグローヴの後を継ぐ重要な存在と位置づけていて、現代ジャズにおいてロバート・グラスパー(彼が参加し、RGE同様「Afro Blue」をカヴァーしているAnu Sunもお聴き逃しなく)にも肩を並べる活躍を期待している。
そのTheo Crokerのバンドのレギュラー・ドラマーKassa Overallの初リーダー作(やはり故ロイ・ハーグローヴに、親交の深いアート・リンゼイやカーメン・ランディー、そしてもちろんTheo Crokerも参加している)始め、個人的なジャズ・モードを反映して最近愛聴している作品は枚挙にいとまがないが、アフロビート〜スピリチュアルの潮流とも絡めながら、2/20放送のdublab.jp suburbia radioでまとめて選曲・解説(ここにジャケットを掲載した以外にもテルアヴィヴのLiquid SaloonからシカゴのAngel Bat Dawidまで)しているので、よかったら聴いてみてほしい。

Tresor『Nostalgia』
Beatenberg『12 Views Of Beatenberg』
Femina『Perlas & Conchas』
Theo Croker「Subconscious Flirtations And Titillations」
Kassa Overall『Go Get Ice Cream And Listen To Jazz』
Chris Potter「Hold It」
Nubiyan Twist『Jungle Run』
Vula Viel『Do Not Be Afraid』
Ross Hammond & Sameer Gupta『Mystery Well』
Little Simz feat. Cleo Sol「Selfish」
James Blake『Assume Form』
Choker『Mono No Moto』
Elujay『Adojio』
Homeshake『Helium』
Jessica Pratt『Quiet Signs』
J. Lamotta Suzume『Suzume』
Andrew Wasylyk『The Paralian』
Beatriz Nunes『Canto Primeiro』
Alfredo Del-Penho『Samba So』
Paula Santoro e Duo Taufic『Tudo Sera Como Antes』

Dinner-time 土曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~6:00
Brunch-time 月曜日10:00~12:00
Brunch-time 火曜日10:00~12:00
Brunch-time 水曜日10:00~12:00
Brunch-time 木曜日10:00~12:00
Twilight-time 月曜日16:00~18:00
Twilight-time 火曜日16:00~18:00
Twilight-time 水曜日16:00~18:00
Twilight-time 木曜日16:00~18:00
特集 金曜日16:00~18:00
特集 土曜日16:00~18:00
特集 日曜日16:00~18:00



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

少し季節はずれかもしれませんが、スペインのコンガ奏者ラルフ・サントスの約1年前にリリースされていたアルバム『Cosas Que Hacer En Espana』を。曲によってはスティールパンの音色も聴こえてきて夏っぽいかと思いきや、絶妙なバランス感覚とフラメンコ的な哀愁もあって、そこまで南国全開ではないところが冬~春に聴いていてもいける理由なのか。「What’s Going On」や「Love Theme From Spartacus」など、皆が大好きな、自分も大好きなカヴァー曲もあって、アルバム全体として気に入っています。レア・グルーヴやフュージョン好きな方も気に入るかもしれませんね。
もう1枚はDIYなサウンドが魅力的な、イリノイ州シカゴのカルト集団フィールトリップ所属の26歳のSSW、ポール・チェリーのアルバム『Flavour』を。アメリカでは昨年リリースされた作品ですが、日本盤CDがリリースされました。マック・デマルコやマーカー・スターリングやファビュラス/アラビアなども好きな自分は、すぐに気に入りました。まだ少し肌寒い早春の気分にもピッタリです。

Ralph Santos『Cosas Que Hacer En Espana』
Paul Cherry『Flavour』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

渋谷・Bar Musicでの定例選曲会「Count On Me~音楽の架け橋~」で、音楽評論家・渡辺亨さんから0時をまわる頃にバトンを丁寧に受け取りターンテーブルに載せたレコード。「深夜のBar Musicで聴くプリンス、最高じゃないか」という渡辺さんからの嬉しい一言が、本セレクションを組み上げる中で何度もリフレインしました。力強いタッチで躍動する「17 Days」に「Purple Rain」、そしてジョニ・ミッチェルのカヴァー「A Case Of You」……。1983年、自宅スタジオでカセットにレコーディングされていたという本ピアノ弾き語り音源は、生前に発表されたどの作品よりも生々しい。プリンスが、プリンスたる存在へと昇華する直前にあるこの質感は、現代を生きる僕たちの親密な時間にこそより相応しいように思える。

Prince『Piano & A Microphone 1983』

Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

アルバム単位ではJames Blakeの新作をはじめHomeshakeやAngelo De Augustineの新作を愛聴しましたが、今回はドイツのマンハイムを中心に活動する女性シンガー・ソングライター、Julesをご紹介します。全編彼女のペンによる一枚ですが、白眉はケニー・ランキンの「Haven’t We Met」を思わせるタイトル曲の「Greenbird」。アコギの音色が心地よい早春に相応しい瑞々しい一曲です。

Jules『Greenbird』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00



中上修作 Shusaku Nakagami

また平成が遠くなり、蝋梅が灯をともし始めた。景気だ、オリンピックだ、と騒いでみたところで春は確実にやってくるが、万里一条鉄を心に持たない人間には全く埒外なんだろう。5曲目「Dreamer」を聴きながら「所詮、人の所行は遊びではないか」と空や大地はほくそ笑んでいるに違いない。

Adam Baldych & Helge Lien Trio『Bridges』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



髙木慶太 Keita Takagi

今回の選曲は曲のイニシャルを並べると“EARLY SPRING SWEET”という綴りが繰り返されるようになっている。制約も多く、時間もかかるが、手癖やお約束を回避するための有効手段として悪くない。人のライブラリーで選曲するような新鮮さがあって思わぬ発見もある。
例えば、Finley Quayeの「Even After All」のような、自分にとっては“夏の名曲”をこの時期の深夜帯にセレクトしてみたが、意外やしっくりきた。
経験と思っていたものが単なる先入観の積み重ねに過ぎないこともあるのだな。

Finley Quaye「Even After All」

Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

春らしい、きらめいた気分になる兄妹グループ、ローレンスの「More」。
この曲を聴いたとき、ウーター・へメルを初めて聴いた感触に近い、フレッシュなポップネスが持つ多幸感ある魅力に強く惹かれてしまった。
アルバムには他にもキュートで魅力あふれる曲がたくさんあり、こちらもアナログ盤リリースが待ち遠しい。

Lawrence『Living Room』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

2019年Early Spring Selectionでは、シネマティック・オーケストラの12年ぶりのアルバム『To Believe』からモーゼス・サムニーをフィーチャーした表題曲をオープニングにセレクトしました。本曲、初出は2016年で、イビサ島のカフェ・デル・マーのチルアウト・コンピレイション『Cafe Del Mar Vol. 23』にも収録されています。ストリングスをフライング・ロータスやカマシ・ワシントンなどの作品でもお馴染みのミゲル・アトウッド・ファーガソンが手掛けたことで話題となった曲で、特に後半の重厚感のあるストリングスは圧巻です。そしてモーゼス・サムニーの「Self-Help Tapes」、ウィリアム・フィッツシモンズの「Distant Lovers」へと繋げましたが、前半は冬から春に徐々に移り変わっていく季節の変わり目をイメージして選曲しました。
天候の変わりやすい花どきの季節、皆様、風邪など召されませんように!

The Cinematic Orchestra『To Believe』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

寒暖差の激しい冬と春の狭間に出会いと別れが交差するこの季節。毎年のことながら、不変な状況でありながら進化していくのが理想なのですが。
親族や友人そして敬愛するミュージシャンが他界したり。
音楽は、便利になりすぎて何かを置き去りに進んでいる気がしてなりません。

久々にThe Velvet Undergroundを全て聴きなおしました。初めて買ったレコードは『Another View』(1967年~69年の未発表集)。今思えば『ドラえもん』を1巻からじゃなくて10巻から買った心境のはずですが、そんなことはない素晴らしいアルバム。私にとって貴重な1巻であります。
ヴェルヴェッツの魅力は、緩さと心地よさとかっこいいのにそんなにかっこよくないところ。そんなにキレキレな演奏じゃない。でも心に届く。この感覚は、選曲する上でももともと持っていたはずなのに、近年の自分の選曲を聴くと「Velvetが足りない!」ことに気づき、改めて私らしい選曲の進化の難しさを知りました。
ですので、今回は間にThe Velvet Undergroundの素晴らしい名曲を楽しむ金曜の夜。

しかしながら、冒頭では、我々選曲家をもあらゆる音楽へ導き、そして感動をもたらしてくれたミシェル・ルグランからはじめます。永遠なれ。

The Velvet Underground『Another View』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

長い冬をこえて、私の住む北海道にもようやく小さな春の訪れを感じる季節がやってきました。生まれたばかりの春の陽射しに包まれて、目に映るすべてのものがきらきらと輝きだす喜びに満ちた季節のはじまりです。2019 Early Spring Selectionは、そんな爽やかな早春のブランチタイムによく馴染む、芽吹いたばかりの若葉のような、フレッシュな聴き心地の楽曲を中心に編んでみました。今回は特に、近年リリースされたブラジル・ポピュラー音楽を軸に構成しました。どちらかというと、夏のイメージが強いブラジル音楽ですが、なんとなく個人的には今の季節にしっくりとくるサウンドだったりします。今回セレクトしたブラジル音楽の中でも、特にお気に入りなのが、ブラジル出身の若き(1994年と95年生まれ!)女性デュオ Anavitória(アナヴィトーリア)が、2016年にリリースしたデビューアルバム『Anavitória』。このアルバムは、インターネット時代のアーティストらしく、クラウドファンディングによって資金を集め製作されました。インターネットから人気に火がつき、二人のオリジナル曲「Singular」の動画は、瞬く間に拡散され大きな反響をよびました。爽やかなブラジリアン・アコースティック・サウンドに乗せて、アナとヴィトリア、二人の瑞々しくナチュラルな歌声が、早春の柔らかな風と光を運んでくれるよう。春の息吹を思わせる、無垢なきらめきに満ちた心透き通る一枚です。YouTubeにアップされている、VEVOプレゼンツのライヴ映像がとても素晴らしいので、ぜひチェックしてみてください!

Anavitória『Anavitória』 
Mallu Magalhães『Pitanga』
Anna Setton『Anna Setton』
Marcelo Jeneci『Feito Pra Acabar』
Roberta Campos『Varrendo A Lua』
Los Hermanos『4』
Lagum
feat. Ana Gabriela「Deixa」
OutroEu『OutroEu』
Tulipa Ruiz & Marcelo Jeneci「Dia A Dia, Lado A Lado」
César Lacerda『Tudo Tudo Tudo Tudo』
Silvia Perez Cruz & Javier Colina Trio『Debí Llorar』

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

最近再発された1986年のプライヴェイト・プレスのスピリチュアル・ジャズ。アリス・コルトレーンの指導を受けたというハープ奏者による、ソウル・ミュージックと80年代シンセ・サウンドとアフリカ音楽との素敵な融合。この曲はループするスティールパンにも似た鮮やかに輝くハープの音色とシンセやアフリカン・パーカッションをバックに、澄んだ女性ヴォーカルに加えてとっておきの子供たちの歌声や笑い声が優しく溶け合う素晴らしいメロウ・チューン。

Jeff Majors『For Us All (Yoka Boka)』

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

2019 Early Spring Selectionは、「もうすぐ春ですね」をテーマに、世界中のインディー最新作の中からポップで現代的なビートを感じる音楽を中心に選曲しました。そんな中から最初に紹介するのは、かつての坂本龍一が示したオリエンタル・テクノのメロディーを彷彿させてくれたTheo Katzmanの「Break Up Together」。続いてイングランド出身のコンポーザーMartin RoweとシンガーSean Phillipsによる二人組Private Agendaの、クールなビート感と多彩なシンセの音色に非凡なセンスを感じる「Instinct」。その流れでつながったThe Mariasの「Ruthless」は、2019年のベストに早くもノミネートしたい今回の選曲の中での一番のお気に入り。どこか懐かしくて切ないグルーヴ・ラインと春色のルージュのようなロリータ・ヴォイスが超キュートで何度でも聴きたくなる一曲です。最後に紹介するのは、統一されたジャケットのアートワークのセンスがそのまま音楽に反映されているShallouの2018年作から、浮遊感あふれる現代ビートと夢心地にさせてくれるファルセット・ヴォーカルが印象的だった「Begin」を。その他にも、どこかに心のときめき=サプライズを感じた春先ポップ選曲にぜひ耳を傾けてください。

Theo Katzman『Heartbreak Hits』
Private Agenda『Affection』
The Marias『Superclean, Vol.II』
Shallou『All Becomes Okay』

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

ブルー・アイド・ソウル・シンガーの春。「Neighbors」の軽やかなギターのリフに誘われて、アメリカのシンガー・ソングライターRyan Amadorの耳に心地よい歌声が伸びやかに響く。

Ryan Amador『The American』

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

2019年に入り、早くも2回目の更新となるEarly Spring Selectionがスタートしました。前回のWinter Selectionは締め切りの都合で昨年末に納品を済ませてあるので、実は年が変わってはじめて行う選曲はこのEarly Spring Selectionということになるんですね。個人的には、クリスマス・セレクション、年間ベスト、2019年Winter Selectionと立て続けに選曲をしなければならない嵐のような11月末から12月初旬を乗り切った安心感と、昨年末にまとめて選曲を納品することによって、Early Spring Selectionの納品締め切りは普段の選曲より余裕が生まれるため、一年のうちで一番ゆったりとした気持ちで選曲に向き合うことが出来るのです。ということで、今回のディナータイム・セレクションは、そのゆったりとした気持ちの中でじっくりと聴き込むことができた、自身の選曲初出となる新たに出会った素晴らしい作品をふんだんに盛り込んでお贈りしたいと思います。

まずイントロには昨年その存在を知って以来Bandcampを通じて作品をダウンロードしまくったベルファスト出身のアーティスト、Owsey がResotoneというアーティストと組んで2014年にリリースしていた『A Smile From The West (EP)』より、柔らかな泡に包まれているような響きを放つ、まるで炭酸泉のようなチルウェイヴ「Almost Crying With Confetti In Her Hair」からスタートし、続けて「Idle Town」という作品を昨年のベスト・セレクションに入れたコナン・グレイの昨年11月にリリースされたメジャー・デビュー作となる5曲入りEP『Sunset Season』より「Generation Why」を2019年の新たな船出の気持ちを込めてセレクトしました。「Idle Town」はとても素晴らしい作品でしたが、この新曲もそれに劣らず大変素晴らしい作品で、気が早いのですがこの作品も2019年のベスト・セレクション入りが濃厚だと思います(笑)。次に繋げたブルックリンのインディー・ロック・バンド、ビーチ・フォッシルズの2017年作で今のところ最新作である『Somersault』よりコナン・グレイの作品同様に穏やかなグルーヴが心地よい「Social Jetlag」を挟み、カリフォルニア州ロサンゼルス出身のアーティスト Ben SchwabとJacob Loebの二人からなるユニット、ゴールデン・デイズの2月リリース予定のセカンド・アルバム『Simpatico』に収録予定の楽曲で、先頃先行シングルとしてリリースされた2000年代版ファンタスティック・サムシング的なテイストを持つ「Blue Bell」、サンフランシスコ出身の女性アーティストMelina Duterte によるソロ・プロジェクト、ジェイ・ソムの2014年~15年に作られた楽曲で構成された編集盤『Turn Intro』よりピックアップしたドリーム・ポップ「Unlimited Touch」、1月にリリースされたばかりのレディオ・デプトの疾走感のあるアレンジが爽快な「Your True Name」、闘牛やフラメンコといった文化が今も活きているスペインの街セヴィリアで活動するインディー・ロック・バンド、Terry vs. Toriのキラキラとした輝きを放つ「High Tide」、カリフォルニア州レイクエルシノア出身のアーティスト、ドリーム・アイヴォリーの、2016年にリリース情報がアナウンスされているにもかかわらず未だに陽の目を見ていないセカンド・アルバム『Flowerhill Dr.』から、唯一シングルとしてリリースされている「Welcome And Goodbye」、そして「usen for Cafe Apres-midi」でも多くのセレクターに評価されているカナダはサスカチェワン出身のシンガー・ソングライター、アンディー・シャウフが地元の友人たちと結成したバンド、フォックスウォーレンがバンドを結成してから10年以上の時を経てようやく完成させたセルフ・タイトルのデビュー・アルバム『Foxwarren』より、枯れたギター・サウンドがレイドバックな響きを放つ「To Be」などをセレクト。天才プリンスの出身地ミネアポリスで活動する三人組ナイト・ムーヴスの、もともとは2011年にBandcampでリリースされていた作品をDominoレーベルからフィジカルな形でリリースするために、デヴェンドラ・バンハートの作品などを手掛けるThom Monahanのプロデュースで再びレコーディングし直し2012年にリリースされたデビュー・アルバム『Colored Emotions』より、ドリーミーでダークな響きのタイトル曲「Colored Emotions」をピックアップ。ニューヨーク出身のMons Viと名乗るアーティストがカセットテープで2017年にリリースした『Relic 1』からは、無機質でチープなドラムマシーンのリズムに少し気怠い男女のヴォーカルが被さる「Want Me Too」や、ベルギー出身のアーティスでありモデル業もこなすClaire Laffutが名門バークレイ・レコードから昨年リリースしたEP『Mojo』より、90年代に日本で流行したフレンチ・スタイルの作品にも呼応するフレンチ・ヌーヴェル・ポップ「Verite」、そしてまたもやコナン・グレイのメジャー・デビュー作『Sunset Season』から、こちらもティーンエイジャーの切なさが爆発する「Lookalike」をセレクトしてディナータイムの前半は終ります。

ディナータイム後半は、昨年も5曲入りの『Absence EP』という作品をリリースしていたカリフォルニア州はロサンゼルスで活躍する三人組のDyanが、2016年作のファースト・アルバム『Looking For Knives』から第1弾シングルとして発表したギター・ソロも印象的な「St. James」や、オーストラリアはシドニー出身の五人組ドリーム・ポップ・バンド、ウルトラクラッシュのデビュー・シングル「Swimming」、セレクター仲間の武田さんが昨年のベスト・セレクションで取り上げていたシカゴを拠点に活動するフィリピン人アーティスト、J・フェルナンデスのヴィブラフォンの響きもクールな「Don't Need Anything」、そしてこちらもカリフォルニア州はロサンゼルスで活躍するアレックス・シーゲルが昨年末に発表した最新作「Overgrown」、カナダのケベック州はモントリオール出身のアーティスト、ピーター・セイガーのプロジェクトであるホームシェイクの2月にリリースが予定されている4枚目のスタジオ・アルバム『Helium』から第2弾シングルとして先行リリースされた、ひんやりとしたファルセット・ヴォイスが心地よく耳に響く「Nothing Could Be Better」をピックアップ。そしてこちらもモントリオールを拠点に活動する三人組インディー・ダンス・ユニット、メン・アイ・トラストが2017年にリリースしていた美しきダウンテンポでラウンジ感のあるナンバー「You Deserve This」、柔らかなアコースティックな調べで静かに始まるマンチェスター出身のThe 1975の最新作『A Brief Inquiry Into Online Relationships』(邦題は『ネット上の人間関係についての簡単な調査』)からピックアップした「I Always Wanna Die (Sometimes)」、最近やっと入手したレディオ・デプトの2003年リリースのシングル「Pulling Our Weight」に収録されている「We Climb The Wired Fences」、カリフォルニア州はロサンゼルスを拠点にするドリーム・ポップ・バンド、スモール・フォーワードの「Tearjerker」、そしてCaptured Tracksの人気バンドで4月に6年ぶりとなる来日ツアーが決定しているワイルド・ナッシングの、昨年リリースされた4枚目のアルバム『Indigo』からピックアップした「Flawed Translation」なども、今回の選曲で意識したクールでドリーミーな流れに淡い彩りを添えます。他にもニュージャージー州を拠点に活動しているシンガー・ソングライター兼プロデューサーのSavi MindsがドイツのMarius Lauberのユニットであるルーズベルトやダフト・パンクなどにインスピレイションを受けて制作されたメロウなファンク・サウンドが身体を揺らす「Lazy」や、ニューヨークはブルックリンで活動するベッドルーム・ポップ・デュオToledoが昨年末にリリースしたシングルで、この2月にリリースが予定されているデビューEP『Hot Stuff』にも収録予定のウィスパー・ヴォイスが優しく響くダンス・ナンバー「Bath」、アメリカはナッシュヴィル出身のザック・テイラーのプロジェクト、ドリーマー・ボーイのドリーム・ポップに溶け込む軽く弾んだラップが心地よい「Orange Girl」、オランダはアムステルダムを拠点に活動するポップ・デュオ Feng Suaveが昨年11月にリリースした、ドリーミーかつソウル・フィーリングも併せ持つスムース・メロウな「Venus Flytrap」などもセレクトしました。

そしてミッドナイト・スペシャルですが、平成も終わろうとしている中、15年以上「usen for Cafe Apres-midi」に関わってきて何かやり残したことはないかと考えたところ、自分はよくネオアコにまつわる選曲をするのですが、毎回どこかひねりのあるテーマや作品を選んで、王道路線のストレートなネオアコの名曲だけを集めた選曲をしたことがなかったことに気がつきました。ということで今回の選曲はネオアコが好きな方なら誰もが知っているメジャーな作品だけを集めて、直球ど真ん中のネオアコ名曲セレクションをお贈りしたいと思います。例えていうなら、橋本さんが2007年に手がけた3枚の素敵なネオアコ・コンピレイション盤のようなテイストを持つセレクションなのですが、当時自分も微力ながらお手伝いさせていただいたそのコンピレイション盤には権利関係の都合でオレンジ・ジュースなど収録できなかったアーティストの作品もあったので、そのような問題が存在しない今回のセレクションは、(個人的には)理想なものに仕上がったと思います。収録した個々の作品やアーティストについては今さら説明をする必要もないと思いますが、最後にこのコメント欄でときどき書いているネオアコ・トリヴィアをひとつご紹介しますと(笑)、ミッドナイト・スペシャルの最後に収録したドリーム・アカデミーによるスミスの名曲カヴァー「Please Please Please Let Me Get What I Want」のインストゥルメンタル・ヴァージョンは、残念ながらドリーム・アカデミーの名義のCDには収録されておりません。しかし1986年に公開され、未だに根強いファンを多く持つアメリカの青春学園コメディー映画『フェリスはある朝突然に(Ferris Bueller's Day Off)』のサントラ盤CDにひっそりと収録されていますので、この曲をCDで手に入れたい方は探してみてはいかがでしょうか?

Conan Gray『Sunset Season』
Golden Daze『Simpatico』
Terry vs. Tori『Leap Day』
Dream, Ivory「Flowerhill Dr.」
Night Moves『Colored Emotions』
Mons Vi『Relic 1』
Claire Laffut『Mojo』
Dyan「St. James」
Ultracrush「Swimming」 
Alex Siegel「Overgrown」
Men I Trust「Tailwhip」
Small Forward「Tearjerker」
Savi Minds『Lazy』
Toledo「Bath」
Dreamer Boy「Orange Girl」
Feng Suave「Venus Flytrap」
The Dream Academy『The Dream Academy』
Aztec Camera『High Land, Hard Rain』
The Pale Fountains『Pacific Street』
Orange Juice『You Can't Hide Your Love Forever』
Friends Again『Trapped And Unwrapped』
Haircut 100『Pelican West』
Everything But The Girl『Love Not Money』
Lloyd Cole And The Commotions『Rattlesnakes』
The Bluebells『Sisters』
The Smiths「The Boy With The Thorn In His Side」
The Go-Betweens『Spring Hill Fair』
The Lotus Eaters『No Sense Of Sin』
The Trash Can Sinatras「Obscurity Knocks」
Prefab Sprout『Steve McQueen』
The Colour Field『Virgins And Philistines』
V.A.『Ferris Bueller's Day Off (Music From The Motion Picture)』

Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

東京も昼間にランチに出たりすると、すっかり、春の訪れを感じるようになりました。渋谷ヒカリエの中にある、アパレル・ショップや雑貨屋などを覗いてみても、すでに春らしい色とりどりの商品が並んでいます。選曲においても、そういう空間で流れ、自然に溶け込むことを意識してみました。冬の選曲は、フォーキーなシンガー・ソングライターやポスト・クラシカルが中心でしたが、これからの温かな季節には軽やかなジャズ・ヴォーカルやボサノヴァなど、新しい息吹の感じられる曲をところどころにちりばめながら組んでいきます。その中でも抜群に輝いているのが、このアナ・セットンという女性ヴォーカリスト。知的で洗練された香りが漂う、オーガニックでアコースティックなブラジリアン・サウンドが特徴的です。春のファッションやインテリアにも似合いそうな、ポジティヴな空気にも包まれています。ぜひお楽しみください。

Anna Setton『Anna Setton』

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

このEarly Spring Selectionは、今年リリースされるアルバムからの先行公開曲をかろうじてひろえるぐらいのタイミングが締め切りなので、すでに2019年が豊作の年の予感しかしない素敵な楽曲が登場している現時点をお伝えできないタイムラグが歯がゆいばかりですが、とりあえず今回も選曲のポイントとなった作品を掲載したジャケ8枚の並びにそって紹介していきます。
前作のバスルーム・レコーディング作もこちらで取り上げたファルセット・ヴォイスで魅了するSSWのパーソナルな内容の傑作、スウェーデンの男性デュオによるフォーキー・メロウなEP、CTI風のジャケを装った確信犯的ラウンジ・ボサ、ドリーミーでサイケなLAのポップ・アクトによる素晴らしすぎたデビュー・フル・アルバム、スピリチュアルな現代版サイケデリック・ソウルを奏でるカナダのシンガーの改名後最新作、そして先日カフェ・アプレミディで高校3年生のDJがイージー・リスニングから80sニュー・ウェイヴに渡るセットを展開していてとても感心したのですが、そんなテイストと共鳴するような、PCミュージックとポール・サイモン&ジョニー・マンデルとの出会い、などと評されているロンドンの20歳の男女デュオによるポップでシュールなEP、甘い夢のように儚げで美しい女性SSWの1975年プライヴェイト・プレス盤、元Hiss Golden Messengerメンバーによる豪華メンツを従えた旅のような風景が広がるフォーキー・ルーツもの。といったところで、2019 Early Spring Selectionをどうかお楽しみいただけらと思います!

Angelo De Augustine『Tomb』
Grapell『Sucker - EP』
Leonardo Marques『Early Bird』
Nick Dorian『Planet Stardom』
Yves Jarvis『The Same But By Different Means』
Jockstrap『Love Is The Key To The City - EP』
Naomi Lewis『Cottage Songs』
Scott Hirsch『Lost Time Behind The Moon』

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

先日の夜、仕事を終えてから映画『ノーザン・ソウル』を観てきました。終映後に館内が明るくなったとき、客席に建設作業員の制服を着た二人組の姿が見えて「まさにノーザン・ソウル!」と思ったのもナイスなエピソードですが、ユース・カルチャーの持つ独特の熱量や、仲間とそれを共有しているという感覚がよく描かれていて、「そうだよ、この感じなんだよ!」と観ていて強く納得しました。僕はそういった衝動やそれに付随する行動に対して、10代の頃と同じような反応はできませんが(つまらない大人になってはや何年……)、その感覚を大事にしていくことを再確認しました。また、好きなことを続けていられるのは幸せなのだ、という思いも改めて。「usen for Cafe Apres-midi」の選曲も、そういった「好き」が溢れているものにこれからもしていきたいと思っています。

さて、日に日に春の兆しを感じる時期となるEarly Spring Selection、柔らかな手触りや心がふわっと浮き立つようなムードをイメージしつつ、今回もセレクションを構成していきました。
オープニング・クラシックは、定番中の定番とも言えるショパンの「子守歌」です。坂本龍一が自身の音楽遍歴を紐解くような選曲の『耳の記憶』というコンピレイションを最近よく聴いていたのですが、それに収録されていた一曲。教授いわく、ビル・エヴァンスの「Peace Piece」と曲の構造が同じ、なのだとか。言われてみると、ピアノの高音のフレーズなどに共通するものを感じますね。それでなくともアフタヌーン・クラシック殿堂入り、という感じの曲なので迷わず今回の1曲目としました。それに続けては初アナログ化となったジョルジオ・トゥマのワルツ・ナンバーへ。夢見心地の午後の始まり、という感じです。
選曲についての技術的な話を少しだけしておくと、今回は曲の並びをあえて少しデコボコにしてみました。いつもは前の曲とのつながりができるだけスムーズになるように配慮して曲を並べるのですが、そうすると耳なじみが良くなる反面、ジャンルや音色、年代が似てきてしまうというデメリットもあるんですよね。「BGMは断片しか耳に入っていない」というセオリーをもとに、今回は曲と曲同士の距離感を意図的に作って並べてみたりもしました。おかげで、いつもより自由度の高いセレクションになっていると思うのですが、いかがでしょうか。
アルバム・オブ・ザ・マンスはジェイムス・ブレイクの『Assume Form』でしょうか。内省的な個性はそのままに、今作はゲスト・アーティストも多く迎え、サウンド面でもアンビエントR&Bなど近年のモードに目配りを見せています。心のひだに触れてくるようにメランコリックな「Don’t Miss It」に続き、セレクションの最後には、先日この世を去ったミシェル・ルグラン「You Must Beleive In Spring」をビル・エヴァンス最晩年のレコーディングで。『ロシュフォールの恋人たち』の中の切なく忘れがたい一曲が、枯淡の境地と言うべきタッチでしみじみと奏でられます。ルグラン追悼はもちろん、春生まれの大切な人に捧げます。皆さまに素敵な春が訪れますように。

Maurizio Pollini『Chopin: 4 Scherzi; Berceuse; Barcarolle』
Giorgio Tuma『My Vocalese Fun Fair』
挾間美帆『Dancer In Nowhere』
James Francies『Flight』
Toro Y Moi『Outer Peace』
Medasin x Masego『The Pink Polo EP』
James Blake『Assume Form』
Bill Evans『You Must Believe In Spring』

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

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