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Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2019 Best Selection(12月26日〜1月12日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

ミシェル・ルグランが亡くなり、ジョアン・ジルベルトが亡くなり、アンナ・カリーナが亡くなった2019年。そんな一年の「usen for Cafe Apres-midi」選曲を振り返り、特に好きだった500曲をリストアップし(曲目リストはカフェ・アプレミディHPをご覧ください)、僕が担当する午前0時から8時までは、それをまるごと日替わりのシャッフル・プレイ放送でお届けする「2019ベスト・セレクション」。時代の流れもあって、すっかり曲単位で音楽に接することが増えてしまいましたが、僕がアルバム単位で愛聴したベスト60作もここにリストアップしておきますので(アルバムとEPのボーダーラインが見分けづらい作品の場合は、7曲以下はEPと判断して選外に)、ぜひその素晴らしさにも触れていただけたら嬉しいです。それでは、音楽的には恵まれていたと思う2010年代に感謝と別れを告げて、素敵な音楽との新たな出会いを楽しみに、2020年を迎えましょう。

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Solange『When I Get Home』
Jim Alxndr『Retro Future Love Sound Machine』
El Buho『Camino De Flores』
808vic『Wav's For The Summer』
Vegyn『Only Diamonds Cut Diamonds』
Chance The Rapper『The Big Day』
Konradsen『Saints And Sebastian Stories』
Manatee Commune『PDA』
Loyle Carner『Not Waving, But Drawning』
Moonchild『Little Ghost』
Leif Vollebekk『New Ways』
TRESOR『Nostalgia』
Little Simz『GREY Area』
Seba Kaapstad『Thina』
Tigana Santana『Vida–Codigo』
Tyler, The Creator『IGOR』
FKA Twigs『Magdalene』
James Blake『Assume Form』
Intellexual『Intellexual』
Masok『The Bigger The Risk』
Samthing Soweto『Isphithiphithi』
Teotima『Weightless』
Beatenberg『12 Views Of Beatenberg』
DjeuhDjoah & Lieutenant Nicholson『Aimez Ces Airs』
Men I Trust『Oncle Jazz』
Free Nationals『Free Nationals』
Dominique Fils-Aime『Stay Tuned!』
Bryony Jarman-Pinto『Cage And Aviary』
Jordan Rakei『Origin』
KAYTRANADA『BUBBA』
Taylor McFerrin『Love's Last Chance』
Run Child Run『Peace Process』
Asi『Minimas』
Kainalu『Lotus Gate』
Show Dem Camp『The Palmwine Express』
Ami Faku『Imali』
Brijean『Walkie Talkie』
Caoimhin O Raghallaigh & Thomas Bartlett『Caoimhin O Raghallaigh & Thomas Bartlett』
Femina『Perlas & Conchas』
Jitwam『Honeycomb』
Shafiq Husayn『The Loop』
Billie Eilish『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』
O Terno『atras/alem』
WOLKEN『WOLKEN』
Gary Corben『Gods In Brasil』
Juan Fermin Ferarris『35mm』
YBN Cordae『The Lost Boy』
Brittany Howard『Jaime』
Devendra Banhart『Ma』
Angelo De Augustine『Tomb』
Salami Rose Joe Louis『Zdenka 2080』
Jamila Woods『LEGACY! LEGACY!』
Teebs『Anicca』
Natty Reeves『Condition』
Homeshake『Helium』
Mayra Andrade『Manga』
Anderson .Paak『Ventura』
Resavoir『Resavoir』
Sudan Archives『Athena』
Brandee Younger『Soul Awakening』

0:00~8:00



武田誠 Makoto Takeda

とりたてて2019年に限ったことではないけれど、いわゆる“生まれつき文化資本を身につけた”才能ある若い音楽家やDJたちとカフェ・アプレミディを通して出会うことができ、とても感じたのが、彼らが、今年ひどく考えさせられた『人口減少社会のデザイン』という本の中の、例えばぱっと見開いたページの一節、“いわば坂道を登った後の広いスペースで各人が自由な創造性を発揮していける、そうした時代”を担っていくんだなということ。
そんなことを考えると、ここ毎年感じている音楽の豊作っていうのは、音楽に携わっている若い世代の知性が正常に機能しているとても喜ばしい結果だと思ったりもします。
「usen for Cafe Apres-midi」での選曲は、いわば形骸化した“カフェ・ミュージック”を送りだすのではなく、そんな彼らの創造性に刺激を受けながら、あらゆる人たちに風通しのよい自由な空間が広がり感性がアップデイトし続けるような“カフェ・ミュージック”、でありたいと考えます。
今年の1枚ならSolange『When I Get Home』。エレクトロニクスとアコースティックがまろやかで美しい浮遊感をともなって溶け合った、70s電子サイケのような質感のオーガニックなサウンド・プロダクション。なんなら与えられたこの1時間をアルバム一枚通して、でもよかったぐらい。
最後に、昨年同様せっかくなので、選曲リストとジャケも掲載します。
それでは皆さま、2020年、どうか素敵な年をお迎えください!

01. Hourglass Figure / Daggy Man
02. Popstar / Intellexual feat. Liam Kazar & Benny Sings
03. Curls / Bibio
04. All To The Wind / Angelo De Augustine
05. A Door Shuts Quick / Vetiver
06. Numb / Men I Trust
07. Torturadores / Ana Frango Eletrico
08. Stay Flo / Solange
09. Talk About It / Kate Bollinger
10. Blue Bell / Golden Daze
11. Truth In The Wild / Mega Bog
12. Castor & Pollux / Olden Yolk
13. Too Much To Ask / Moonchild
14. Simple Things / Rose Elinor Dougall
15. Muted / Teebs feat. Thomas Stankiewicz
16. Wicked Dreams / Rhye
17. Memorial / Devendra Banhart
18. Oh I Miss Her So / Holy Hive feat. Mary Lattimore

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Daggy Man「Hourglass Figure」
Intellexual『Intellexual』
Bibio『Ribbons』
Angelo De Augustine『Tomb』
Vetiver『Up On High』
Men I Trust『Oncle Jazz』
Ana Frango Eletrico『Little Electric Chicken Heart』
Solange『When I Get Home』
Kate Bollinger『I Don't Wanna Lose』
Golden Daze『Simpatico』
Mega Bog『Dolphine』
Olden Yolk『Living Theatre』
Moonchild『Little Ghost』
Rose Elinor Dougall『A New Illusion』
Teebs『Anicca』
Rhye『Spirit』
Devendra Banhart『Ma』
Holy Hive『Harping』

8:00~9:00



ヒロチカーノ hirochikano

2020年以降は、あらゆる意味でAIが人に代わって仕事をする時代に突入しますが、そうなると誰かのセンスをコピーしただけの選曲や、過去の候補曲に頼った手抜き選曲のほとんどが無人化されていくことでしょう。それは、かつてテープ録音からパソコンで音楽編集可能となったときと同じように、いよいよ人間が選曲をするというコトの真価が問われる時代へと突入することになるのです。そんな時代だからこそ、私たちはより本質的な意味で、常にその一歩先を行くオリジナル・センスであり続けることが大切だと感じています。
自身の選曲では、常に毎回リセットを心がけ、ゼロ・ベースの候補曲から時間が許す限りなるべく多くのトラックをクリックし続けてきましたが、そんな幾千ものクリックの中で奇跡的に出会った曲がオリジナル・センスでつながった、今年のベスト・オブ・ベストを全曲解説付きで紹介します。

1. Between Days / Far Caspian
インディー・ドリーム・ポップ・バンドFar Caspianのデビュー作より。イントロの心地いいビートとシンプルなメロディーで展開されていくアレンジが秀逸です。

2. Summer Skin / Parekh & Singh
ドリーミーで浮遊感あふれる「usen for Cafe Apres-midi」ストライクなイントロからはじるロマンティックで心がときめくワルツ・ポップ。音を気に入った後で知りましたが、意外にも彼らはインドのアーティストだそうです。

3. Everything Borrowed / Jerry Paper
初期アプレミディ・クラシックの定番ジョアン・ドナートの世界観を彷彿させる歯切れのいいエレピの伴奏とオリエンタルなメロディーが印象的。

4. Come To Atlanta / Faye Webster
ヴァネッサ・パラディを彷彿させるフェミニンな唄声に絡み合うローズ・サウンドとサックスの掛け合いがなんとも心地いい1曲。

5. Ruthless / The Marias
ルージュの吐息を感じるような奇跡のロリータ・ヴォイスにノックアウトされました。抑制の効いたグルーヴ・サウンドも最高で、今年の選曲の中でもお気に入り中のお気に入り。

6. That I Miss You / Vansire
どこか懐かしさを感じるベース・ラインと2000年代初頭に流行った4つ打ちポップ・ハウスのリヴァイヴァルな音が、ひとまわりした今の街に不思議とフィットします。

7. Friends / Dido
イギリスを代表する女性SSWアーティストDidoの5年ぶりとなった注目の最新作。いかにも現代感覚にあふれたソフトな4つ打ちのリズムと肩の力がぬけた彼女の唄声が心地いい。

8. Metamodernity / Vansire
脱力系4つ打ちコーナーの最後に選んだ1 曲は、ミネソタ出身のローファイ・ドリーム・ポップ・デュオの最新作より。ビートの作り方含めサウンド・センスが抜群です。

9. 23 / Rejjie Snow
ポップ感覚と融合したチル・ラップの新潮流を示してくれたRejjie Snow『Dear Annie』は、男女掛け合いのポップなラップと間奏の口笛のアレンジが最高。

10. Evil Spider / Benee
思わず踊り出したくなるようなグルーヴ感とハスキーな彼女の歌声のメロディーがマッチした傑作。パーティーがあったら盛り上がること間違いなし。

11. Instinct / Private Agenda
イングランド出身のコンポーザーMartin RoweとシンガーSean Phillipsによるテクノ・クラシックスのレトロ感覚と現代エレクトロ・ポップが交錯する名曲。

12. O Quarto / Viratempo feat. Gab Ferreira
サウドシズモにあふれるGab Ferreiraの確かな歌唱力とインテリジェンスを感じるシティ・ポップが見事に溶け合った、ブラジリアン・ポップの新しい風を感じる1曲。 

13. Missing / Drama
シャーデーの再来を思わせるスピリチュアルな歌唱力の魅力と現代的チルホップが見事に融合したナイス・トラック。後で気づいたけどエヴリシング・バット・ザ・ガールのあの曲のカヴァーなんですね。

14. Velvet Light / Jakob Ogawa
ノルウェイの新鋭サウンド・クリエイターの非凡なセンスを感じるサウンドトラックの上で囁くように歌うセクシーなファルセットが耳に残ります。

15. Days Like This / MorMor
イントロ出だしわずか2音で心を鷲づかみされた幻想的なシンセの音色が最高で、その期待通りの壮大なスケール感を感じる現代の名曲。

16. Fall In Love / YUNO
名門Sub Popの新鋭YUNOが紡ぎ出すコンプの効いたバスドラのビートと、抜けのいいベースの音色がハートに響くサウンド・センスにあふれたチルホップ。

17. Fool'n / Jamie Isaac
2019年のベストのエンディングを飾るのは、天性の癒しを感じる唄声と、音数少なめの美しいピアノの旋律が重なり合う今年のベスト・オブ・チル・トラック。

以上、2010年代の最後を締めくくるにふさわしい中身の濃い選曲になったと自負していますので、ぜひ皆さんも、気になる曲をチェックしてみてください。
2020 Have A Nice Music!

2019best_野村

Far Caspian『Between Days』
Parekh & Singh「Summer Skin」
Jerry Paper『Like A Baby』
Faye Webster『Atlanta Millionaires Club』
The Marias『Superclean, Vol. II』
Vansire「That I Miss You」
Dido『Still On My Mind』
Vansire「Metamodernity」
Rejjie Snow『Dear Annie』
Benee『FireI On Marzz』
Private Agenda『Affection』
Viratempo『Cura』
Drama「Missing」
Jakob Ogawa「Velvet Light」
MorMor『Some Place Else』
YUNO『Moodie』
Jamie Isaac「Fool'n」

9:00~10:00



富永珠梨 Juri Tominaga

平成から令和へ新しい時代を迎えた2019年、今年もたくさんの素晴らしい音楽に出会うことができました。2019年は選曲という仕事をするうえで、あらためて「一番大切なこと」に気づかされる1年だったように思います。AI時代の訪れや、IT・テクノロジーの急激な進化とともに、自分自身の選曲のスタンスや、あり方について(人と人との関わり合い方や、繋がり方などについても)以前とは少し違う角度で、思いを巡らすことが増えてきました。ときどき選曲仲間ともそんな話題になったりします。それは決してネガティヴな内容の話ばかりではないのですが、話の着地点は手放しにポジティヴじゃないこともしばしば(AIにお株を奪われてしまわないか問題)。とはいえ私自身も、音楽ストリーミング・サーヴィスやSNSなどの恩恵をきっちり受けながら、自分にとっての「ベターライフ」を模索する日々を、それなりに楽しく過ごしております。でもなぜだろう、このうっすらと感じる、後ろめたさは。ときどきAIが選曲したプレイリストにドキッと(というかザワッと)させられることが正直あります。作業用BGMにしているときなど「なぬ?!」と手が止まり、アーティスト名や、タイトルをチェックしにいくことも多々あります。ただただ便利でありがたいだけのツールなのに、ふと気がつくと心のどこかで、嫉妬心、というか恐怖心のような感情が、ほんの少しだけ疼いているのを感じます。とても変な話なのですが。でもそんな気分になったときは「負けてたまるか!」とばかりに、AIがセレクトできなさそうな、古いレコードだけで選曲CDを作ったりして、密かに心のモヤモヤを解消しております。AIに対して、そんな謎の対抗意識を燃やしている自分も案外嫌いじゃないんですけどね(笑)。

聴きたい音楽、知りたい情報、繋がりたい人、全てがあっという間に手に入ってしまう現代。ポンとスウィッチひとつ押してしまえば、その空間や季節に合った、今流行の音楽が自動的に選曲できてしまうシステムも、私が知らないだけで、もうすでにあるのかもしれません。でもきっと、無意識に人の心が求めるものは、誰かが自分のために想像力をうんと働かせながら手を動かし、愛と情熱を注いで作り上げたものなのだと私は思います。それはもちろん選曲や音楽の世界に限ったことではないはず。伝統を受け継ぎ誠実な想いを持って作られた器や、我が子のように真心込めて育てた農作物、心から気持ちよく過ごしてもらいたいと誠心誠意を尽くす飲食店、流行やまわりの雑音(無責任な意見や批判)に目や耳を奪われずに、嘘のない美しいものをセレクトし続ける雑貨店。ジャンルは違えど、皆きっと同じ志を持って「その道」を貫いてきたのだと思います。そんな、誠実で温かい「手触り」を感じられるものに、人は心動かされ惹かれるのだと私は信じています。

「街の音楽を美しくしたい」という想いからスタートした「usen for Cafe Apres-midi」。スタートしてから18年間、つねにアップデイトを続けながら、心ある音楽だけを、生身の人間がひとつひとつ丁寧に紡ぎ、みなさまのもとへとお届けし続けてきたこのチャンネルは、セレクターの立場から見ても、もうなんというか奇跡としか言いようがないと、いつも本当に感動しております。

誰かが選んだ曲がとても魅力的に響いたり、今まで聴いたことがあった音楽でも、誰かが心からすすめてくれたものには、不思議と魔法のような輝きを感じることがありますよね。これからもその「魔法」を「usen for Cafe Apres-midi」を聴いてくださっているみなさまと、共有できたら本当に幸せです。橋本徹さんをはじめとする選曲家17人の想いが詰まった、この放送を聴くことが、自分の趣味や価値観など音楽的な視野を広げるきっかけになってくれたら、こんなに嬉しいことはありません。

「2019 Best Selection」のコメントにも関わらず、全く楽曲に触れていなくて申し訳ありません! 2019年を振り返っているうちに、いろいろな想いがつい溢れてしまいまして(セレクションにご興味のある方は、選曲リストをアップしておりますので、そちらをぜひチェックしてみてくださいね)。でもきっと親方(橋本さん)は、そんな私の不器用で暑苦しい部分を「それがジュリちゃんのいいところなんだよ!」ときっと褒めてくれるはず!(希望的観測)

長くなってしまいましたが、あらためまして、これからも愛と情熱を大切にしながら、淀みのない素直な選曲を心がけていきたいと思います。
みなさま、2019年も「usen for Cafe Apres-midi」をご愛顧いただき、ありがとうございました!
2020年もどうぞよろしくお願いいたします!

01. Viento (Octavio Tajan) / Wagner Tajan Duo
02. Fooled And Pushed Apart / Ryan Keberle & Catharsis feat. Camila Meza, Scott Robinson, Jorge Roeder & Eric Doob
03. Trevo (Tu) / Anavitoria feat. Tiago Iorc
04. Somewhere New / Inara George
05. Ku Lari Ke Pantai / Ran
06. Paradiso / Erlend Oye & La Comitiva
07. Rindu / Dengarkan Dia
08. The Barrel / Aldous Harding
09. Stealing Romance / The Milk Carton Kids
10. Here, There And Everywhere / Nataly Dawn
11. Heartbeats / Greater Alexander
12. Nuevo Dia En Mi / Juan Carlos Ingaramo
13. I Thought / Emma Frank
14. If You Wanna / J.Lamotta Suzume
15. Forever Turned Around / Whitney
16. Stevie / Julieta Rada

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Wagner Tajan Duo『Dos』
Ryan Keberle & Catharsis『The Hope I Hold』
Anavitoria『Anavitoria』
Inara George『Dearest Everybody』
Ran「Ku Lari Ke Pantai 」
Erlend Oye & La Comitiva「Paradiso」
Dengarkan Dia「Rindu」
Aldous Harding『Designer』
The Milk Carton Kids『Prologue』
Nataly Dawn「Here, There And Everywhere」
Greater Alexander「Heartbeats」
Juan Carlos Ingaramo『Canciones Con Amigos』
Emma Frank『Come Back』
J.Lamotta Suzume『Suzume』
Whitney『Forever Turned Around』
Julieta Radak『Bosque』

10:00~11:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

イングランド南部ドーセットの南海岸のリゾート地ボーンマスのネオ・ソウル・シンガー、ジョージー・スウィートや、エクセターのブルー・アイド・ソウル・シンガー、ハーヴェイ・ヤング、ブライトンのレーベルTru Thoughtsから作品をリリースしたジャジー・ソウル・シンガーのブライオニー・ジャーマン・ピントなど、イングランドの南西部のアーティストの良作が多かった2019年。中でも、ブリストル出身でブライトンに暮らすシンガー・ソングライター&マルチ・インストゥルメンタリストであるナッティー・リーヴスのアルバムは、これまでいくつもの素晴らしいシングルをリリースしてきた彼のひとつの集大成のような作品だった。「You Weren't Supposed To Be Here」のメロウでスウィートな歌とまろやかなビートがいつまでも耳に残る。そのデビュー・アルバムは彼のベッドルームでつくられたという。

2019best_吉本

Natty Reeves『Condition』

11:00~12:00



waltzanova

今年最後の満月の夜にこのコラムを書いている。12月の満月はコールド・ムーンと言うそうだが、さっき見たそれは冬の冴え冴えとした空気の中でひときわ輝きを放っていた。

2019年も多くの素晴らしい音楽に出会ったが、ベスト・セレクションは例年通りアルバム単位で良かったものの中から、「usen for Cafe Apres-midi」的、あるいはwaltzanovaオススメという観点からリード・トラック的にセレクトして構成している。ベスト・アルバムはその名も“メロウ・ミュージック・グループ”というレーベルからの南アフリカ男女混成4人組、Seba Kaapstadの『Thina』。選出理由はシンプルで、単純に聴いた回数が多かったから。ネオ・ソウルとジャズ、アフリカン・ミュージックが現代的にブレンドされたスタイリッシュなアーバン・ミュージック。やっぱりこういうのが好きなんだと改めて感じます。

回顧展や50周年記念ライヴがあったこともあり、細野晴臣さんのアティテュードを知らず知らずのうちに参考にしていることが多かった年でもあった。尽きることのない音楽的な冒険心、飄々とした佇まい(しかしその裏には確固たる信念がある)など、共感したり見習いたいと思ったりする部分を年々強く感じるようになってきている。それはひょっとすると、今年亡くなったジョアン・ジルベルトにも通じるものかもしれない。

今年は令和という新時代が始まった年だったが、僕自身は周囲の人たちの姿に喜びをもらったり刺激を受けたりすることが多かった一年だったように思う。数年に一度、ファッションからメンタリティーまで、いろいろなものがアップデイトする周期がやってくるのだが、ここ数か月はその機運を感じたりもしている。ということで「この次はモアベターよ!」という気分で今年を締めくくりたいと思います。リスナーの皆さま、今年一年本当にありがとうございました。良い年をお迎えください。そして、2020年もよろしくお願いいたします。

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Seba Kaapstad『Thina』

12:00~13:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

2019年も、2018年以上に“豊作”だったという印象で(毎年、同じコメントですが)、その中から、選曲のレパートリーに入れた回数の多いものと、選曲を組むうえで重要な役割を担ったものを選んでみました。「usen for Cafe Apres-midi」に欠かせないジャズ・ヴォーカルでは、ローレン・デスバーグが断トツで、たぶんリリース以降、毎回選曲に入れていました。あと、今回のベスト・セレクションでは、テーム・インパラ、バリー、アイロンデイル&ブランドンリー・シアリー、インテレクシュアル、エミリー・キングといった、夏によく選んでいた曲が多く入っています。その分、フォーキーなシンガー・ソングライターが少なめですが、ノンサッチから出たドーター・オブ・スウォーズは軽やかな歌と演奏が魅力的で、秋のプレイリストでは重宝しました。そんな中、あえて挙げるとするならば、やはりケイト・ボリンジャーでしょうか。初めて聴いた瞬間に恋に落ちました。出す曲すべてが素晴らしくて、ほのかにソウル・ミュージックの要素を感じさせながら、あくまでもポップスとして仕上げるセンスは流石の一言。彼女はルックスもキュートで、ファッションもお洒落なので、さらに人気が出そうな気がします。僕は来年、なんとか来日公演を実現できないかと、本気で考えています。

2019best_山本

Kate Bollinger 「No Other Like You」

13:00~14:00



FAT MASA

2019年も大変お世話になりました。
皆さんにとってどんな一年だったでしょうか?
今年もたくさん素晴らしい楽曲の出会いがありました。
私事ながら飲食店をオープンし、今まで以上に素晴らしい出会いがありまして、お客様から教わり勉強させていただくことがたくさんありました。
音楽を共有できる、かけがえのない時間を過ごすことが気持ちを奮い立たせ、時に鎮静してリラックスすることの大切さを身にしみたことはかつてありませんでした。
そんなときに今年リリースされたローレンス「Whoever You Are」は、聴きながら自分に投影して聴いてしまうほど、聴き惚れてしまった曲で、ナイス・メロウなアレンジが最高。
アナログ盤がアメリカでしか出ていないようで、7インチでもいいから欲しい一枚であります。
ぜひアナログ・リリースをお待ちしております(笑)。
良い年をお迎えください!

2019best_マサ

Lawrence『Living Room』

14:00~1500



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

2019年のリリースで思い出されるのは、まずはBandalos ChinosやGuliやIndiosといった、チープさがクセになるアルゼンチンのインディー・バンドたち。アルゼンチンの音楽シーンのセンスの良さをポップスでも知った年だった。その他にはBarrieやBeatenbergなどもよく選曲した記憶があり、2019年の自分好みなグループだった。シティ・ポップやアコースティックなセンスの良いポップスを好む傾向は、やはり今年も変わらなかったみたいだ。ソウル・シンガーでは、2018年作品も含んでいるが、J.Lamotta SuzumeやHope TalaやAdy Suleiman、Bobby Orozaを気に入っていた。「usen for Cafe Apres-midi」でよく流れる好きなアーティストばかりだ。BGMにはあまり適していないと自分は思い込んでいるFlying Lotusの曲も、Thundercatをフィーチャーした「The Climb」だけはよく選曲したと思う。
曲順を決め改めて並べて見てみると、ほとんどは橋本さんはじめ他の選曲者たちのプレイリストから知って気に入った2019年マイ・ベストだと気づいた。そんな曲の中でも最も強く印象に残った曲は、Irondale & BrandonLee Cierley feat. Jonny Tobinの「High Five」とHaimの「Summer Girl」の2曲。
前者は2018年のマイ・ベストに選んだDisclosure「Where Angels Fear To Tread」とよく並べてかけた。後者はリリース日と制作期間のタイミングが合わず、実はSummer Selectionでは使えなかった少し悔しい思い出も。早くも2020年の春や夏が待ち遠しい。

2019best_本多

Bandalos Chinos『Bach』
Guli『Yate』
Indios『Besos En La Espalda』
Barrie『Happy To Be Here』
Beatenberg『12 Views Of Beatenberg』
Hope Tala『Sensitive Soul』
J.Lamotta Suzume『Suzume』
Ady Suleiman『Memories』
Bobby Oroza『This Love』
Flying Lotus『Flamagra』
Irondale & BrandonLee Cierley
feat. Jonny Tobin「High Five」
Haim「Summer Girl」

15:00~16:00



高橋孝治 Koji Takahashi

2019年、新天皇陛下が御即位されて元号が平成から令和に変わり、新時代の幕が開かれました。スポーツにおいてもアジアで初の、またティア1と呼ばれる強豪国以外の国においても初めてだというラグビーのワールドカップがここ日本で開催され、主催した国際団体が「すべてにおいて記録破り」と評するほどの盛り上がりを見せ、歴史に新たな1ページを刻んだ年でもありました。しかし一方では沖縄にとって象徴的な存在である首里城で起きた大規模火災により、「正殿」など主要な建物が全焼してしまったり、台風としては42年ぶりに名称がつけられてしまった令和元年台風第19号により、広い範囲で河川の氾濫や決壊が相次ぎ、大規模浸水など大きな被害に襲われるなど、厳しい災害にも見舞われた1年でしたが、皆さんにとって2019年とはどのような年だったのでしょうか?

来たる2020年は、国立競技場の設計問題や五輪公式エンブレムのパクリ問題に始まり、最近でもマラソンの開催地が東京から札幌に変更されるなど、いろいろと問題もありましたが、いよいよ東京オリンピックが開催されます。ラグビーのワールドカップのように素晴らしい大会になることを願うばかりですが、個人的に2020年に願うことは、大きな災害が起きない平穏な年になってもらいたいということだけですね。

さて、それでは年末恒例のベスト・セレクションをざっとご紹介しますと、まずはスコットランドの首都、エディンバラ出身のアーティスト、Aniccaによるアンビエントなインストゥルメンタル・ナンバー「Sun Rays」をオープニングに、本国オーストラリアでは人気を不動のものにしているシンガー・ソングライター、マット・コービーの2018年作のセカンド・アルバム『Rainbow Valley』より、柔らかなグルーヴとスウィートな歌声が清々しい風を運ぶ「No Ordinary Life」をセレクトしてスタート。続いてミネソタ州ロチェスター出身の Josh AugustinとSam Winemillerによるドリーム・ポップ・バンドVansireが、カナダはウィニペグ出身の Felicia Sekundiakによるプロジェクトであるフロア・クライをゲストに迎えて制作された、美しくも儚い光のような「Nice To See You」や、カリフォルニア州サクラメント出身のヘイリー・ジュンカーを中心に活動するユニット、ローズマザーのスウィートなドリーム・ポップ「Daffodils」、そして昨年初となるフィジカル作品『EP1: Sad Girl』をリリースしたボストンに生まれロサンゼルスで活動するサーシャ・スローンのウィスパー・ヴォイスがセクシーに響く「Ready Yet」などのドリーミーな女性ヴォーカルの作品を続けます。次に「Idle Town」という作品が昨年のベスト・セレクションにセレクトされ、2年連続でベスト・セレクション入りを果たしたコナン・グレイのメジャー・デビューEP『Sunset Season』収録の「Generation Why」や、ロサンゼルスを拠点に活動するJT・ローチがニューヨーク出身の女性シンガー・ソングライター、エミリー・ウォーレンを迎えて2017年にリリースしていたアコースティックな響きを放つR&Bサウンドが爽やかな「Symmetry」、イギリスはリーズ出身の4人組ドリーム・ポップ・バンド、ファー・カスピアンの6月にリリースされた最新EP『The Heights』収録の「Astoria」などの軽く跳ねたリズムが優しい揺らぎを放つ作品をピックアップ。そして3月に来日公演を行ったボストン生まれのクレア・コットリルによるプロジェクト、クレイロの8月にリリースされたデビュー・アルバム『Immunity』より、爽やかな風のように心地よい「North」もセレクト。彼女は2017年に発表した「Pretty Girl」という作品から自身の選曲に取り入れているのですが(セレクター仲間の武田さんも同時期から彼女に注目していましたね)、今回発表されたアルバムを聴くと、この2年の間で、初々しい少女から大人の女性へと成長していることを感じました。続いてロサンゼルスのアーティストであるAsa TacconeとMatthew Comptonによるエレクトリック・ゲストの涼しげなファルセット・ヴォイスが心地よいスマートなダンス・ナンバー「Dollar」や、ライアンという少年の音楽プロジェクト、Yot Clubの思わず笑顔が零れる青春歌謡「Won't Take Too Long」、そしてそのYot Clubの作品と繋げるのに相性がバッチリな、イギリスはロンドンで活動するホットライン・シンドロームの今のところ最新作となる「Jewellers Using Karate」などで、湖畔に反射する陽の光のような煌めき感を演出します。さらに5月にデビュー・アルバム『Happy To Be Here』をリリースした、NYブルックリンを拠点に活動する、ボルチモア、ボストン、ニューヨーク、ロンドン、ブラジル出身のメンバーから成る男女5人の多国籍ドリーム・ポップ・バンド、バリーの「Darjeeling」をセレクト。この作品は全作曲を手掛けるバリー・リンジーのソングライターとしての才能が弾ける、心も躍り笑顔が零れる素敵な作品ですね。
そしてこの辺りから2019年のベスト・セレクションも佳境に入り、ムカイ・ススムという日本人メンバーが一員にいる、ロンドンを拠点に活動する5人組バンド、ヴァニッシング・ツインの、メロウな楽曲の中にほんのりとサイケデリックなテイストが漂う「Magician's Success」や、ニューヨークはブルックリンを拠点に活動するハリソン・リプトンのレトロな留守番電話の音声が効果的に響く「No Good At Goodbyes」、10月にリリースされたセカンド・アルバム『Cry』にも収録されたシガレッツ・アフター・セックスの「Heavenly」をピックアップし、ベスト・セレクションのクライマックスにはニューヨークを拠点に活動するホーリー・ハイヴという3人組バンドによるグレイトなレイドバック・スウィート・ソウル「Oh I Miss Her So」を選びました。そしてアウトロとしてチルウェイヴとヒップホップを融合させたというオランダのレーベル、チルホップ・レコードからリリースされたジュリアン・ミアーの音楽プロジェクト、サントポールトのクールなインストゥルメンタル・ナンバー「The Great Ocean Road」が流れて、今年のベスト・セレクションは終幕を迎えます。

最後に毎年「usen for Cafe Apres-midi」とは関係のない私的なその年のベストな事柄を紹介しているのですが、今年は何と言っても我が師匠、小出亜佐子さん著書によるフリッパーズ・ギターのデビュー前夜の東京ネオアコ・シーンを回想した、『ミニコミ「英国音楽」とあのころの話 1986ー1991』が出版されたことです。自分の人生において『英国音楽』というミニコミとの出会いがとてつもなく大きな存在となっていることは間違いありません。本を読み終えたときには胸に熱いものがこみ上げてきましたが、ネオアコというものを通っていない人でも、自分が大好きな音楽に対し大きな熱量を持って接してきた人たちには共感してもらえる内容だと思うので、ぜひ手に取ってみてください。そしてこの素晴らしい本の出版に際し、微力ながら縁の下で協力できたことにはとても感謝するとともに、嬉しく思います。

さぁ、ということで次はあの人の回想録が世に出ることを期待しましょう。
それはとても多くの人が興味のある話だと思いますし、それが実現すればその時代を共に過ごした人たちにとって、とても大切なものになるはずです。

ね、橋本さん(笑)

2019Best_高橋

Anicca「Sun Rays」
Matt Corby「No Ordinary Life」
Vansire『Angel Youth』
Rosemother feat. Reese Junker「Daffodils」
Sasha Sloan『EP1 Sad Girl』
Conan Gray『Sunset Season』
JT Roach & Emily Warren「Symmetry」
Far Caspian「Astoria」
Clairo『Immunity』
Electric Guest「Dollar」
Yot Club‎「Won't Take Too Long」
Hotline Syndrome「Jewellers Using Karate」
Barrie『Happy To Be Here』
Vanishing Twin『The Age Of Immunology』
Harrison Lipton『No Good At Goodbyes』
Cigarettes After Sex「Heavenly」
Holy Hive「Oh I Miss Her So」
Santpoort『Mudflat Hikers』

16:00~17:00



髙木慶太 Keita Takagi

Juan Ingaramoの「Lo De Adentro」とSnoh Aalegraの「I Want You Around」は二大セクシー・トラック2019。
アルゼンチンのポップ・マエストロとスウェーデンのクール・ビューティー。
両者に相関はないが、その中毒性において同じヴェクトルを持つ。
恋愛ゲームからは降りても、艶っぽい音楽には敏感でいたい。

2019best_髙木

Juan Ingaramo『Best Seller』
Snoh Aalegra『- Ugh, those feels again』

17:00~18:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

今年も新旧問わず素晴らしい作品に出会えました。デジタル配信だけの形のない作品を含む。とはいえ、最近は、形にこだわるのはいったん控えめに。
レコードという文化が徐々に現在進行形になろうとするも、「今かよ」とレコード好きのためなのかわかりませんが、「それレコードにする?」という感じのレコード・リリースもあり、レコード愛を全く感じないので。という不満を解消すべく、CD/データを中心に購入していると現行のヒットチャート楽曲の良さも理解できるようになったので、よりいっそうミュージック・ライフが充実しております。
そんなあらゆる感情を揺さぶられながらの年間ベスト60分、どうぞお楽しみください。
Kelsey Luが10cc「I'm Not In Love」を忠実に再現しようとした心意気、そしてLJ Folk がThe Policeの「Roxanne」とFoo Fightersの「Everlong」を見事にボサノヴァで貫通してくれたことで、会話がどれだけ広がったか。
Alabama ShakesのBrittany Howardのソロ、最高でした。繊細なジャケット通りの白黒なフォーク。
Anna Of The Northの北欧らしい80年代と90年代のブレンド感は全く飽きることなくよく聴きました。
今年のベストワン楽曲は、Masegoの「Black Love」。
来年も皆様に素晴らしい出会いがありますように。

2019best_渡辺

Anna Of The North『Dream Girl』
Brittany Howard『Jaime』

18:00~19:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

2019年も好リリースに恵まれて去年以上にレコード、CD、データと買い求めた一年でした。1時間ではとても足りず構成で苦心しましたが、フィジカルで手に取ったものを中心にマイ・ベストを編んでみました。

2019best_添田

Holy Hive「Oh I Miss Her So」
Durand Jones & The Indications「Cruisin To The Park」
Matt Maltese『Krystal』
Angelo De Augustine『Tomb』
Raveena『Lucid』
D Mills『Agape』
DjeuhDjoah & Lieutenant Nicholson『Aimez Ces Airs』
Anderson .Paak『Ventura』
James Blake『Assume Form』
Mereba『The Jungle Is The Only Way Out』
Seba Kaapstad『Thina』
Yoshiharu Takeda『Aspiration』
FKJ『Ylang Ylang』
Rhye『Spirit』
Run Child Run『Peace Process』
Yosi Horikawa『Spaces』

19:00~20:00



中上修作 Shusaku Nakagami

2019年も総括の時節。和暦では平成から令和へ、来年2020年はオリンピック・イヤーでもあります。日々過ごしている奈良は日本最古の都がおかれた場所ですから「古いものは古いまま」放っておくような重厚な雰囲気があり、永い歴史に裏付けられた長閑な空気感に満たされています。日々が平和すぎて奈良の人間は退嬰的、と指摘されるのですが、間違いなく間違いではありません。役人も官僚も皆そんな感じですので、論理的に考えず将来も見据えず、全く今の子供たちが可哀想です。京都に続け、といわんばかりに奈良ブームが到来し観光客が激増している中、他所からは見えない「アホウな」問題が山積しています。もちろんそんな問題は奈良のみならずどこでも起こりうる話なのですが、いやはや歳を重ねてどうやら理屈っぽくなってしまったようです。

しかし、世界の動向を見ていて感じるのは「よいニュース」が減りました。決してそのせいではありませんが、2019年の総論として“ひとつまみの悲しさを振りかけたような”選曲になってしまいました。ふるい言い方をすれば“マイナー調”です。でもここで間違ってほしくないのは、悲しい曲=ネガティヴ、ではないということ。あくまで相対論ですが、ハッピーな曲が必ずしもヒトの心を豊かにしません。

毎度リスナーや空間を意識しながら選曲するのですが、今年は自然にマイナー調の曲がフィットしていったのです。これはどういうことなのか自問自答しても答えに窮するばかりですが、どうやら選曲も多少なりとも時代の空気を映しているようです。2020年もこの傾向が続くのか興味深いところですが、なによりリスナーの方に「直にひびく」選曲でありたいと願っています。本年も選曲を聴いていただき、ありがとうございました!

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Viktoria Tolstoy『Shining On You』

20:00~21:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

新しいのに懐かしく、懐かしいのに新しい。ビビオの「Curls」にあるのは去りゆく2010年代を総じて語れるような革新的なサウンドではないけれど、2020年代の僕たちにも必要な音楽。

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Bibio『Ribbons』

21:00~22:00



小林恭 Takashi Kobayashi

10年代よさようなら。この10年も素敵な音楽に出会えて幸せでした。

今年の冬によく聴いたのがJames Blake『Assume Form』です。女優のジャミーラ・ジャミリとの交際が噂されて、その影響かわかりませんが感謝や愛をテーマにした音楽は、以前よりも美しさを増してポジティヴな印象を感じる1枚でした。

今年の春によく聴いたのがSeba Kaapstad『Thina』です。ニューヨークのジャズに呼応するように南アフリカのジャズが進化していると感じさせる、その代表的なバンドの1枚で、サウンド、ヴォーカル、楽曲のバランスがとれた素晴らしいアルバムでした。

今年の夏によく聴いたのがManatee Commune『PDA』です。メロウでアーバン・チルアウトなポップなサウンドは季節にぴったりで、しばらくターンテーブルを占領していました。

今年の秋によく聴いたのがMen I Trust『Oncle Jazz』です。ソフトなポップ・ロックからメロウなベッドルーム・ポップまで洗練されたセンスが素晴らしかったです。特に「Numb」が好きでした。

いよいよ20年代に突入して、どんなベスト・ソングやベスト・アルバムに出会えるのか今から楽しみで仕方ありません。皆様にとっても良い音楽と出会える年代になりますように!

2019best_小林

James Blake『Assume Form』
Seba Kaapstad『Thina』
Manatee Commune『PDA』
Men I Trust『Oncle Jazz』

22:00~23:00



三谷昌平 Shohei Mitani

イングランドはウエストミッドランズ在住のプロデューサー、ビビオこと、スティーヴン・ウィルキンソンの「Curls」をオープニングに配した2019年のベスト・セレクション。ビビオもそうですが、2019年はいわゆる「ベッドルーム・ミュージック」と呼ばれるアーティスト達の作品に特に良いものが多かったように思います。中でもオランダのエレクトロニック・ソングライターのリタ・ジポラと詩人/ミュージシャンのロビン・ブロックの二人組のユニット、WOLKEN、カナダ・モントリオールを拠点に活動するピーター・セイガーのプロジェクト、ホームシェイク、LAのトラックメイカー、キーファー、ロンドン在住のシンガー・ソングライター、ブルーノ・メジャー、フランス・パリ在住のマルチ・インストゥルメンタリスト、FKJの新作は印象に残りました。共通して言えるのは、一曲の中で物語性を感じるようなとてもイマジナティヴなサウンドであったということでしょうか。良い音楽を良い形で聴いてきた彼ら世代が次にどんなサウンドを生み出してくれるのか、そしてこれからどんな新しい才能が生まれてくるのか、今後も楽しみでしょうがありません。2020年もこうした新しい才能を紹介しながら、「生きているハンドメイド・チャンネル」として、皆様の豊かな生活の一助になるような選曲を心掛けていきたいと思います。

2020年が皆様にとって幸多き年となりますようにお祈り申し上げます。

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Bibio『Ribbons』
Wolken『Wolken』
Homeshake『Helium』
Kiefer『Superbloom』
Bruno Major「Old Fashioned」
FKJ『Ylang Ylang』

23:00~24:00


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