Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew
2023 Best Selection(12月26日~1月14日)
橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」
詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/
世界中が経験したことのなかった苦難・困難に見舞われた年月を何とか乗りこえ、少しずつ光が見えてきたかなと思ったのも束の間、世界各地で戦火が絶えず、悲しみ(と怒り)に暮れることも多かった2023年。せめて素晴らしい音楽で世の中を明るく彩り、幸せな気分へと誘うことができたらと希い、日々の選曲に励んできました。「usen for Cafe Apres-midi」をサポートしてくださっているリスナーの皆さんには、本当に感謝しかありません。
年末を迎え、今年も年間ベスト・セレクションの季節がやってきました。午前0時から8時までの時間帯は、「生きているハンドメイド・チャンネル」という矜持を胸に、僕が「usen for Cafe Apres-midi」のためにセレクトしてきた名作群の中から、特に好きだった1,000曲を選りすぐって、日替わりのシャッフル・プレイ放送でお届けします。曲目リストは年内にこちらに掲載されますので、ゆっくりと一年を振り返りながら、この冬のサウンドトラックとしてお楽しみいただければ嬉しいです。
時代の流れもあって、すっかり曲単位で音楽に接することが増えていますが、そんな中で僕がアルバム単位で愛聴したベスト70作も、セレクションにこめた思いと共に、ジャケット付きでリストアップしておきますので、ぜひその魅力にも触れてみてください。来たる新たな素敵な音楽との出会いを楽しみに、2024年を迎えたいと思います。それでは皆さん、よいお年を!
Sampha『Lahai』
Laurel Halo『Atlas』
Speakers Corner Quartet『Further Out Than The Edge』
Cleo Sol『Gold』
Cleo Sol『Heaven』
Gia Margaret『Romantic Piano』
Julia Sarr『Njaboot』
Thandi Ntuli with Carlos Niño『Rainbow Revisited』
Fabiano Do Nascimento『Das Nuvens』
Yussef Dayes『Black Classical Music』
Scott Orr『Horizon』
Carlos Niño & Friends『(I'm Just) Chillin', On Fire』
ANOHNI And The Johnsons『My Back Was A Bridge For You To Cross』
Matthew Halsall『An Ever Changing View』
Aja Monet『When The Poems Do What They Do』
Lionmilk『Intergalactic Warp Terminal 222』
Jonah Yano『Portrait Of A Dog』
Sandrayati『Safe Ground』
Eddie Chacon『Sundown』
Pearl & The Oysters『Coast 2 Coast』
Kelly Moonstone『I Digress...』
Hayden Pedigo『The Happiest Times I Ever Ignored』
Afternoon Bike Ride『Glossover』
Coco O.『Sharing Is Caring』
B. Cool-Aid『Leather Blvd.』
Noname『Sundial』
Nara Pinheiro『Tempo De Vendaval』
Kelela『Raven』
Julie Byrne『The Greater Wings』
Kingo Halla『Empty Hands』
Ralphie Choo『Supernova』
Gretchen Parlato & Lionel Loueke『Lean In』
Jonny Nash『Point Of Entry』
Cisco Swank『More Better』
Rachael & Vilray『I Love A Love Song!』
Dina Ögon『Oas』
Steve Gunn & David Moore『Reflections Vol. 1: Let The Moon Be A Planet』
MSAKI x TUBATSI『Synthetic Hearts』
MARO『hortelã』
Avalon Emerson『& The Charm』
Liv.e『Girl In The Half Pearl』
Billy Valentine & The Universal Truth『Billy Valentine & The Universal Truth』
Beverly Glenn-Copeland『The Ones Ahead』
Mbuso Khoza『Ifa Lomkhono』
Kara Jackson『Why Does The Earth Give Us People To Love?』
Anja Lauvdal『Farewell To Faraway Friends (Wurlitzer Improvisations 2021-23)』
Walker『Good Man』
billy woods & Kenny Segal『Maps』
Adeline Hotel『Hot Fruit』
unkle G (Gavsborg)『An Honest Meal』
Brandee Younger『Brand New Life』
Chris Brain『Steady Away』
Navy Blue『Ways Of Knowing』
Matthewdavid『Mycelium Music』
Shafiq Husayn『So Gold』
Tex Crick『Sweet Dreamin'』
Bokani Dyer『Radio Sechaba』
Hollie Kenniff『We All Have Places That We Miss』
Resavoir『Resavoir』
Niecy Blues『Exit Simulation』
Jalen Ngonda『Come Around And Love Me』
Jamila Woods『Water Made Us』
Joanna Sternberg『I've Got Me』
Meshell Ndegeocello『The Omnichord Real Book』
Terrace Martin『Ornamental』
African Head Charge『A Trip To Bolgatanga』
Laufey『Bewitched』
Blake Mills『Jelly Road』
Gabi Hartmann『Gabi Hartmann』
Miguel Atwood-Ferguson『Les Jardins Mystiques, Vol. 1』
2023 Best Selectionには、わたしが心から愛する英国のシンガー・ソングライター、クリス・ブレインが今年の10月にリリースしたセカンド・アルバム『Steady Away』を選びました。この作品はプライヴェイトでも何度も繰り返し聴き続けた、とても思い入れのある大切なアルバムです。彼の音楽をはじめて知ったのは2022年にリリースされたファースト・アルバム『Bound To Rise』でした(ちなみにこの作品も昨年のBest Selectionに選んだ大好きな一枚です)。
牧歌的なメロディー、きらきらと零れ落ちるピアノのリフ、滋味深いギターのフィンガーピッキングと、控えめながらも伸びやかで美しいストリングスの音色、そして穏やかに語りかけるようなクリスの歌声。この数年に出会ったミュージシャンのなかで、彼ほど今の自分の心にフィットする音楽を奏でる存在はいませんでした。「いつかイギリスで彼のライヴを観ることができたら……」とレコードを聴くたびに強く願ったり、音楽好きの友人にもそんな夢のような話を延々と聞かせたりしていました。言霊ってほんとうにあるんですね。なんと今年、念願叶って彼のライヴを観ることができました。今年の10月に家族の用事でイギリスを訪れる機会があり、タイミングよくクリスの生まれ故郷のヨークで開催された『Steady Away』リリース記念ライヴに行くことができたんです。旅立ち前にファンレターを書いたり(Google翻訳を駆使しながら書き上げた、3枚にわたる長文ファンレター)、お土産(陶芸家の顔を持つ彼へのお土産は、大分県日田市の「小鹿田焼」の湯飲み)を準備したりと、思う存分「推し活」を楽しむことができたのも、忘れられない素敵な思い出のひとつです。
ロンドンはキングスクロス駅から電車に揺られて約2時間、イギリス北部に位置する中世の美しい街並みが残るヨークにある小さなカフェバー「FortyFive Vinyl Cafe」でライヴは行われました。1曲目に演奏されたのが、「usen for Cafe Apres-midi」の秋のベストワンにも選んだ大好きな「Golden Days」。それからわたしがこの数年、ずっと大切に聴き続けてきた、そして選曲してきた楽曲が次々と披露されました。言葉を失うほどの素晴らしい歌とギターの演奏に最初から最後まで落涙しっぱなし。もう感無量のひとことです。彼の温かな人柄が会場全体をやさしく包み込んでいるような、清らかな光に満ちあふれた夢のように美しいひとときでした。
この素晴らしい音楽体験を糧に、2024年も「生きているハンドメイド・チャンネル」のセレクターのひとりとして、心に生まれた感動やきらめきを選曲ひとつひとつに込め、リスナーのみなさまのもとへお届けできたらと思います。
2024年もみなさまにとって、素晴らしい音楽と素敵な笑顔あふれる、よい一年になりますように。
Chris Brain『Steady Away』
この一年間に自分が選曲したリストを改めて見直し、これぞ、という曲だけを厳選して、2023年のベスト・セレクションを組んでみました。ここ2~3年は、無意識にシンガー・ソングライターを中心に選んでいたように思いますが、今回はいつになく幅広いジャンルの曲が集まった、ある意味「usen for Cafe Apres-midi」らしいラインナップになったような気がします。アフリカ〜UKのリズィー・ベルチエやカナダ・ノヴァスコシアのエイヴリー・デイキンやロンドンのフランシス・ミストリー、そしてスペイン・カタルーニャのマガリ・ダッチラといった、フレッシュな輝きをもった新人たちもさることながら、常連のロンドンのシンガー・ソングライター、エド・パトリックも相変わらず安定の素晴らしさ。生涯のフェイヴァリット、リッキー・リー・ジョーンズも最高でした。そんな中、特に印象的だったのが、サム・ウィルクス周辺を調べているときに出会った、Aline's étoile magiqueというカナダのヴァイオリン奏者。これがなんとも不思議な魅力をもったラウンジーなクラシカル&ジャズといった趣で、僕の担当するランチ~ティータイムのBGMにもぴったりで、雰囲気のいいカフェやバーあたりで、ふと流れてきたら素敵かも、というイメージをしながらここぞというところで選んでいました。決して派手な曲ではありませんが、「usen for Cafe Apres-midi」の新たなクラシックになれば嬉しいです。
Aline's étoile magique『éclipse』
どんなに疲れていたとしても、新しい、あるいは今まで知らなかった名曲に出会ったときに感じるあの小躍りしたくなる気分──2023年もそんな気分を味わうことの多かった、素敵な楽曲にめぐまれた一年でした。
今年も僕の担当する時間帯に彩りを与えてくれた2023年リリースの曲の中から、年末・年始の繰り返しの聴取に耐えられるよう多彩なジャンルから選りすぐり、旅の終わりが近づいてくるようなフィナーレ感を大切に、1時間に収まる18曲を選曲しました。
この1曲となれば、今年6月末にリリースされていたものの、うまく季節の選曲に溶けこませることがかなわず、今回ここで初出となったFuensanta「No Será Regresar」でしょうか(そもそも初めからこのBest Selectionにしかあてる場所がなかったかもしれませんが)。昨年のルイス・コールの日本公演でも、ジェネヴィーヴ・アルターディ、イシス・ヒラルドと共にバッキング・ヴォーカルとしてフロントに立っていた、メキシコのベラクルス生まれで現在オランダ・アムステルダムを拠点に活動しているシンガー・ソングライターでコントラバス奏者、そして即興演奏家でもある彼女。導入部のメレディス・モンク的な声から歌とコントラバス、そして小刻みに加わるプリミティヴな打楽器だけのアンサンブルで構成された、思わずアレハンドロ・ホドロフスキーか! って言いたくなったカッコよすぎるMVにも惹かれた心震える一曲でした。
それでは2024年も慎ましく音楽と向き合うことができますように、新しい年にむけて、みなさまの健康を心からお祈りします──。
Fuensanta『Principio del Fuego』
John Roseboro『Four Cantos』
Dina Ögon「Mormor」
Andy Shauf『Norm』
Paul Cherry feat. Kate Bollinger『Los Angeles Story』
Pearl & The Oysters『Coast 2 Coast』
strongboi『strongboi』
Vagabon『Sorry I Haven't Called』
Adi Oasis『Lotus Glow』
Fabiano Do Nascimento『Das Nuvens』
Quinn Oulton with Reuben James & Linden Jay「100 Degrees」
Gabi Hartmann『Gabi Hartmann』
Julia Sarr『Njaboot』
Ana Frango Elétrico『Me Chama De Gato Que Eu Sou Sua』
Genevieve Artadi『Forever Forever』
Scott Orr『Horizon』
Asynchrone『Plastic Bamboo』
Bokani Dyer『Radio Sechaba』
2023年の年間ベスト、良い楽曲がたくさんございますが、やはり私はEd Mottaの新譜です。
前作から5年ぶりのアルバムは、変わらない抜群なAORサウンドに、ワルツやジャズ、ブルースまで飽きさせることはないアプローチに脱帽です。
ぜひ、来日公演を心待ちにしております。
ご本人は来日したあかつきには北海道で毎日ウニが食べたいようなので、ぜひアテンドしたいです(笑)。
Ed Motta『Behind The Tea Chronicles』
2023年のベスト・セレクションは、冒頭に選んだ王道のアプレミディ・テイスト溢れるgrentperez「Why I Love You」に導かれる、Liana Flores「Recently」やLaufeyの「From The Start」から、Benny Sings & Remi Wolfの「Pyjamas」への流れに象徴されるように、選曲前半には、僕のミュージック・ライフの原点回帰ともいうべき“bossa”系トラックが自然と並ぶことに。また後半には、昨年から今年にかけて世界中のインディー・シーンで好リリースが続くフリー・ソウル系リヴァイヴァルの中から、Mamas Gunの「You Make My Life A Better Place」やMatt Corbyの「Lover」等、「usen for Cafe Apres-midi」のセレクションで出会ったキラー・チューンを続けてセレクトしました。そうやって完成した今年のベスト選曲を繰り返し聴きながら、改めて確信したことは、「usen for Cafe Apres-midi」の中で20年以上続けてきた僕らのエヴァーグリーンな選曲テイストは、新しく奏でられた現代進行形のアーティストの新しい街音としても全く色あせることなく今もフィットし続けていることでした。
grentperez『Conversations With The Moon』
Laufey「From The Start」
Mamas Gun『At PizzaExpress Live - In London』
12月の第2日曜に仙台に行ってきました。BALEARIC COFFEE ROASTERで橋本さんがDJをされたイヴェント「Good Mellows For Pageant Of Starlight celebrates Free Soul」のためです。僕にとっても師走の恒例行事となっていて、定禅寺通りの光のページェントを見ながらシャンパーニュを飲んだり、その前にお寿司や牛タンを食べたりというのは、忙しいこの時期に元気をもらえるアクセントになっています。ちょうどベスト・セレクションを納品するくらいの時期なので、イヴェントのDJやお客さんの方と年間ベスト・アルバムについての話になることもしばしば。音楽で知り合った人との縁が続いていくのもまた感慨深いものがありますね。
さて、2023年のベスト・アルバムですが、パール&ジ・オイスターズの『Coast 2 Coast』にしました。夏には「Pacific Ave」「Konami」を本当によくプレイしたというのと、最近リリースされたリミックス盤ではヴィッキー・ファアウェル、ジェリー・ペイパー、Brijean、サラミ・ローズ・ジョー・ルイスといったLAのインディー・ポップ周辺で活躍する面々が参加していたからというのがその理由です(ストーンズ・スロウ・レーベルにはいつもお世話になっているから、というのもあるかもしれませんね・笑)。もう何枚か挙げるとするなら、まずはJonah Yanoの『Portrait Of A Dog』ですかね。こちらは内省感が素晴らしいジャジーでフォーキーなSSW作品。アナログでじっくり聴きたい作品ですが、ストリーミングでもヘヴィー・ローテイションしていました。スウェーデン発の陽だまりのようなサイケ・ポップを奏でるDina Ögon『Oas』もセレクションでずいぶんお世話になりました。どの曲も人懐っこさがあるところが好きです。あと一枚はやっぱりサンファ『Lahai』でしょうか。こちらもリリース以来ヘヴィー・プレイしていて、今回は流れ上「Suspended」をエントリーしましたが、どの曲も甘美で深遠なメロウ・ワールドが広がっています。
今年も2ヴァージョン制作したセレクションは、珍しく双子のように似た仕上がりになりました(例年だとテイストがジャズ寄りとかR&B寄りとかに偏ってしまうのです)。どちらも「usen for Cafe Apres-midi」のパブリック・イメージを象徴するようなカフェ・ミュージック的なテイストで始まり、少しずつ心躍るようなグルーヴィーなテイストを増していき、ラスト近くはじんわりと沁みる曲で締めるという展開ですね。僕のセレクションはポップな感じになることが多いので、アンビエントなどの静かめなテイストはあえて外したところがあります。来年以降はそういったものもうまく織り交ぜていければいいのですが。
2023年はミュージシャンの訃報が多かったのもとにかく印象的でした。ぱっと思いつくだけでも、坂本龍一さん、高橋幸宏さん、チバユウスケさん、バート・バカラック、トゥルーゴイ・ザ・ダヴ、ボビー・コールドウェル、アーマッド・ジャマル、アストラッド・ジルベルト、ジェーン・バーキン、ロビー・ロバートソンなどなど……。年代はさまざまですが、みな僕に影響を与えた音楽家たちです。坂本さんの曲は尺の都合もあってセレクションには未収録ですが、亡くなる数か月前にリリースされた『12』中の「20220123」がアンビエンスも含めとても好きな曲です。もしよろしければ、ブラッド・メルドー「Here, There And Everywhere」に続けて聴いていただければ嬉しいです。ということで、今年も一年間ありがとうございました! 来たる新年もよろしくお願いいたします!
Pearl & The Oysters『Coast 2 Coast』
今年はミュージシャンの熱い想いを乗せたグルーヴィーなサウンドが私の目の前で常に舞い上がっておりました。
いつもなら、ニュー・ディスカヴァリー的な旧譜の知られざるレア・グルーヴを1〜2曲収録するスタイルがここ数年だったのですが、新作が楽しすぎました。
実はベスト・セレクションを2種類作ったほど。ということで自分の中のパート1をベスト・セレクションとして放ちます。
そんな中でもMeernaaのアルバム『So Far So Good』はイメージを打ち壊すほど心地よく深く、何度も聴き返しました。
テリー・キャリアーの名前を出すのは苦笑いされる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は並ぶほどの奥深さを感じました。
Joe Yorkeのダブダブなクールで腰に染みるアルバムに、奇跡のルーツ・レゲエではなくルーツ・モータウンな、マーヴィン・ゲイやサム・クックが生き返ったような泣きじゃくりながら踊りたい「Dreaming」。こんな曲をドーナツ盤で欲しいなあ。
Matt Corbyは、我が故郷と姉妹都市のオーストラリア・ニューキャッスルで活躍するシンガー・ソングライター。都市の復興からの復活作の渾身のパワー漲るソウルフルなブルー・アイド・ソウル楽曲に脱帽。
などなど、もう食べられませんを超えるほどの新作の素晴らしさ。と自分のベスト・セレクションを説明することよりも、橋本さんはもちろん他の選曲メンバーのベスト・セレクションが楽しみで仕方ありません。来年もより一層素晴らしい音楽が日常生活にあふれますように。
DINGO『A Vida é Uma Granada』
Meernaa『So Far So Good』
Beharie『Are You There, Boy?』
Sam Blasucci『Off My Stars』
The Everettes『Soul Steps』
Jessie Ware『That! Feels Good!』
Skeleten『Under Utopia』
Unknown Mortal Orchestra『V』
Black Atlass『Infinite』
Joe Yorke『Hopeless』
Sofie Winterson『Southern Skies』
Matt Corby『Everything's Fine』
PWNT『Play What's Not There』
Tagua Tagua『Tanto』
Moon『BEYOND THE MOON』
ANOHNI And The Johnsons『My Back Was A Bridge For You To Cross』
Gareth Donkin、Pedro Martins、Cleo Sol、Michael David、Kingo Hallaといった、2023年を彩ったアーティストの自分が知っている曲をセレクトしました。どれも好きな曲ばかりですが、中でも、ボン・イヴェールの中心メンバーのS. キャリーとトランペット奏者ジョン・レイモンドのプロジェクトにピアニストのアーロン・パークスが参加した『Shadowlands』を秋に聴いて、あっという間に虜になった印象が強く残っています。2023年も「usen for Cafe Apres-midi」のおかげで多くの素晴らしい音楽に出会うことができました。
S. Carey & John Raymond『Shadowlands』
何度も何度も言いますが、時の流れは早いもので、あっという間に2023年が過ぎようとしています。1年前のコメントを見直すと同じようにこう書いていました。「自分の体感的にはほんの先日2022年になったばかりの感覚ですが、早いものでもう12月に入り、今年もあと残すところわずかとなりました。皆さんにとって2022年はどのような1年でしたか?」と……。歳を取ると月日の経つのが早く感じると言いますが(ジャネーの法則)、同じことを何度も言ってしまうのも年寄りの証なんでしょう(泣)。
さて今年のベスト・セレクションですが、今回も例年通り2パターンを作成。ベスト・セレクション・パート1は、カナダのモントリオールで活動する女性アーティスト、Josie Boivinの音楽プロジェクト、MUNYAの10月にリリースされたセカンド・アルバム『Jardin』収録曲の「Koko」をセレクトしてスタート。彼女の作品はデビュー時から追っていますが、本当にどれも素晴らしく、今回の新作もその全てが素晴らしいですね。それに続くのがスウェーデンのアーティスト、Wa'elが今年初めにリリースした「Yes It Matters!」と、こちらもスウェーデンはストックホルム出身の女性アーティスト、Curiositi の「Moon」。ニューヨークで活動する女性アーティストJordanaがロサンゼルスのバンドInner Waveとコラボレイトした「Baby」は60sの香りがするスウィートなナンバー。そして元チェアリフトという肩書は必要としないほどソロ・アーティストとしての活躍が目覚ましいキャロライン・ポラチェックですが、本人名義としては2作目となる『Desire, I Want To Turn Into You』が今年ようやくリリースされ、その中から「Pretty In Possible」をピックアップ。各々の作品が普段のセレクションで幾度となくチョイスされ常連となっている、カリフォルニアで活動する男性アーティストPoolsideとミネアポリスの男性デュオ・ユニットVansireがコラボレイトした「Float Away」は言わずもがなにベスト・セレクション入り。アメリカの女性アーティスト、mazieのデビュー・アルバム『blotter baby』収録曲「Are You Feeling It Now」と、韓国系オーストラリア人アーティストMunanのデビューEP『Tranquility』収録の「Comes In Two」は、ソフトでメロウな良質のダンス・ナンバー。ループするアコースティック・ギターの響きがクールなビートを刻む、ロサンゼルス出身のkelzの「Sometimes」は、同郷のカリフォルニアはヴェニスを拠点に活動するマルチ・インストゥルメンタリスト、Alex Siegelをゲストに迎えた作品。テキサス州エルパソ出身のドリーム・ポップ/アンビエント・ポップ・バンド、Cigarettes After Sexの影を色濃く感じるニューヨークはレムサン出身のRiver Westinの「Blush」。Washed OutやM83などのアーティストから影響を受けたというロサンゼルスのチルウェイヴ・アーティストDivorce Courtの「Woodcrest」。ニューヨークで活動する女性アーティスト、Avalon Emersonの「Sandrail Silhouette」が収録されている最新アルバム『& The Charm』は、橋本さんも2023年上半期ベスト・アルバム50枚の中で取り上げていましたね。ベルリンを拠点に活動する男性アーティスト、Group Hugのチェンバー・フォーク・ソング「Echo Park」は彼のデビュー・シングル。個人的にはMUNYAやキャロライン・ポラチェック同様に待ち望んでいたニュー・アルバム『Grapes Upon The Vine』をリリースしたTV Girlは、その中からアルバムのトップを飾る「I'll Be Faithful」をピックアップ。そしてパート1の締めくくりとしてBeabadoobee と Clairoという人気アーティスト同士の競演となった「Glue Song」をセレクト。
ベスト・セレクション・パート2は、自分的今年のベスト・オブ・ベスト・セレクションに選ばれたカナダのモントリオールで活動する女性アーティスト、Fleur Electraの「Your Darling」をピックアップしてスタート。この透き通った青空のような素敵な作品は、心を清く浄化してくれるような透明感のある美しいナンバーです。以下に続けたのが、2023年のセレクションでほぼ毎回顔を出していたミシガン出身の男性デュオ・ユニット、Cal in Red の「Sink」。カリフォルニア州フレズノ出身のNathan Taylorの音楽プロジェクト、Valley Palaceの「Time With You」。ロサンゼルスの男女デュオ、Veronicavon の「Dreamgirl」。パート1でもセレクトしたAvalon Emersonのパート2収録曲は「Astrology Poisoning」。モントリオールの5人組バンドGrand Eugèneの最新アルバム『Grand Eugène』収録曲で、コケティッシュなフランス語の響きが可愛らしい「Bye-Bye」。11月には来日公演も行ったマレイシア出身の5人組シティ・ポップ/シンセ・ポップ・バンド、Babychairの「Time」。ロンドン出身の女性アーティスト、Metteの「Van Gogh」。配信シングルとしてリリースされたのは2021年ですが、ようやくアルバム収録という形でフィジカル化されたキャロライン・ポラチェックの「Bunny Is A Rider」。Cal in Red同様に2023年のセレクションで頻繁に使ったフィンランドはヘルシンキの男女デュオPearly Dropsの最新EP『Haunted Expansion Pack』収録曲「Haunted」。ヴァージニア州を拠点に活動するStevedreezの、殿下の影がちらつくミネアポリス・サウンド「Crystal Ball」。モントリオールの女性アーティスト、Sophie Ogilvie のドリーミーなソフト・シューゲイザー「Milk Glass」。聴いた瞬間から中毒性があり、サビのフレーズが何度も頭の中をループするニュージーランド出身の5人組バンドLeisureとロンドンの3ピース・ユニットNight Tapesとのコラボ作品「All The Good Times Never Die」。カリフォルニア州オークランドを拠点とするシンガー・ソングライター、Stephen Steinbrink の5年ぶりとなるニュー・アルバム『Disappearing Coin』収録曲で、アコースティックな響きが心地よい「Cruiser」。郷愁感あふれるニューオーリンズ出身の男性デュオ、Video Ageの最新アルバム『Away From The Castle』収録曲「Is It Really Over?」。儚げな女性ヴォーカルが白日夢の中に手招きする、ニューヨークの男女デュオ、Bubble Tea And Cigarettesの「French Movie」。そしてベスト・セレクション最後の大団円には、まるで映画のエンドロール曲のようにノスタルジックに響く、オーストリアはメルボルンの男性アーティスト、Rinseの「Does It Feel Like Heaven?」をピックアップして、2023年を締めくくりました。
そして最後に、毎年書いている個人的2023年のベストな出来事です。今年もいろいろと映画にまつわる貴重な体験をしましたが、『ラスト・ショー』や『ペーパー・ムーン』(残念ながら先日ライアン・オニールが亡くなりましたね)の監督として有名なピーター・ボグダノヴィッチのデビュー作『殺人者はライフルを持っている!』のブルーレイがついに今年、アメリカの映像ソフト会社、クライテリオン・コレクション社から発売されました。この作品は実際に起きたテキサスタワー乱射事件を元に、低予算と制作者のロジャー・コーマンの難題ともいえる条件をピーター・ボグダノヴィッチの素晴らしいアイディアで解決し、映像化された大好きな作品です。長年高画質の映像で鑑賞したいと思っていましたが、やっとその願いが叶いました。今まで発売されていたDVDもそこそこ画質の良いものでしたが、やはりブルーレイで鑑賞すると満足度が格段に違いますね。そしてこの作品も幻のTV放送吹き替え版が存在するのです。ウィキペディアにはその情報が記載されていませんが、1975年に東京12ch(現テレビ東京)の『火曜名画劇場』という番組で初回放送されたという情報を教えていただきました。さらに再放送版ですが、その幻級と言われている貴重な吹き替え放送の映像も観賞することができました。これが個人的今年の大事件……とする予定だったのですが、数日前にそれを上回る幻の吹き替え映画を鑑賞することができました。それは大学生のときに鑑賞してショーン・ペンという役者に衝撃を受けた『バッド・ボーイズ』という作品です。まさか1989年に『木曜洋画劇場』で放送された吹き替え版を鑑賞できる日が来るとは思いませんでしたが、2023年を締めくくるにふさわしいサプライズな出来事でした。最後にちょっとしたトリヴィアをご紹介しましょう。『殺人者はライフルを持っている!』には役者を始めて日が浅い若きジャック・ニコルソンが端役(ちょい役)で出演しています。そして『バッド・ボーイズ』のショーン・ペンの敵役を務め、この映画がデビュー作となっているイーサイ・モラレスは、日本ではそれほど認知度が高い役者ではありません。しかし今年公開された『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』では、次回作でも作品のキーマンになるであろう、ガブリエルと言う大役を担っていましたね。
2023 Best Selection Part1
MUNYA『Jardin』
Wa'el「Yes It Matters!」
Curiositi「Moon」
Inner Wave x Jordana「Baby」
Caroline Polachek『Desire, I Want To Turn Into You』
Poolside『Blame It All On Love』
mazie『blotter baby』
Munan『Tranquility』
kelz feat. Alex Siegel「Sometimes」
River Westin「Blush」
Divorce Court『Two Hours』
Group Hug「Echo Park」
Avalon Emerson「Sandrail Silhouette」
TV Girl『Grapes Upon The Vine』
Beabadoobee & Clairo「Glue Song」
2023 Best Selection Part2
Fleur Electra「Your Darling」
Cal in Red「Sink」
Valley Palace「Time With You」
Veronicavon『Deep End』
Avalon Emerson『& The Charm』
Grand Eugène『Grand Eugène』
Babychair「Time」
Mette「Van Gogh」
Pearly Drops『Haunted Expansion Pack』
Stevedreez「Crystal Ball」
Sophie Ogilvie『Coming Up, Crocus』
Leisure & Night Tapes「All The Good Times Never Die」
Stephen Steinbrink『Disappearing Coin』
Video Age『Away From The Castle』
Bubble Tea And Cigarettes「French Movie」
Rinse「Does It Feel Like Heaven」
Seth Austin「Skies」
2023年はアンビエント的な曲を、例年よりも多く聴いた年でした。
心の解放が生活のテーマで、それに伴って音楽を聴いていたような気がします。
その中でもアンビエント的な音楽では、Ben Vida with Yarn/Wire & Nina Dante、Laurel Halo、Thandi Ntuli with Carlos Niño、Hollie Kenniff、Gia Margaret、少しグルーヴィーな音楽ではGretchen Parlato & Lionel Loueke、John Roccaあたりをよく聴いたでしょうか。
2023年も数多くの素晴らしい音楽体験ができて、とても充実した一年になりました。1時間×2枠にとてもおさまりませんが、ベスト曲を詰め込んだので、楽しんでいただけたら嬉しいです。漏れた曲は、Spotifyにアップしようかと思っているので、そちらもチェックしてみてください。2024年も音楽に満たされて、そして世界の人々にとって新たな美しい世界が開かれて、平和な一年になるよう祈っています。
Ben Vida with Yarn/Wire & Nina Dante『The Beat My Head Hit』
Laurel Halo『Atlas』
Thandi Ntuli with Carlos Niño『Rainbow Revisited』
Hollie Kenniff『We All Have Places That We Miss』
Gia Margaret『Romantic Piano』
Gretchen Parlato & Lionel Loueke『Lean In』
John Rocca『Reflections Of The Sun』
Ítallo『Tarde no Walkiria』
2023年はふたたび戦火が交わる年として記憶されることになりました。
これまでの、少なくとも30年ほど前の、生活様式や慣習、そして人々の意識はいったん足元に置いて、これからの将来を見通すための準備(勉強)をせねばなりません。戦後、世界情勢がここまで不透明で、「自国ファースト」を謳った時代もなかったでしょうし、現代のスピード感のまま追いついてしまった「末法」の再来には、驚きを禁じえません。
ともかく。
世界を生きるわれわれが幸せになるにはどうすればよいのか。
まずはお互いが真剣に考え、気持ちは前向きに前進してまいりましょう。
重い空気を発酵させ、旨味を抽出してくれたマシュー・ハルソールのアルバムに、私たちが生きていく上で必要なマインドが詰まっているような気がします。2023年も私たちの選曲をご贔屓くださり、ありがとうございました。
Matthew Halsall『An Ever Changing View』
コケティッシュな歌声のふたり、Kate Bollingerの「J'aime Les Filles」とGaldiveの「Window」から始まった2023年。今年も全選曲からあらためて耳だけで選び直した楽曲を上半期と下半期と2本に分けてピックアップ。
上半期から選んだ楽曲は、不思議とUK勢、LA勢が多かった。女性ヴォーカルではブリストルのSloweの「Superego」、ロンドンのKasia Konstanceの「So Much Better」、Aurora Dee Raynesの「Something Sensible」、Olivia Deanの「UFO」など、マイルドなソウル・フレイヴァーを漂わせた楽曲が並んだ。男性ヴォーカルではハンドクラップでストリートに駆け出すようなロンドンのRunning Loving Somethingの「I Love The Feeling」、弾むビートにメロウ&マイルドな歌が心地よいSteven Bamidele feat. Scarlett Faeの「Kaleidoscope」が印象的。LA勢は、ビーチを吹き抜ける潮風のように夏を連れてきたMichael DavidのSam Wilkesのベースをフィーチャーした「Double Meaning」やPaul Grantの「Rivers」、John Carroll Kirbyの「Gecko Sound」、そして7インチEPでリリースされたThe Roswell Universeの抑制の効いたクールなブギー・チューン「Come Up」も、2023年の夏を印象づけた。
下半期は、ヨーロッパ各国のアーティスト作品が耳に留まった。下期のベストに挙げたのが、スペインのSSW、Carlos Abril。「Dancing In My Room」の柔らかなギターとリズムにメロウ&スウィートな歌声が密やかな高揚感を誘う。イスラエルのポップ職人iogiは、皮肉にも『We Can Be Friends』というタイトルのアルバムをリリースした翌日に、あの戦争が始まってしまった。「Slow Step On Quality Wood」や「6am」などの楽曲を複雑な思いで聴いた。スイスのMelodiesinfonieは安定のメロウなトラックをリリースし、特にギターとシンセがたゆたう「Alp Dream」は、オランダのJonny Nashの揺らぐアンビエント・ギターとも相性がよかった。その他上半期も含め、ストックホルムのプロデューサーHNNYの「Spring」や、韓国のSalamandaがリミックスしたUKで活動する日本人Anchorsongの「Windmills」、東京のTOMCの「Ambience」などのアンビエント的なトラックは、どれもが選曲の流れに変化をつけるよいアクセントになった。
そして、年間を通して、印象に残ったアーティストは、上半期、下半期ともに楽曲を選んだLAのSSW、Kauai45。上半期の「Risk」や下半期の「Love Never Felt So Good」「All We Do For Love」など、その切ない歌声と極上のメロディーが胸に沁み、今年リリースされたシングルやアルバムはどれもが選曲に艶やかさを与えてくれた。
Kauai45『Nice & Steady』
Carlos Abri『Dancing in My Room』
2023年のBest Selectionでは、William Fitzsimmons〜Eloise〜Bruno Major〜Kingo Halla〜Joey Dosikといった一年を通して使用頻度の高かった、まさにベスト・オブ・ベストとも言うべき作品を中心に、セレクトさせていただきました。ますます不安定化していく世界情勢と反比例するかのように今年も心に残る作品が多かったように思います。2024年も「生きているハンドメイド・チャンネル」として、皆様の心に響くような選曲をお届けしたいと考えております。来たる年が皆様にとって幸多き年となりますようお祈り申し上げます。
William Fitzsimmons『Covers, Vol. 2』
Eloise『Drunk On A Flight』
Bruno Major『Columbo』
Kingo Halla『Empty Hands』
Joey Dosik『The Nostalgic』
VことBTSのテテのソロ曲でBest Selectionを締め括った。テンポも声質も違うがさりげないマーヴィン仕草が見え隠れする、グローバルR&Bのネクスト・クラシック。陶然、恍惚、ただただウットリ。
V『Layover』
今年も2時間いただいて、1時間は僕なりのニュー・アプレミディ・クラシックを中心に、もう1時間は少しディープに深夜帯に心地よく響く楽曲を中心に編んでみました。アルバム単位ではJulia Sarrの『Njaboot』をベストに挙げたいと思います。楽曲の良さはもちろんですが、空間処理や録音も素晴らしくて、一年を通して繰り返し愛聴した一枚です。
Julia Sarr『Njaboot』
Sandrayati『Safe Ground』
Magalí Datzira『Des de la cuina』
MSAKI x TUBATSI『Synthetic Hearts』
Gretchen Parlato & Lionel Loueke『Lean In』
Matthieu Saglio『Voices』
Nico Paulo『Nico Paulo』
Laufey『Bewitched』
Lizzie Berchie『Am I An Adult Yet?』
PawPaw Rod『This Must Be A PawPaw Rod EP』
Tonique & Man『Opening Soon』
Eddie Chacon『Sundown』
The Breathing Effect『Eli & Harry』
Kingo Halla『Empty Hands』
Cleo Sol『Heaven』
Sampha『Lahai』
Jonny Nash『Point Of Entry』
A.M. Son「In A Dream」
Scott Orr『Horizon』
Lemon Quartet『ArtsFest』
Peace Flag Ensemble『Astral Plains』
Phi-Psonics『Octava』
Kara Jackson『Why Does The Earth Give Us People To Love?』
Thandi Ntuli with Carlos Niño『Rainbow Revisited』
Nico Georis『Cloud Suites』
Büşra Kayıkçı『Places』
Matthew Halsall『An Ever Changing View』
Aja Monet『When The Poems Do What They Do』
Bill Laurance & Michael League『Where You Wish You Were』
ミシェル・ンデゲオチェロの最新作『The Omnichord Real Book』は、自身から溢れ出るエネルギーの結晶であるが故に、様々なスタイルとアイディア、テンションが交錯するアルバムであるが、とりわけ「Hole In The Bucket」という楽曲に惹かれている。コーラスと歌に、とても的確にアレンジされたヴィブラフォンのみで構成される楽曲でありながら、この芳醇な世界はどうだろう。かのスティーヴィー・ワンダーの傑作『Innervisions』がリリースされたのは1973年で、2023年はちょうど50年後に当たる。それは色あせることなく、現在も鮮やかに輝き続けているように思うが、この「Hole In The Bucket」も間違いなく同種の光を放っている。これから50年後に、きっと僕はもうこの世にいないだろう。だが、新たな世代の心ある音楽ファンが、今日の僕と同じ思いでこの曲に触れていることを想像する。そして「usen for Cafe Apres-midi」リスナーの皆さんと今こうして、この力強くも美しい旋律を一緒に聴けることに、幸せを感じています。
Meshell Ndegeocello『The Omnichord Real Book』