見出し画像

Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2023 Early Spring Selection(2月27日~4月9日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする
「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が
それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る
「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら
D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

春の訪れが待ち遠しいこの時季、少しずつ暖かい季節に移りゆく早春の風景と心象をイメージしながら、様々な思いや希いを素晴らしい音楽にこめて、今回もメロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、計34時間分を新たに選曲しています。
月〜日を通してのTwilight-timeの特集は、僕のコンパイラー人生30周年を祝してリリースされたコンピ『Blessing ~ SUBURBIA meets P-VINE "Free Soul × Cafe Apres-midi × Mellow Beats × Jazz Supreme"』発売記念企画として、これまでに監修・選曲を手がけた350枚におよぶオフィシャル・コンピレイションの収録曲をシャッフル・プレイ放送で。過去30年間の歴史と思い出が詰まった、とても感慨深いセレクションとなりましたので、この30年を振り返った僕のインタヴューと共に、お楽しみいただけたら嬉しいです。
その他の時間帯は、ほぼ年始から大充実のニュー・アライヴァルで構成していますが、とりわけ活躍してくれた40作のジャケットを、アーティストABC順に掲載しておきますので、ぜひその中身にも触れてみてください。中でも特に気に入っている3作を挙げるとしたら、Afternoon Bike Ride〜Jonah Yano〜Julia Sarrでしょうか。我が家で人気のGabi Hartmann始め、Magalí Datzira〜Nara Pinheiro〜Núria Graham〜Sandrayati〜Siv Jakobsenなど、早春に相応しい女性SSWのアルバムが豊作だったことも、付け加えておきましょう。

V.A.『Blessing ~ SUBURBIA meets P-VINE "Free Soul × Cafe Apres-midi × Mellow Beats × Jazz Supreme"』
Afternoon Bike Ride『Glossover』
Alaskan Tapes『Who Tends A Garden』
Andy Shauf『Norm』
Anna Wise『Subtle Body Dawn』
Azekel『Analyze Love』
Brad Mehldau『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles』
Brendan Eder Ensemble『Therapy』
Dina Ögon『Oas』
Eloise『Drunk On A Flight』
Emilio Teubal『Futuro』
Gabi Hartmann『Gabi Hartmann』
Gabriel Da Rosa『É o que a casa oferece』
Hollie Kenniff『We All Have Places That We Miss』
Joe Henry『All The Eye Can See』
Joesef『Permanent Damage』
Jonah Yano『Portrait Of A Dog』
José Arimatéa『Brejo Das Almas』
José James『On & On』
Julia Sarr『Njaboot』
Kelela『Raven』
Lance Skiiiwalker『Audiodidactic』
Liv.e『Girl In The Half Pearl』
Lucas Santtana『O Para​í​so』
Magalí Datzira『Des de la cuina』
Manjari Lila『The Garden Beyond』
Maxo『Even God Has A Sense Of Humor』
Nanna. B『Don't Come If You Can't Bring No Flowers』
Nappy Nina『Mourning Due』
Nara Pinheiro『Tempo De Vendaval』
Núria Graham『Cyclamen』
Oddisee『To What End』
Omar Sosa & Tiganá Santana『Iroko』
Rachael & Vilray『I Love A Love Song!』
Sam Gendel『COOKUP』
Sandrayati『Safe Ground』
Seany Clarke『First Aid Kit』
Siv Jakobsen『Gardening』
Strongboi『Strongboi』
Walker『Phew』

Dinner-time 土曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~10:00
Brunch-time 月曜日10:00~12:00
Brunch-time 火曜日10:00~12:00
Brunch-time 水曜日10:00~12:00
Brunch-time 木曜日10:00~12:00
特集 月曜日16:00~18:00
特集 火曜日16:00~18:00
特集 水曜日16:00~18:00
特集 木曜日16:00~18:00
特集 金曜日16:00~18:00
特集 土曜日16:00~18:00
特集 日曜日16:00~18:00



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

アーティストの読みもわかっていませんが、ここ最近、一番気に入ったアルバムが
Chase Ceglieの『Chaseland』です。チェイス・セグリエ? って読むのでしょうか? 
それともチェイス・シグリー? フォーキーでポップなスタイルで、ベースが唸るグルーヴィーな曲や包み込むような優しい曲が春の気分に合っています。

Chase Ceglie『Chaseland』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00
Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00



中村智昭 Tomoaki Nakamura

普段ラジオで同じ放送を繰り返し聴くということはほとんどないのですが、2023年1月22日の25時から放送されたInterFM「細野晴臣 Daisy Holiday!」は、許される限りリピートしました。高橋幸宏さんの訃報を受けて制作された、細野さんの語りと選曲による高橋幸宏さんの音楽集。それは、まるで番組そのものが、二人による最後の作品のように感じられる素晴らしいものでした。この「Blue Moon Blue」からスタートするたった30分にも満たないそれは、“永遠”とも思えたのです。USENチャンネルの放送形態はより匿名性の高いものですが、それでも選曲がどこかの誰かの気持ちを明るくしたり、ふとした瞬間に心をほんの少しでも癒すことに繋がることをイメージしながら、より丁寧に紡いでいく決意を新たにいたしました。

Yukihiro Takahashi『Blue Moon Blue』

Dinner-time 月曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

締め切りの関係で今回のEarly Springが今年最初の選曲になるのですが、年末年始をのんびりと過ごすことができたので、封を開けてなかったアナログ盤や溜まっていた新譜をゆっくりと聴いて、気分を新たに28枚ピックアップ。アルバム単位ではセネガル出身の女性ヴォーカリスト、Julia Sarrの新譜がホント素晴らしい出来。前作に引き続きFred Soul(彼の『La comédie des silences』も必聴です)やAlune Wadeが参加した透明感のある瑞々しい音像が早春にピッタリの一枚だと思います。

Julia Sarr『Njaboot』
Low Chord『LC02』
Andrew Wasylyk『Parallel Light』
Christina Galisatus『Without Night』
Fabiano Do Nascimento feat. Arthur Verocai & Vittor Santos e Orquestra『Lendas』
Omar Sosa & Tiganá Santana『Iroko』
Cicada『Seeking The Sources Of Streams』
Luciana Viana e Eddy Andrade『Raízes Nas Nuvens』
Gabriel da Rosa『É o que a casa oferece』
Emanuel Harrold『We da People』
Fruit Distro Collective『Some Kind Of Wisdom』
ADJA『IRONEYE』
Jonah Yano『Portrait Of A Dog』
Contour『Onwards!』
MATTERS UNKNOWN『We Aren't Just』
José James『On & On』
Barney McAll『Precious Energy ReUp』
Billy Valentine『Billy Valentine & The Universal Truth』
Bill Laurance & Michael League『Where You Wish You Were』
To Move feat. Anna Rose Carter, Ed Hamilton & Alex Kozobolis『To Move』
Andert Tysma『Children Of Trinoom』
Trina Basu & Arun Ramamurthy『Nakshatra』
Alexandra Hamilton-Ayres『Play Echoes』
Diana Yukawa『Spirals』
Fieldhead『Engine Idling, Around 5am』
Mette Henriette『Drifting』
Brueder Selke『Marienborn』
Ryuichi Sakamoto『12』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00



中上修作 Shusaku Nakagami

トニー・ベネットに師事し、ニューヨークを中心に活躍するアラン・ハリスの最新作から「New Day」を。ニューヨークのみならず世界を股に活躍する伝説的ハウスDJ、ジョー・クラウゼルの12インチでもその渋いヴォイスを聴かせてくれた彼が、自身の音楽的ルーツに戻ったかのような自然体でリラックスした雰囲気のミディアム・ナンバーです。

オーガニックな雰囲気を保ちながらも気持ちが「上がる」のは、スタジオの空気を震わせたポジティヴなヴァイブレイションがそのまま届いているからなのでしょう。ビル・ウィザース「Lovely Day」への彼なりの回答、といえるかもしれません。

春の足音、はやく届け!

Allan Harris『Kate's Soulfood』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



高木慶太 Keita Takagi

微に入り細に入り、それはそれは見事なマーヴィン芸。そのクオリティーは人力AIのごとし。「わかってやってる」のは言わずもがな。こういう作品が”Death Row”という、長らくウェッサイの玉座を独占してきたハードコアなヒップホップ・レーベルからリリースされること自体に身震いがする。ソウル・ミュージックの大動脈と化したマーヴィン・ゲイの影響力たるや、生誕80余年を迎えてなお衰えることなし。

October London 『The Rebirth Of Marvin』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00
Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

デリア・フィッシャーとヒカルド・バセラールによるジルベルト・ジルのカヴァー・アルバムから、ジルの曲の中でも特に大好きな「Palco」のカヴァーがとりわけ素晴らしい。原曲はアース・ウィンド&ファイヤー・タイプの盛り上がるブラジリアン・フリー・ソウルなんですが、このカヴァー・テイクは、ハートウォーミングな仕上がりで、どちらも甲乙つけがたく最高であります。
パルコと言えば、アプレミディ・セレソンが入っていた渋谷パルコを思い出しますが、私の住む釧路にもパルコがありました。
ただ、本家本元のパルコ系列ではなく、地元独自のパルコでした。70年代から80年代まではスルーされてましたが、90年代に入った頃にクレームが入り名前が変更されましたが、インターネットのない大らかな時代の小話でございました(笑)。

Delia Fischer & Ricardo Bacelar『Andar Com Gil』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

2023年Early Spring Selectionでは、以前ここでもご紹介させていただいたサウス・ロンドンの注目アーティスト、edbl(エドブラック)を大々的にフィーチャーさせていただきました。大分県出身のギタリスト、Kazuki Isogaiとのコラボレイション作から、Taura Lambの歌声が美しいネオ・ソウル「Lemon Squeezy」をはじめ、イースト・ロンドンのイラストレイター/ラッパー、Kieron Bootheを迎えた「Could Be U」、R&Bシンガー・ソングライター、MALIYAとのコラボ曲「Into You」、そして彼が2022年にリリースしたアルバム『Brockwell Mixtape』から「Taken」等々。彼の作品はどれも彩り豊かで、これから春に向かうこの季節にしっくりくるのではないでしょうか。興味のある方はぜひチェックしてみてください!

edbl & Kazuki Isogai『The edbl × Kazuki Sessions』
MALIYA feat. edbl「Into You」
edbl『Brockwell Mixtape』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

お世話になった音楽業界の先輩が続けてお亡くなりになり、悲しみを堪えきれない状況を音楽を聴きながら気持ちを前向きに捉え、自分にできることを日々少しずつ最善を尽くしていこうと改めて前向きに考えながら、選曲しております。と同時に久々にラジオ番組が2つスタートし、久々の相棒と音楽談義を途切れることなく楽しく面白く会話は続く、こんな時間こそ大切にしていかねばと感じております。そんな会話の中で出てきたアメリカン70sリヴァイヴァルなDrugdealerやSylvieを聴きながら、フリーボやキリンジそしてサニーデイ・サービスの土臭さと都会のブレンドされたバンドの良さを再認識させられております。そんな想いに浸っていると、橋本さんの記念すべきコンパイラー人生30周年を祝う最新コンピ『Blessing ~ SUBURBIA meets P-VINE "Free Soul × Cafe Apres-midi × Mellow Beats × Jazz Supreme"』がリリース。めでたい!
皆さん購入されました? 改めて我々は、この選曲された音楽、レコードやCDと一緒に時間を過ごしてきて、想い出を刻んできました、と思わずにいられません。懐かしさより、当時の自分が針を落とした映像が湧き出てくる、素晴らしすぎるアルバム。本当の人生のアルバムです。
アプレミディ・サバービアンな音楽ファンの皆様の人生を振り返る素晴らしい時間を過ごせます。振り返ると素晴らしい音楽生活を送ってきたなと改めて良き人生だと想うのでした。

Drugdealer 『Hiding In Plain Sight』
V.A.『Blessing ~ SUBURBIA meets P-VINE "Free Soul × Cafe Apres-midi × Mellow Beats × Jazz Supreme"』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

スペインのバレアレス諸島にあるマヨルカ島出身のSSW、Maria Hein(マリア・ハイン)が2021年にリリースしたデビュー・アルバムを早春の一枚としてご紹介いたします。10代の瑞々しい感性で紡がれた、きらめきに満ちたメロディーと、ほんのりあどけなさが残る囁くような歌声は、どこか若葉の芽吹きを想起させ、まるで心に爽やかな春風が吹き抜けるような聴き心地。フォーク・ミュージックの素朴な手触りと、インディー・ポップのカラフルでフレンドリーな要素が、まろやかに溶け合う18歳の傑作。若草色のシャツに身を包み、やわらかな陽光が降り注ぐ草原に寝そべる彼女の姿を写し出した、この美しいジャケットにも強く心惹かれてしまいます。

Maria Hein『Continent i contingut』

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

昨年末から今年にかけて出会った素晴らしい音楽をメインに、「usen for Cafe Apres-midi」と自分が選曲する時間帯に合った選りすぐりの曲を4時間お届けします。
今回のおすすめはメロウでアンビエント的な音楽が多くなっています。Carlos NiñoやLaraajiが参加しているTurn On The Sunlightの「Naturally」やバレアリック・レーベルClaremont 56のコンピレイションにも入っているTaichi Arakawaの「Ocean Sunrise」、南アフリカの鬼才Felix Labandのドリーミーな「Dreams Of Loneliness」など、プライヴェイトでもよく聴いています。
早春の季節にほどよく馴染む音楽に耳を傾けていただければとても嬉しいです。

Fievel Is Glauque『Flaming Swords』
Turn On The Sunlight『You Belong』
Dina Ögon『Oas』
Madison Cunningham『Revealer』
Brad Mehldau『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles』
Peel Dream Magazine『Pad』
Pássaro『Antes de Existir o Mundo』
V.A.『Claremont Editions, Vol.3』
Felix Laband『The Soft White Hand』
Alex J. Price & Gabriel「Work Of Art」
Photay with Carlos Niño『More Offerings』
Adrian Younge & Ali Shaheed Muhammad feat. Phil Ranelin & Wendell Harrison「Fire In Detroit」
Cots『Moonlit Building』
Post Industrial Boys『Permanent Vacation』
SHEBAD『Show Us It's Real』
Leland Whitty『Anyhow』

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

少しずつ春を感じるこの季節のおすすめとして、選曲を始めた頃の甘い記憶を呼び起こしてくれるネオアコ感が最高なgrentperez「Why I Love You」を紹介します。「usen for Cafe Apres-midi」クラシック不朽の名曲、Lucinda Siegerの「Sunset Red」へのオマージュ・ソングかと思わせる、サバービア・ライクなコード進行のアコースティック・ギターのカッティングが心にビビッと響きます。このチャンネルのファンなら思わず「この曲、誰?」って問い合わせたくなるミラクルな1曲です。

grentperez『Conversations with the Moon』

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

“おれはさびしくなるよ ”。「You're Gonna Make Me Lonesome When You Go」は1975年にボブ・ディランがアルバム『Blood On The Tracks』の中で歌った楽曲。世代的に自分はイギリスのベン・ワットの1983年のファースト・アルバム『North Marine Drive』でのカヴァーが入口だった。
翻って2020年代。メジャー・マーフィーがこの曲をカヴァーした。ベン・ワットの歌の切なさから季節がめぐり、どこか希望を感じさせる温かな響きがある。
喩えるなら、ベン・ワットがイギリスのどんより雲った冬の北の海の風景だとすれば、メジャー・マーフィーは、風薫るミシガンの湖畔の春の訪れ。
こうして、音楽に春がやってきた。

Major Murphy「Lonesome」

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

「チョット・マッテ・クダサイ」
そんな思いでいっぱいなのですが、もう初春選曲の時期なんでねぇ。

ほんの先日2023年になったばかりだと思っていましたが、あっという間に2月も終わろうとしています。今年の冬は特に厳しい寒さでしたが、これからだんだんと暖かくなっていくことでしょう。冒頭に述べた「チョット・マッテ・クダサイ」というのはハワイの歌手、サム・カプーが1971年にリリースした「Chotto Matte Kudasai (Never Say Goodbye)」というサバービアでラウンジーな雰囲気を持つ素敵な作品です。ここ日本ではゴールデン・ハーフが同年にカヴァーして大ヒットさせた作品も有名です。また、この作品のオマージュかはわかりませんが、キング・クリムゾンの『Discipline』に収録されている『Matte Kudasai』も名曲ですね。自分も昔「usen for Cafe Apres-midi」で選曲したことがあるほど大好きな作品です。
しかしこれから暖かくなるのは嬉しいのですが、本当にあっという間に時が流れていくので心の中は正直「チョット・マッテ・クダサイ」という気持ちでいっぱいです……。

さて初春選曲ですが、まずは締め切りの関係で昨年のベスト・セレクションに入れそびれたアンディー・シャウフの新曲「Wasted On You」をピックアップしてスタート。これは本当に素敵な作品ですね。気の早い話ですが、たぶん今年のベスト・セレクションに入れる可能性は高い作品です。そしてニューヨークはブルックリンの女性アーティスト、Work Wifeの「Brian Eno」は、前回のコメントで今回セレクトすることを宣言していた、これまた素敵な作品です。そしてフランスはパリのエレクトロ・ポップ・デュオ、Agar AgarがJonathan Corynという方の制作したアルバム・タイトルと同名のヴィデオ・ゲームとコラボレイトしたニュー・アルバム『Player Non Player』からピックアップした「It's Over」や、一瞬イントロがヒューマン・リーグの名曲「Don't You Want Me(愛の残り火)」を思わせるCal In Redの新曲「Replay (Lounge)」、Amateur Hourのレモン・トゥイッグスを初めて聴いたときのような感動を覚えたマジカル・ポップなナンバー「I Need You」、ニューメキシコ州中北部にあるタオス出身の男女デュオAnima!のキュートなベッドルーム・ポップ「Stop Time」などもセレクト。ディナータイム前半の目玉はやはり、この春リリースされると言われているエヴリシング・バット・ザ・ガールの20年以上ぶりとなる新作から先行シングルとして発表された、PVも素晴らしい「Nothing Left To Lose」ですね。
ディナータイム後半は、スウェーデンの男性デュオ・ユニット、Robert Church & The Holy Communityの「MVP」、ブルックリンで活動するQuelle Roxの「Margarita」、カナダのオンタリオ州出身の女性アーティスト、Boyhood の「Pulling My Sink Off」などをセレクトし、ロンドンで活動するBiig Piigは「Ghosting」と「Only One」の2曲をピックアップ。アメリカはミシシッピ州の南部に位置するハッティズバーグで活動する、アンドリュー・ニューマンの音楽ユニット、Lo Noomのドリーミーでメランコリックなインディー・ロック「Change Your Mind」や、スウェーデンの男性アーティスト、Wa'elの「Yes It Matters!」も心が揺さぶられる素敵なナンバーです。そしてテニスの新曲「Let's Make A Mistake Tonight」も、安定感のある素晴らしさを見せるナンバーですね。
ミッドナイトからの選曲はまず、スウェーデンのエレクトロ・ポップ・バンドPacific!のメンバーであるDaniel Högbergの新しい音楽プロジェクト、Pocket PavilionsのデビューEP『Gondolas Traversing Lofty Peaks』収録の「Expo Transit System」をピックアップしてスタート。このEPは架空の万国博覧会のパヴィリオンで流れていそうなイマジナリー・ライブラリー・ミュージック集だそうです。前述したPacific!の作品ですが、2007年のセカンド・シングル「Sunset Blvd」が仲真史くんのレーベルEvery Conversation Recordsからもリリースされていましたね。それに続くのはロサンゼルスのシンガー・ソングライター、Ralph Castelliの疾走感のあるポップ・ナンバー「Four Below」。オーストラリアはゴールドコーストの3人組、Daste.の昨年末にリリースされた「Butterfly (so free)」や、アメリカの女性アーティスト、HYDの「Only Living For You」、アメリカはユタ州ソルトレイクシティーの男女デュオ・ユニット、Homephoneの「More Than Chemical」などもポップでキュートなナンバーですが、この時間帯のお気に入りは、カリフォルニアの男性デュオ・ユニット、CD Ghostのノスタルジック感のある80sテイストの「I Don't Wanna Live Forever」です。
ミッドナイト後半は、ユタ州にあるプロヴォという街で活動する男女デュオ・ユニット、Leopard Tuesdayの「Felix」や、オーストラリアはメルボルン出身の男性アーティスト、Freedsの昨年末にリリースされたセカンド・アルバム『Still Not Finished Yet』収録曲「Nerves」、ニューヨークはブルックリンで活動する3人組、Scrimmageの「Magma」、ノースカロライナ州シャーロットの4人組、Woahの「I Don't Want To Die When I'm With You」などの良質のドリーム・ポップをちりばめ、締めくくりにAngelo De Augustineがレーベル仲間のSufjan Stevensとコラボした「27」を配置してみました。

そして毎度の映画話ですが、2023年早々素晴らしいニュースが舞い込んできました。アメリカン・ニュー・シネマを代表する『バニシング・ポイント』の4Kデジタル・リマスター版がこの3月に50年ぶりに劇場で公開されるというのです。コワルスキーが運転するダッジ・チャレンジャーと、盲目のDJスーパーソウルが約半世紀ぶりのスクリーンへ帰還するのです。この作品には強い思い入れがあるのですが、日本語吹き替え版は2種類存在しており、そのうちのレーザーディスク版吹き替えのスーパーソウル役は小林克也氏が担当しています。2009年発売のコレクターズ・エディションDVDにはTV版吹き替えと共にこのレーザーディスク版吹き替えも収録され、さらにシャーロット・ランプリング出演シーンを含む幻のUK版も収録され、ファンを喜ばせたのですが、実はTV版吹き替えは完全版ではありません。これは一部吹き替えがカットされたTV再放送時の音声が使われたもので、世の中には吹き替えセリフがDVD版よりさらに長い、幻のTV初回放送音声というものが存在するそうです。
さらに嬉しいニュースとして、このコメント欄で何度も触れているベルナルド・ベルトルッチ監督の個人的最高傑作、『暗殺の森』も同じ3月に「4K修復版」としてUHD+Blu-rayという形でリリース予定です。当然すぐに予約をしたのですが、残念ながら今回も貴重なTV放送の日本語吹き替えは収録されていませんでした。しかし代わりと言っては何ですが、先の2月18日にベルトルッチ監督の『ラストエンペラー』オリジナル全長版の地上波吹き替え版(220分)がBS10のスターチャンネルにて放送されたのです。これは1989年に開局30周年を記念してテレビ朝日『日曜洋画劇場』のために制作され放送されたもので、それ以来34年ぶりの放送ということになりました。発売中の『ラストエンペラー 特別版』というソフトには142分しか吹き替えが収録されていないので、この完全版放送は映画ファンへのとても素敵なプレゼントになりましたね。

Andy Shauf『Norm』
Agar Agar「It’s Over」
Cal In Red「Replay (Lounge)」
Amateur Hour「I Need You」
Everything But The Girl「Nothing Left To Lose」
Robert Church & The Holy Community「MVP」
Boyhood「Pulling My Sink Off」
Biig Piig 『Bubblegum Mixtape』
Lo Noom「Change Your Mind」
Wa'el「Yes It Matters!」
Pocket Pavilions『Gondolas Traversing Lofty Peaks』
Ralph Castelli「Four Below」
Daste.「Butterfly (so free)」
HYD「Only Living For You」
Homephone「More Than Chemical」
Leopard Tuesday「Felix」
Freeds『Still Not Finished Yet』
Scrimmage「Magma」
Woah「I Don't Want To Die When I'm With You」
Angelo De Augustine & Sufjan Stevens「27」

Dinner-time 日曜日22:00~24:00
Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

非常に個人的な話で恐縮ですが、今年は自分の音楽リスナー歴30周年だと、勝手に宣言しているんですけど、いつを最初の年に定めるのかはともかく、1993年が自分にとって大切な年だったと改めて実感しています。春にTVのCMから流れてきたピチカート・ファイヴの「スウィート・ソウル・レヴュー」が発端となり、コーネリアスのソロ・デビュー3部作シングル、ジャミロクワイのファースト・アルバム、そしてオリジナル・ラヴの大ヒット「接吻」が、中学3年生の小僧を夢中にさせたのです(それらが伏線となり、その翌年に出会ったフリー・ソウルのコンピCDで人生が変わってしまうわけですが)。ということで、そういう節目の年はより一層と気合が入るわけで、フレッシュな気持ちを忘れずに、みなさんの心の琴線に触れるような音楽を、一曲でも多くお届けできればと思います。今回は、大好きなカナダのジャズ・ヴォーカリスト、バーブラ・リカが昨年末にリリースした新作の中から、今の空気にぴったりのメロウなジャジー・ソウル「Girls Like Me」をセレクト。その鮮やかで眩しい歌とサウンドが、早春のきらめきの中で流れるのをイメージしてみました。 ぜひお楽しみください。

Barbra Lica『Imposter Syndrome』

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

冬から春にかけての選曲は、真っ白いキャンヴァスに温かで柔らかな色彩を少しずつのせていきながら、ゆっくりと絵を描きはじめる感じにも似ているでしょうか。今回そんなイメージにとてもしっくりときた楽曲が、ジャズからスウェディッシュ・トラッド、オルタナティヴなど多彩なジャンルに手を広げるヴェテラン・ギタリストDaniel Ögrenと、こちらもソロ・シンガーとして活躍していたAnna Ahnlundを中心とするスウェーデンのDina Ögonの新作アルバムから先行公開された「Mormor」。どこか70年代的なデイドリーム感をコンセプトとしたようなシンプルなバンド・アンサンブルで奏でられるこの曲は、懐かしく優しい風景が早春の淡い陽の光のように心を満たしてくれ、まだまだ空気の冷ややかなこの時季に美しく溶けこんでくれそうです。
そして、このセレクションでは、追悼の意をこめて高橋幸宏さんが歌うバカラック・ナンバー「April Fools」をラストに収めていたのですが、納品後しばらく経ったときにバート・バカラック氏の訃報を聞くこととなり(僕が後々知ることになったのは、小学生のとき胸焦がし聴いていた曲の多くは、筒美京平、ポール・マッカートニー、そしてバート・バカラックが書いたものばかりだったこと)、思いもよらない哀しい偶然をもたらす結果となってしまいました。と、それに加えて、翌日の水曜日の同じ時間帯を担当するwaltzanovaさんとそのラスト・ナンバーが一緒だったという事実、このnoteの編集作業中に知りました……。

Gretchen Parlato & Lionel Loueke『Lean In』
Lucas Santtana『O Para​í​so』
Fabiano Do Nascimento feat. Arthur Verocai & Vittor Santos e Orquestra『Lendas』
Ian Lasserre『Meu Único Medo É Primavera』
Dina Ögon「Mormor」
Lionmilk『Intergalactic Warp Terminal 222』
Sandrayati『Safe Ground』
Sam Gendel『COOKUP』

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

2月の上旬、家の近くにある公園を散歩してきました。この公園には有名な梅林があり、もう少しすると梅まつりも行われます。まだ満開とまではいかないものの、三~四分咲きくらいの梅を見て、セレクションのコメントについてインスピレイションを受けました。というのも、季節が陽光のそれへと変化していくというイメージでEarly Spring Selectionを毎年セレクトしているからです。それとほぼ同時期に、武満徹の名が冠された東京オペラシティのホールで行われたブラッド・メルドーのコンサートにも行ってきました。僕が行ったのはオーケストラとの共演でバッハを演奏するという2月5日の昼公演です。今回のツアーでもこのプログラムは一回しかなく、貴重な機会ということもあって期待に胸を高まらせ臨んだのですが、予想通りのスペシャルな時間でした。ライヴ後も『After Bach』や『10 Years Solo Live』、そして出たばかりのビートルズ・カヴァー集『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles』(次回Spring Selectionで使いたい曲がたくさんです)を聴いて余韻に浸っています。オープニング・クラシックはそこで演奏されていた、ウェーベルンのアレンジによる『音楽の捧げもの』「6声のリチェルカーレ」を選びました。

そこからアニー・ロス歌う「Give Me The Simple Life」へ。ジェリー・マリガンのバリトン・サックスとアート・ファーマーのトランペットが浅い春のムードを描き出します。以前も書いたことがありますが、Early Spring Selectionで無意識のうちに意識しているのは柔らかさ。自然と女性ヴォーカルや木管楽器の割合が高くなりますね。あと、今回について言うとボサノヴァ・タッチ~ブラジリアン風味の曲が多くなりました。いくつかご紹介していきましょう。まずはTunico「Sambola」。ギター、トロンボーン、そしてサックスが交代でリードを取ったあと、まろやかなエレピ・ソロへと展開していく、まるでBN-LA時代のモアシル・サントスを思わせるような逸品です。アナログ盤も手に入れたジョン・ベルトランのプロジェクト、Sol Set『Olá de Novo』は春から夏に活躍してくれそうな曲ばかりですが、ここではAORフレイヴァーも香るラテン・ナンバー「Bliss Mode」を。桜の季節にぴったりだと思います。昨年の年間ベストに挙げていたセレクターの方も多かったブルーノ・ベルリは、このタイミングでセレクションにエントリーしました。ノスタルジックな世界を今に甦らせる男女デュオのレイチェル&ヴィルレイも、『I Love A Love Song!』という直球のタイトルも愛らしい新作が届けられました。ご機嫌なアコースティック・スウィング「Why Do I?」をセレクトしています。コリン・ブランストーンの『One Year』にオマージュを捧げたEP、テイクン・バイ・トゥリーズの『Another Year』からは寒い冬が終わり、春への息吹を感じさせる「Say Don‘t You Mind」を。Calmの月をテーマにした『Quiet Music Under the Moon-つきのおと』も好作でしたね。月にまつわるレコード好きな僕はこちらも手に入れて、シャロン・リドリーやレスリー・ダンカンの隣に並べています。他の新曲関連だとニュー・アルバムへの期待高まるアーロ・パークス「Weightless」、そしてミシェル・ンデゲオチェロをフィーチャーしたサム・ゲンデルの「Anywhere」も良かったです。空間を活かした音響デザインにミシェル・ンデゲオチェロの声の魅力がよく映えていて、ジョン・コルトレーンを思わせるようなフレーズを奏でるサム・ゲンデル自身のサックスも素晴らしいですね。

追悼関連についても触れておきましょう。近年も良作をリリースしていたデヴィッド・クロスビーは訃報が届いたタイミングで、橋本さんとファースト・アルバム『If I Could Only Remember My Name』についての会話になりました。橋本さんに50周年記念のLPを薦められたので、僕もすぐに購入し20年ぶりくらいに聴き直しましたが、そこで心打たれた「Song With No Words (Tree With No Leaves)」をエントリー。本当にしみじみする名曲です。セレクションのラスト・ナンバーは1月に亡くなった高橋幸宏さんの「April Fools」。幸宏さんの洋楽カヴァーから何を選ぼうか迷い、ニール・ヤング「Only Love Can Break My Heart」との二択になったのですが、最終的に2月末~4月上旬という放送時期を考慮して「April Fools」にしました。そしてつい数日前に伝えられたバート・バカラックの訃報。結果として両者を追悼する選曲となってしまいましたが、これも何かの縁なのでしょう。本当にここ最近、アーティストの訃報に接することが多いですが、彼/彼女たちが遺してくれた音楽や存在の輝きは永遠だという思いを強くしています。

Berliner Philharmoniker - Pierre Boulez『Boulez Conducts Webern・II (Passacaglia・5 Movements Op. 5・6 Pieces Op. 6・Im Sommerwind・Bach/Webern: Fuga (Ricercata)・Schubert/Webern: German Dances)』
Annie Ross feat. Gerry Mulligan Quartet『Sings A Song With Mulligan!』
Tunico「Sambola」
Sol Set『Olá de Novo』
Arlo Parks「Weightless」
Calm『Quiet Music Under the Moon-つきのおと』
Sam Gendel feat. Meshell Ndegeocello「Anywhere」
Taken By Trees『Another Year』
Rachael & Vilray『I Love A Love Song!』
Bruno Berle『No Reino Dos Afetos』
David Crosby『If I Could Only Remember My Name』
高橋幸宏『薔薇色の明日』

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?