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Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew

2023 Early Autumn Selection
(8月28日~10月8日)

橋本徹(SUBURBIA)を始めとする

「usen for Cafe Apres-midi」の選曲家17人が

それぞれのセレクトした音楽への思いを綴る

「Voice of “usen for Cafe Apres-midi” Crew」

詳しい放送内容はこちら

D-03 usen for Cafe Apres-midi
http://music.usen.com/channel/d03/



橋本徹(「usen for Cafe Apres-midi」プロデューサー) Toru Hashimoto

まだまだ厳しい残暑が続いていますが、ふとした風の肌ざわりに、そこはかとない秋の気配を感じとりながら、今回もメロウ&グルーヴィーで心地よい楽曲を中心に、計34時間分を新たに選曲しました(「夏服を着た小鳥たちが秋に向かって翔び立つのさ」なんて、くちずさんだりしながら)。
月〜日を通してのTwilight-timeの特集は、2023年上半期のベスト・トラック集をと予告していましたが、大好評とのことで引き続き、僕のコンパイラー・ライフ30周年を祝したコンピ3タイトル(どれもアナログ盤もリリース!)の発売記念企画として、これまで監修・選曲を手がけてきた約350枚のコンピレイション収録曲のシャッフル放送をお届けすることに。僕の最新インタヴュー(HMVウェブサイトCDジャーナルSTEPPIN' OUT)やトークショウ映像と共に、お楽しみいただけたら嬉しいです。
その他の時間帯は、夏の終わりと秋の始まり、どちらの心象風景も思い描きながら、いつものように大充実だったニュー・アライヴァルのお気に入りを、惜しげもなくエントリー。とりわけセレクションで重宝した48作(いずれも3曲以上をセレクト)のジャケットを、最初に3枚の僕のコンピ、続いて特によく聴いた3枚(どれもアンビエント・フィールが心地よく、アートワークも素敵で涼しげで、この夏レコードを部屋に飾って愛聴していました)、そしてそれ以外の作品をアーティストABC順で掲載しておきますので、ぜひその中身にも触れてもらえたらと思います。
曲単位でのNo.1フェイヴァリットは、Laurel HaloがCoby Seyをフィーチャーした「Belleville」。彼女のニュー・アルバム『Atlas』のリリースもまもなくですので、とても楽しみですね。

V.A.『Merci ~ SUBURBIA meets INPARTMAINT "Cafe Apres-midi Revue"』
V.A.『Gratitude ~ SUBURBIA meets ULTRA-VYBE "Free Soul Treasure"』
V.A.『Blessing ~ SUBURBIA meets P-VINE "Free Soul × Cafe Apres-midi × Mellow Beats × Jazz Supreme"』
Scott Orr『Horizon』
Fabiano Do Nascimento『Das Nuvens』
Jonny Nash『Point Of Entry』
Alice Phoebe Lou『Shelter』
Aline Gonçalves feat. Sergio Valdeos & Luis Barrueto『Dímelo』
Beverly Glenn-Copeland『The Ones Ahead』
Blake Mills『Jelly Road』
Bonnie “Prince” Billy『Keeping Secrets Will Destroy You』
Bruno Major『Columbo』
Celeste Moreau Antunes & João Marcondes『Luzir, Vol. 2』
Dargz『Happiness』
Delaney Bailey『What We Leave Behind』
EASHA『Leave A Message, I'm Not Here』
Enji『Ulaan』
The Finks『Birthdays At Solo Pasta』
Flanafi『Sixth Night. Sleepless. You Made The World. Wallowing』
Flavia K『Universo Suspenso』
Gareth Donkin『Welcome Home』
iYA『In My Feels』
Jalen Ngonda『Come Around And Love Me』
JazzZ & Tenten『Absinthe』
Jeon Jin Hee『Without Anyone Knowing』
JONES『Magic In My Head』
Joseph Shabason feat. Thom Gill『One For The Money』
Julie Byrne『The Greater Wings』
Leo Middea『Gente』
Les Imprimés『Rêverie』
Lola Cobach『Camino Dorado』
Lontalius『Life On The Edge Of You』
Matilda Mann『You Look Like You Can't Swim』
Matthew Halsall『An Ever Changing View』
Mattis & Jacob David『Lullabies』
Melodiesinfonie『Softboi』
Michael Seyer『Songs For Ghosts』
MMYYKK『The Midst Of Things』
Moon Panda『Sing Spaceship, Sing!』
MUNYA『Jardin』
Nicky Schrire『Nowhere Girl』
Noname『Sundial』
Ricewine『Junk』
Sarah Kang『Hopeless Romantic, Pt. 1』
Somni『Gravity』
Sulah Jordan『Lady Bug』
William Fitzsimmons『Covers, Vol. 2』
Yussef Dayes『Black Classical Music』

Dinner-time 土曜日22:00~24:00

Cafe Apres-minuit 日曜日0:00~10:00

Brunch-time 月曜日10:00~12:00

Brunch-time 火曜日10:00~12:00

Brunch-time 水曜日10:00~12:00

Brunch-time 木曜日10:00~12:00

特集 月曜日16:00~18:00

特集 火曜日16:00~18:00

特集 水曜日16:00~18:00

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特集 土曜日16:00~18:00

特集 日曜日16:00~18:00



本多義明(「usen for Cafe Apres-midi」ディレクター) Yoshiaki Honda

普段どちらかと言うと、意識せずとも結果的には地味めな音楽を好んで聴いていることが多いのですが、今回すごく気に入っているブラジル新世代ギタリスト、ペドロ・マルティンスの待望のセカンド・リーダー作は、凄腕ミュージシャンが参加するすごく豪華なアルバムでした。今作もカート・ローゼンウィンケル主宰のハートコア・レコーズからのリリースなので、そのカート・ローゼンウィンケルはもちろん、あのエリック・クラプトンが参加しているのもびっくりなトピックです。でも自分がうれしいのは、サンダーキャットとJD・ベックの参加で、両者との3曲目 「Isn’t It Strange」は最高でした。全体でも、エリック・クラプトンとの12曲目 「Não Leve A Mal」やChris Fishman参加の曲などなど、本当に好みな曲ばかり。それにしてもペドロ・マルティンスのハイトーン・ヴォイスはいいですね。暑さで疲れた身体に優しい、涼しげで潤いのあるヴォーカルです。自分の担当時間であるランチタイム~ティータイムで数曲選んでいますが、お月見のシーズンにもオススメです。

Pedro Martins『Rádio Mistério』

Lunch-time~Tea-time 木曜日12:00~16:00

Lunch-time~Tea-time 金曜日12:00~16:00

Lunch-time~Tea-time 土曜日12:00~16:00

Lunch-time~Tea-time 日曜日12:00~16:00




中村智昭 Tomoaki Nakamura

2023年7月17日、ジョアン・ドナートが天国へと向かいました。今回のEarly Autumn Selectionでは、担当する月曜日のスタート18時台のトップと、深夜帯を前に一旦着地する23時台ラストに追悼の選曲を行いました。特に2000年代初頭、かつて渋谷・公園通りを眺めるビルの5階にあったカフェ・アプレミディで、そしてスタートしたばかりの本チャンネル「usen for Cafe Apres-midi」で、彼の音楽を聴かない日はありませんでした。ありがとう、ブラジル音楽のマジカルな楽しさを教えてくれた、もう一人のジョアン。あなたはその溢れるユーモアを直接メロディーで奏でられる、唯一無二の音楽家でした。心よりご冥福をお祈りいたします。

João Donato『Ê Lalá Lay-Ê』

Dinner-time 月曜日18:00~24:00

Cafe Apres-minuit 火曜日0:00~2:00



添田和幸 Kazuyuki Soeta

夏の終わりの黄昏どきを思い描いて28枚選出。その中からハイ・ラマズのメンバーとしての活動やステレオラブ/ソンドレ・ラルケなどとの様々なセッションで知られるマルチ・インストゥルメンタリストMarcus Holdawayと、マドリッドのシンガー・ソングライターYani Martinelliのユニット、Colourwayをピックアップ。お互いの持ち味を活かした全編ノスタルジックでドリーミーに彩られた初秋の空に溶け込むような一枚です。

Colourway『Definitiv!』
Scott Orr『Horizon』
Les Imprimés『Rêverie』
Jonny Benavidez with Cold Diamond & Mink『My Echo, Shadow And Me』
Holy Hive『Big Crown Vaults Vol. 3 - Holy Hive』
Natasha Watts『Music Is My Life』
The Breathing Effect『Eli & Harry』
Captain Planet『Sounds Like Home』
Bruno Major『Columbo』
Ash Walker『Astronaut』
Shivum Sharma『River's End』
Forest Claudette『Everything Was Green』
NaraBara『Hamt Zamin Hümüs』
Yussef Dayes『Black Classical Music』
Espen Horne『The Anatomy Of Serene Eloquence』
Joe Armon-Jones & Maxwell Owin『Archetype』
Phi-Psonics『Octava』
Peace Flag Ensemble『Astral Plains』
Tuzeint『Raixes』
Andy Hay『Children Of The Sun.』
Fabiano Do Nascimento『Das Nuvens』
Tony Njoku『Sketches & Noodles Of Bloom』
Blake Mills『Jelly Road』
Joaquín Cornejo『Joaquín Cornejo meets Markandeya - Vision Versions』
Channelers『Generation / Harvest』
J Foerster / N Kramer『Habitat II』
Wataru Sato『Monologue From The Past』
V.A.『The Endless Coloured Ways: The Songs Of Nick Drake』

Dinner-time 火曜日18:00~24:00

Cafe Apres-minuit 水曜日0:00~2:00



中上修作 Shusaku Nakagami

たとえば、人けのない砂浜の、海水の色も夏の空を写したような澄んだ色ではなくて、すこし鉛色を混ぜたような水の色。
砂浜を散歩するカップルの皺に刻まれるのは、薄皮のような日々の些事にも誠実に向き合い時間を重ねてきた証。
くたびれた麻のショーツとシャツは、ピンク色とオレンジの組み合わせ。

終わりの夏を告げるような、このクルーナー・ヴォイスは誰なの?
やわらかく空に消えていく、スウィートなガット・ギターの音色は?

たとえば、こんな瞬間に。
クイ・リーの魔法が空気にまじって消えていく。

Kui Lee『The Extraordinary』

Dinner-time 水曜日18:00~24:00

Cafe Apres-minuit 木曜日0:00~2:00



高木慶太 Keita Takagi

9月に入り秋の声を聞いたとしても、しぶとく夏日が続くであろうことを見越してのセレクト。季節は先取りするのが粋であって、後追いは野暮とはいえ、体感も疎かにはできない。いや、むしろという気さえする。正しさよりもふさわしさ。「季節はずれ」を積極的に楽しむためのサウンドトラックがあったっていい。

三宅純『Innocent Bossa In The Mirror』

Dinner-time 木曜日18:00~24:00

Cafe Apres-minuit 金曜日0:00~2:00



FAT MASA

例年だと冷涼な夏を過ごせる僕の住む釧路は避暑地として、夏エアコンなしで過ごせると官民上げて謳っており、暑がりな僕にとって釧路の好きなところであるにも関わらず、今年は30℃近い日が続き、体力的に限界な日々でございます(汗)。
まだ残暑続く日々にぴったりなHanah Springの「Childhood Paradise(feat. 石若駿)」が聴きたくなります(Uyama Hiroto Remixも最高です!)。
今をときめく石若駿のドラミングも素晴らしく、ライヴで聴いてみたいです。
Hanah Springは毎年のように北海道でライヴを行っており、コンパクトな会場の関係で弾き語りメインなので、今年リリースされた素晴らしい新譜をひっさげ(待望のアナログ盤も10月にリリースされます!)、バンドでライヴを観たいと願っております。
これでも、2016年に札幌でHanah Springの対バンでドラムで参加したこともあり、弾き語りの小編成より、ついバンドで観たいと思ってしまいます。
そんな自分はめっきり、演奏する機会を失っておりますが、店のご常連のジャズ・ベーシストから、フリー・セッションに来ませんか? とお誘いがありながらも、4ビートは高校時代のブラスバンド以来、しかもウッド・ベース、ギターとのトリオ編成、かなりハードル高いですが、いつかトライしてみようと思っています。
結果はこちらでお知らせいたします(笑)。

Hanah Spring 『Sozo』

Brunch-time 金曜日10:00~12:00



三谷昌平 Shohei Mitani

暑さはまだ厳しくとも日ごとに秋の色が深まるこの季節、信頼のおける二人のアーティストが新曲を届けてくれました。まずはアメリカ・ロサンゼルスを拠点に活躍するジャズ・ピアニスト/ビートメイカー、キーファー。彼のStones Throwからの新作『It's Ok, B U』から先行シングル「Dreamer」です。ブレイクに導かれる彼らしい美しいピアノ・サウンドが心地よい作品。そしてイギリス・マンチェスターを拠点に活動するトランペッター、マシュー・ハルソール。彼の新作『An Ever Changing View』から「Calder Shapes」。カリンバに導かれるエレピ、そしてスピリチュアルなトランペットが美しい作品です。2曲とも夜長な秋にピッタリ。徐々に深まる秋の気配を音で感じていただけたら幸いです。ぜひ聴いてみてください。

Kiefer『It's Ok, B U』
Matthew Halsall『An Ever Changing View』

Dinner-time 金曜日18:00~22:00



渡辺裕介 Yusuke Watanabe

たまたまとか偶然とかで出逢う音楽。
実はたまたまでも偶然でもない運命の出逢うべき音楽。
久々にそんな音楽に出逢いました。
ロンドンを中心に活動している、現在はヨーロッパ全土にその活動が広がりつつあるBelle Scarというシンガー。
歌劇? シンフォニーでクラシカルでニック・ケイヴでティンダースティックスでポーティスヘッドでエイミー・ワインハウスでモリッシーな作品。素晴らしすぎる。感動。
説明になってませんが、このアルバムの彼女の声と演奏の深さ。
久々骨の髄まで痺れました。
ぜひ日本盤でのリリースをお願いしたいです。
いつもの流れで新作チェックをすれば、いつもの素晴らしい同じような作品に触れることができますが、少し視点を変えて、別方向からいろいろな音楽に触れることをお勧めいたします。
リリース自体は2020年ですが、同じような感覚で、デンマークのバンドI Got You On TapeのキーボードJacob Bellensのソロ5枚目の深さ。
ルイ・フィリップとマイクロディズニーな素晴らしい秋の乾いた薄暗い夜にシングル・モルトをストレートで飲むような味わいある作品。
そんな時代を感じない音楽に触れる機会の多いここ最近なので、久々にジャズな金曜の夜から始まります。
もちろんあらゆる音楽を織り交ぜながらたどり着くのは、パット・メセニーの新作から「Never Was Love」のカヴァー。
ぜひお酒と一緒にお楽しみください。

Belle Scar『Atoms』
Jacob Bellens『My Heart Is Hungry And The Days Go By So Quickly』
Pat Metheny『Dream Box』

Dinner-time 金曜日22:00~24:00

Cafe Apres-minuit 土曜日0:00~2:00



富永珠梨 Juri Tominaga

2023 Early Autumn Selectionは、秋のはじまりの風景に心地よく馴染む、伸びやかなジャズ・ヴォーカルや、柔らかく味わい深いシンガー・ソングライターの楽曲を中心にセレクトしました。今回初秋のベストワンには、イスラエルの男性SSW、Gil Bar Hadasが2023年の5月にリリースしたシングル「ע​כ​ש​י​ו זה ב​ר​ו​ר」を選びました。オープニングの柔らかな「パパパ」のスキャットに、心がふわりとほぐれ思わず笑顔がこぼれます。ゆったりとなめらかなエレピの音色と、ソフトなドラムの響きにそっと寄りそう、Gil Bar Hadasの優しく語りかけるような歌声。どこか切なさを内包した、美しくフレンドリーなメロディーは、秋色に染まる散歩道にもよく似合います。Gil Bar Hadasのほかに、Aviv Peck、Stav Goldberg、Motti Rodanなど、ここ数年注目しているイスラエルの音楽家の楽曲もセレクトしているので、ぜひそちらもチェックしてみてくださいね。

Gil Bar Hadas「ע​כ​ש​י​ו זה ב​ר​ו​ר」

Brunch-time 土曜日10:00~12:00



小林恭 Takashi Kobayashi

今回の選曲は、ピックアップしている16枚のうち10枚を普段よく家で聴いているアンビエント的なアルバムから選んでいます。僕の持ち時間帯でこのようなタイプの曲は多く入れづらいのですが、今回は季節柄うまくはまると思ったので、ポップな曲の合間にインタールード的に多く組み込んでみました。中でも今年上半期にインパクトがあったのは、Ben Vida with Yarn/Wire and Nina Danteの「Rhythmed Events」です。ブルックリンをベースに活動する実験的な電子音楽を数多く作っているBen Vidaと、ピアノ/パーカッション・カルテットYarn/Wireが、ソプラノ・ヴォーカリストのNina Danteと共に作り上げた抑制の効いたミニマルな音楽は、反復するヴィブラフォンやピアノの音に合わせて、反復する詩の朗読が一体となって、とても心地のよい静けさと独自なグルーヴ感を生み出しています。ぜひ一度聴いてみてください。

最後に、今年になって偉大なミュージシャンの訃報がおさまらず、胸が痛みます。偉大なロックンローラーと同じく星となった、偉大なジェーン・バーキンの「Ex Fan Des Sixties」を選曲に織り込み、追悼いたします。

Ben Vida with Yarn/Wire and Nina Dante『The Beat My Head Hit』
Josiah Steinbrick『For Anyone That Knows You』
Gia Margaret『Romantic Piano』
Nico Georis『Cloud Suites』
Michael David feat. Classixx『Talking Book World』
Soshi Takeda『Same Place, Another Time』
Daniel Rotem『Wave Nature』
Scott Orr『Horizon』
Julianna Barwick『Will』
Raury「Play Me Like A Piano」
Aja Monet『When The Poems Do What They Do』
JONES『Magic In My Head』
Olamid『Carpe Diem』
Knower「Crash The Car」
Lutalo『Once Now, Then Again』
Jane Birkin『Ex Fan Des Sixties』

Dinner-time 土曜日18:00~22:00



ヒロチカーノ hirochikano

Early Autumn選曲のオープニングを飾るのは、シドニー出身のシンガーLady Kingの「Play It」。どこか懐かしさを感じるメロウでドリーミンなアレンジと、彼女のリラクシンな歌声が交錯するこの1曲は、アプレミディらしさの中にも、常に現在進行形であるべきカフェ選曲の潮流を感じます。他にも、その流れに乗せて、耳と感性だけを頼りに厳選した世界中の現在進行形のネオ・シティ・ポップ選曲が、残暑が残るこの季節の街の午前中の空気感を、爽やかに彩ってくれることでしょう。

Lady King「Play It」

Brunch-time 日曜日10:00~12:00



吉本宏 Hiroshi Yoshimoto

風に秋の気配を感じて、少し感傷的な気分になったのは、ロンドン・ベースのSSW、Kasia Konstanceの歌声を聴いたからかもしれない。エラ・フィッツジェラルドやエリカ・バドゥ、MndsgnやSiRをフェイヴァリットに挙げる柔らかなソウル・フレイヴァー。その気だるい歌声とビートは、何かを打ち明けるような親密な空気をたたえている。

Kasia Konstance『Different Skies』

Dinner-time 日曜日18:00~22:00



高橋孝治 Koji Takahashi

初秋コメントの原稿依頼のメッセージが届き、いざ初秋らしいエピソードを書こうとしているのですが、連日真夏日が続いており、灼熱地獄の真っ只中。頭の中身は冷たい生ビールにかき氷と、初秋なイメージが全く浮かびません……。しかしそんなことではいけないと思い、「秋」をテーマにした映画でも観て頭の中身をリセットしなくてはと、何を観ようか考えましたが、今夜は久しぶりに『男たちの挽歌』で有名なチョウ・ユンファの1987年制作の香港映画『誰かがあなたを愛してる』(英題:An Autumn's Tale)を棚から引っ張り出してき、て久しぶりに観賞しようと思います。『男たちの挽歌』でのハードボイルドな面とは真逆の、ナイーヴなチョウ・ユンファの魅力あふれた切ないラヴ・ストーリーが展開されるこの作品は、彼の出演作では一番のお気に入りです。ちなみにこの作品にはレアなVHSだけに存在する日本語吹き替え版が存在するので、いつかはそのVHSを手に入れてみたいですね。
さて、今回の選曲ですが、まずはフランス北部の都市リールで活動する3ピース・バンド、Tapewormsの澄んだ空気を感じる爽やかな「Puzzle」からスタート。フレッシュ・エア感が素敵な作品ですが、Tapewormsというのは日本語に訳すと「サナダムシ」なんですね……(笑)。続いてブルックリンのインディー・シーンで活動し、今やその中で中堅的存在となっているBeach Fossilsのオリジナル・アルバムとしては約6年ぶりとなる4作目『Bunny』収録曲の「Sleeping On My Own」や、ポルトガルはリスボンの男性3人組、Ditch Daysの「Test Of Love」、ニューヨークの男女デュオ、Couch Printsの「True Religion」と、これまた爽やかな楽曲をセレクトし、スウェーデン出身の女性アーティスト、Curiositiのどこかミステリアスでありながらしなやかで優しい歌声に包まれた「Moon」や、ロンドンで活動する3人組、Night Tapesのコケティッシュでエスニックなテイストも併せもつ「Inigo」などを、この時間帯のアクセント曲としてピックアップしてみました。他には90年代初頭から活動するイギリスのシューゲイザー・バンド、Slowdiveの新作「Kisses」や、清らかなアコースティック・ギターの響きが心を落ち着かせるアメリカはオリンピアのシンガー・ソングライター、Stephen Steinbrinkの「Cruiser」なども選曲しておりますが、どれも素敵な作品ですね。
ディナータイム後半は待ちに待ったカリフォルニア州ロサンゼルスの4ピース・バンド、TV Girlの6月にリリースされたニュー・アルバム『Grapes Upon The Vine』の冒頭を飾る「I'll Be Faithful」をピックアップしてスタート。前作のカンザス州の女性アーティスト、Jordana Nyeとのコラボレイション・アルバム『Summer's Over』は全曲が素晴らしいという奇跡の内容でしたが、今作もそれに劣らず素晴らしい内容ですね。その完成度にとても感動したので、今回の初秋選曲ではこのニュー・アルバムから5曲もセレクトしてしまいました。そして最高なTV Girlの作品に続くのは、シカゴのDIYシーンの重要人物であるPaul Cherryが、ここ日本でも絶大な人気を誇る女性シンガー・ソングライターのKate Bollingerをフィーチャリングして発表したニューEP『Los Angeles Story』収録の「Playroom」や、テキサス州オースティンで活動する男性アーティスト、Dorioの今年4月にリリースされた最新アルバム『Strawberry Dream』収録曲「Color Bag」、カリフォルニア州サンディエゴの男女デュオ、Moon Pandaの7月21日にリリースされたばかりのニュー・アルバム『Sing Spaceship, Sing!』収録曲「Tangerine Light」など。どの作品も清潔でフレッシュ感のある爽やかな作品ですが、この時間帯の特にお気に入りの作品は、イギリスのリヴァプールの男性アーティスト、two blinks, i love youの黄昏感が切なさを誘う「Loveseat」と、ヴァージニア州を拠点に活動するStevedreezのメロウでノスタルジックな雰囲気が心を揺さぶる「Crystal Ball」です。
ミッドナイトからの選曲は、前回から復活したテーマを設けたミッドナイト・スペシャルとして選曲をする予定でしたが、紹介したい新曲がありすぎて、またまた4時間まるごと新曲で構成することにしました。一応ミッドナイト・スペシャルとして『日本であまり興味を持たれない、悲しきオーストラリアのオブスキュアな良質ネオアコ特集』というテーマで、90年代周辺のオーストラリアのインディー作品集を考えていましたが、また機会がありましたらやってみたいと思います。セレクトしようとした作品を少しだけご紹介すると、オーストラリアのインディー・レーベルRed Eye Recordsから作品をリリースしていたThe Crystal Setの「Benefit Of The Doubt」や、Bandcampに多くの作品が上がっていて驚いたThe Rainyardの「Beneath The Skin」、80年代半ばから活動するCharlotte's Webのカセットだけでリリースされたファースト・アルバムの冒頭を飾る「Too Much, Too Unkind」などです。どれも爽やかな青春の風を感じる素敵な作品なので、気になる方はYouTubeで検索してみてください(笑)。
それでは実際に選曲したミッドナイト以降の作品を紹介しますと、まず前半はオーストラリアの4人組インディー・バンド、Diversの思わず笑顔が弾ける「Security」をトップバッターに、カナダはモントリオールで活動する5人組、Grand Eugèneのコケティッシュでアンニュイなフランス語が可愛らしい「Bye-Bye」、ニュージーランドの男性アーティスト、Jason Nolanのマジカル・ポップ「Cantonese Dream」、どこかノスタルジックな響きを放つロサンゼルスの男性アーティスト、Lucca Dohrの「We May Never Know」などをセレクト。他にはディナータイムでもフィーチャーしたMoon PandaやTV Girlがこの時間帯にも大活躍で、それぞれ「Machina Sky」と「All The Way Through」という作品をピックアップしています。
ミッドナイト選曲の後半は、TV Girlに匹敵するくらい大好きなカナダはケベック州モントリオールの女性アーティスト、MUNYAの10月リリース予定のニュー・アルバム『Jardin』より先行シングルとして発表された「Hello Hi」をまずはピックアップ。2021年にリリースされたファースト・アルバム『Voyage To Mars』は収録曲全てが素晴らしかったので、ニュー・アルバムも凄く楽しみですね。続くミシガン州デトロイトの4人組バンド、Vaegaの「Phaser Days」はひんやりとしたクールな響きが心地よく、まるでミストを浴びているような感覚の作品です。他にはニューヨークの女性アーティスト、Mia Timsのファースト・アルバム『Psychosomatic』に収録された「Catalog」や、ニューヨークはブルックリンの男性アーティスト、Helenorの「Warm Ways」、南アフリカ第2の都市ケープタウンのインディー・ポップ・バンド、Honeymoanの9月リリース予定のニュー・アルバム『Sorry Like You Mean It』からの先行シングル「Sit Right」、イタリアの3ピース・バンド、Ultrasaturatedのニュー・ウェイヴ・テイストがガッチリおじさんのハートを掴んだ「Horsegait」などもピックアップ。そしてオランダの3人組インディー・バンド、Holyslootの「Plans For Later」や、ブラジル系アメリカ人の男性デュオ、Chelsea Daysの「Everglow」も穏やかなリラックス効果を生む良曲で、真夜中に聴くにはぴったりの素敵な作品ですね。
最後に悲しいニュースなのですが、シネイド・オコナー(自分的にはシンニード・オコナー)が7月6日にお亡くなりになりました。ここでは詳しく触れませんが、彼女の歩んだ人生は壮絶なものでした。自分が若いときにその事実を知った際は大変なショックでしたが、アーティストとして有名になった後にも、1992年のサタデイ・ナイト・ライヴでのパフォーマンスや、その10日後のボブ・ディランの30周年コンサートなど、彼女はひとりで闘い傷ついていました。その姿をリアルタイムで見ていたので、1990年にプリンスが作品を提供した「Nothing Compares 2 U」は、プリンスとシネイド・オコナーが手を取り合っているようで今でもとても心に響きます。「usen for Cafe Apres-midi」との関係性を言えば、自分が繰り返しピックアップした彼女の作品は、ABBAのカヴァー曲である「Chiquitita」でした。この作品は北アイルランド紛争のさなか、1998年8月15日に北アイルランドのティロン州オマーの街で起きた自動車爆破事件のチャリティー目的で制作された、『Across The Bridge Of Hope』というアルバムに収録されています。歌詞の中に「I'm a shoulder you can cry on」とありますが、自動車爆破事件の犠牲者にとって「I」がシネイド・オコナーで、「you」が犠牲者だと思います。そして孤独な闘いを続けてきた彼女にとって、プリンスとの関係も「Chiquitita」の歌詞のような関係だったのでしょう。もちろん二人の関係性では「I」がプリンスで「you」はシネイド・オコナーですね。

Tapeworms「Puzzle」
Beach Fossils『Bunny』
Couch Prints『Waterfall : Rebirth』
Curiositi「Moon」
Night Tapes「Inigo」
Stephen Steinbrink『Disappearing Coin』
TV Girl『Grapes Upon The Vine』
Paul Cherry feat. Kate Bollinger『Los Angeles Story』
Dorio『Strawberry Dream』
Moon Panda『Sing Spaceship, Sing!』
two blinks, i love you『ep1』
Stevedreez「Crystal Ball」
Divers「Security」
Grand Eugène「Bye-Bye」
Jason Nolan「Cantonese Dream」
Lucca Dohr「We May Never Know」
MUNYA『Jardin』
Vaega「Phaser Days」
Mia Tims『Psychosomatic』
Chelsea Days『sincerely,』

Dinner-time 日曜日22:00~24:00

Cafe Apres-minuit 月曜日0:00~2:00



山本勇樹 Yuuki Yamamoto

まだまだ厳しい残暑が続いておりますが、秋の気配も感じる今日この頃、やっと街並みも色づきはじめて、個人的にも大好きな季節がやってきました。そんな中、火照った身も心もクールダウンしてくれるのが、我がミュージシャン、リッキー・リー・ジョーンズの最新作『Pieces Of Treasure』です。プロデュースを手掛けるのは盟友ラス・タイトルマン。歌うのは“グレイト・アメリカン・ソングブック”ということで、悪いわけがありません。これが期待通り、いや期待をはるかに超える、彼女のキャリアを更新する名作でした(1991年の『Pop Pop』が好きな方にはおすすめです)。今回のアーリー・オータム・セレクションには、マイク・マイニエリによるメロウなヴィブラフォンも絶品の、ご存じ「Just In Time」を選んでみました。ぜひ、この秋のティータイム~ランチタイムのBGMとしてお楽しみいただければと思います。

Rickie Lee Jones『Pieces Of Treasure』

Lunch-time~Tea-time 月曜日12:00~16:00



武田誠 Makoto Takeda

多彩なアプローチを取り込み先鋭的なアメリカーナな響きを奏でるギタリスト/シンガー・ソングライターであり、プロデューサーとしても高い人気を誇るブレイク・ミルズ。ピノ・パラディーノとのエクスペリメンタル・ジャズなコラボレイト作に続く新作は、僕の中ではブライアン・ウィルソン〜ダニエル・ジョンストン的なアーティストと勝手に脳内イメージされていたマジカルなシンガー・ソングライター、クリス・ワイズマンとの共作ということでちょっとびっくり。ちょうど2019年の同じEarly Autumn Selectionで、「Dave」「Confessions Of A Feckless Rainwear」といった彼の曲を奇しくも選曲していましたが、その多作家ぶりに、ほとんどのアルバム(曲数が膨大すぎ!)はチェックできずにいるのが本当のところですが。そんな二人のコラボとなる本作、クリス・ワイズマンの存在感があらわに感じられる屈折したポップネスが、乾いたアメリカーナの深いアンビエンスへと溶け込んでゆくよう。そんな彼らの曲をはじめ、静かに語りかけるような音楽で、秋の始まりの香りを感じてくれたらと思います。

mutual benefit『Growing At The Edges』
Healing Potpourri『Aquarium Drunkard Lagniappe Session』
Paul Cherry feat. Kate Bollinger『Los Angeles Story』
Fabiano Do Nascimento『Das Nuvens』
Pedro Rosa『Midnight Alvorada』
Blake Mills『Jelly Road』
Buck Meek『Haunted Mountain』
Maya Dunietz『Thank You Tree』

Lunch-time~Tea-time 火曜日12:00~16:00



waltzanova

私事ですが、8月の頭に人生初の骨折+入院を経験しました。入院生活は不自由というイメージがあったのですが、基本的に音楽と本があれば生きていける人なので、思ったよりも快適でした(笑)。外科だったということもあり、病院食もそんなにひどいものではなかったし。とはいえ、今年は健康面でのトラブルが多く、遅れてきた厄年という感じになっています。逆に言うと今までが健康すぎたという見方もできるんですかね……。とにかく、これからは健康第一で生活+選曲をしていきたいと思っています。
今回は追悼曲が多く並ぶセレクションになりました。「usen for Cafe Apres-midi」チャンネルの音楽性に深く関わる人が多く亡くなりましたね。アストラッド・ジルベルトやジョアン・ドナート、ホセ・ ロベルト・ベルトラミといった人たちです。ちょうど晩夏〜初秋の雰囲気にぴったりの音楽性の人たちなので、上手く取り入れられたかなと自画自賛していたりもするのですが。

さて、僕の音楽生活ですが、坂本龍一さんの『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』を読んで以来、環境音に対する関心が増していて、街の音や雨の音、波の音などを日常の中で聴くことが多くなっています。入院というメンタル的にも堪える体験があったので、そういう音がとても魅力的に感じられるこの頃です。この話を武田誠さんにしたら、「ブライアン・イーノと一緒ですよ!」と言われました。ざっくり説明すると、彼も入院体験を機にして音楽の聴き方が変化し、それがアンビエント・ミュージックのコンセプトにつながったというエピソードなのですが、嬉しくもこそばゆい指摘でしたね。今回のセレクションでは環境音を取り入れようかと思ったのですが、さすがにチャンネルの趣旨から離れてしまうということで止めました(笑)。そのコンセプトが反映されているのが来日公演にも足を運んだスワヴェク・ヤスクウケの『Park.Live』からの選曲で、こちらも僕のここしばらくの愛聴盤になっています。

Early Autumn Selection恒例の月にまつわる曲も入れています。今回はボブ・ディランの『ソングの哲学』(原題は『The Philosophy of Modern Song』)で改めて聴いたディーン・マーティンの「Blue Moon」を。一聴すると単なるポップ・ソングなんだけれど、ディランは絶賛していますね。本人も『Self Portrait』でカヴァーしているので、よっぽど好きなんでしょう。こういうところの彼のセンスというのは、不思議であると同時にやはり面白いなあと感じさせられます。セレクションのラストは村上春樹推薦のR.E.M.「Nightswimming」で締めました。こちらは折り紙付きの名曲ですよね。最後に恒例のオープニング・クラシックについて触れておくと、フォーレの組曲「Dolly」からです。こちらも月の美しい初秋にふさわしい子守唄だと思います。

ああそうでした、ブルーノ・メジャーの新作『Columbo』が素晴らしかったことにも改めて触れておかなくては。前2作にも劣らない傑作で、おそらく多くのセレクターの方が称賛していると思いますが、僕からもその言葉を贈りたいと思います。「We Were Never Really Friends」を聴いたときはそのエルトン・ジョン節にちょっとびっくりもしたのですが、アルバムを聴くと彼の持ち味である繊細なセンスは変わることなく。まさに“変わりゆく、変わらないもの”を体現していると思います。

P.S. ほぼ選曲を終えた時点で、ロビー・ロバートソンの訃報が飛び込んできました。この人については、素晴らしいミュージシャンであるという敬意を抱く一方で、リチャード・マニュエルやリック・ダンコが好きな身としては、いわゆる“偉い人”になってしまったロビーに対して複雑な思いもあるのですが、『The Last Waltz』が名盤/名画になったのは彼の力量によるところがやはり大きかったと思います(エリック・クラプトンのストラップが外れたあとのアドリブは今観ても最高です!)。ここは伝記映画のラストで流れていた「Ophelia」で彼の死を悼みたいと思います。

Katia & Marielle Labèque & Pascal Rogé『Fauré: Dolly Suite; Nocturnes; Barcarolles; Impromptus』
Slawek Jaskulke『Park.Live』
Bruno Major『Columbo』
The Band『Northern Lights - Southern Cross』

Lunch-time~Tea-time 水曜日12:00~16:00

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