吉野次郎「2020狂騒の東京オリンピック」の読書感想文1

 今だから読まないといけないなと思って、吉野次郎「2020狂騒の東京オリンピック」を再読したので、読書感想文を書きます。ちなみに最初は図書館で借りたのですが、衝撃を受けて、「自分で持たねば」と文庫化を待っていたのですが、文庫化される気配がないので、新しく買いました。友達にも、「スポーツビジネスの考えが変わるから、読んで!」と布教しています(笑)

 高野連は「甲子園大会は営利ではやっていないから」とNHKから放映権料を取っていないそうです。文藝春秋の鷲田康の記事によると、「DAZNから高額の放映権料を提示されたが、高野連は断った」そうです。それが、無観客で行われる今夏の甲子園の運営資金を調達するために、クラウドファンディングを実施したところ、アニメに敗けるという笑えないブラックジョークになっています。だったら、DAZNのオファーを受ければいいのに。

 アメリカではカレッジのバスケットボールが日本の甲子園のように、人気があることは知っていましたが、高野連に相当する運営のNCAAは、テレビ局に14年間で1兆3000億という天文学的な放映権料を売ったらしいです。

 恐ろしい放映権料でなにをやるかというと、学校に分配してグラウンド、体育館などハード面の整備から、優秀な指導者を呼んだりと環境を整えているそうです。もし高野連が稼ぐことを意識していれば、弱小校に道具を提供したり、指導者を派遣したりと競技振興が出来るでしょう。そう、稼ぐことは悪いことではないのです。いや、プロアマ通じてスポーツにはお金が掛かるので、稼ぐ意識を持つことはプロアマ通じて持たないといけないでしょう。

 本書に出てくる為末大によると「東京五輪に向けて国は相当な補助金を出しているが、五輪後は投資する名目がないので、ヘタしたら半数の競技団体が破綻する」とあります。僕はそれを読んで、メダルラッシュが手放しで喜べなくなりましたし、派手に狂い咲いたあとの焼け野原が想像できるので、背筋が寒くなりました。

 競技団体は自然に元アスリートがトップに立つそうです。元アスリートはプレーや指導が出来ても、ビジネスにおいては素人なのです。なので資金を稼ぐという発想はありませんし、あっても稼ぎ方がわからないという状況になっています。為末大によるとアメリカの競技団体は経営コンサルをトップに置いて、資金を稼ぐのが当たり前だそうです。東京五輪後の国はコロナ対策、景気回復に重きを置くのは想像できるので、補助金は減額されるでしょう。東京五輪後は、補助金に頼らずに稼ぐ意識が必要になりますが、そのことに気づいているのは、フェンシングの太田会長ぐらいというなのでは?と思うんですよね。

 けっこう書き甲斐のある本なので、読書感想文はもう少し続けることにします。

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